出版社 : 集英社
【21世紀生まれ初受賞/第48回すばる文学賞受賞作】 危険な小説だった。それでも、ここにある描写が好きだ。--田中慎弥氏(選評より) 新宿駅東口。退廃的で無秩序。 私はこの現実で、彼女のために何ができるーー? 『王』と自称する男が捕まった時、七瀬は「あ」と言った。 私は、その幽かな叫び声を隣で聞いた。 ここはつまらない奴らばっかりがいる場所だけど、七瀬だけは違う。 だから、彼女の隣にいても息苦しさは感じなかった。 薬で強制的に引きずり込まれた夢の中でも、七瀬は現れる。 もしかしたら私は、彼女とこの場所に、まだしがみついているのかもしれない。 これは、2007年生まれの若き著者が贈る、 終わってる世界で生きている「私たち」の物語。 【著者略歴】 樋口六華(ひぐち・りっか) 2007年生まれ。茨城県在住。 2024年「泡の子」で第48回すばる文学賞を受賞しデビュー。
資本主義の進む近未来のアメリカで、刑務所の囚人たちに釈放をかけて殺し合わせる「スポーツ」が誕生した。サブスクリプション配信される彼らの死闘とその終わりに、多くの人々が熱狂する……。 『フライデー・ブラック』の著者が、人種差別や消費社会を痛烈に皮肉る、文芸×SF×エンタテインメントの衝撃長篇! ニューヨーク・タイムズ紙の年間のベスト10に選出された、 全米図書賞最終候補作、アーサー・C・クラーク賞最終候補作。 スティーヴン・キング絶賛! 原題:CHAIN-GANG ALL-STARS 【著者略歴】 Nana Kwame Adjei-Brenyah ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー ガーナ移民の両親のもと、アメリカのニューヨーク州スプリング・バレーで育つ。ニューヨーク州立大学オールバニ校を卒業し、その後シラキュース大学でジョージ・ソーンダーズらに学び、MBA(芸術修士)を取得した。 デビュー作の短篇集『フライデー・ブラック』(押野素子訳/駒草出版)はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリスト入りを果たし、PEN/ジーン・スタイン賞およびウィリアム・サローヤン国際文学賞を受賞した。 また初の長篇小説である本書『チェーンギャング・オールスターズ』は全米図書賞とアーサー・C・クラーク賞の最終候補作に選ばれたほか、2023年ニューヨーク・タイムズ紙の年間のベスト10冊に選出された。 現在はニューヨーク市ブロンクス区在住。 【訳者略歴】 池田真紀子(いけだ・まきこ) 1966年東京生まれ。上智大学卒業。1997年アーヴィン・ウェルシュ『トレインスポッティング』(角川文庫、その後ハヤカワ文庫NV)でBABEL国際翻訳大賞新人賞を、2024年ジョセフ・ノックス『トゥルー・クライム・ストーリー』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞翻訳部門を受賞。そのほかジェフリー・デイーヴァーの『ボーン・コレクター』(文文春文庫)をはじめとするリンカーン・ライムシリーズ、チャック・パラニューク『ファイト・クラブ』(ハヤカワ文庫NV)、スティーヴン・キング『トム・ゴードンに恋した少女』(河出文庫)など訳書多数。
島に帰ろう。家族の声を聞きに。 お盆を迎え、久しぶりに九州のとある離島に集まった吉川家の面々。 この島ではお盆の夜に、島ならではの行事が執り行われる。 その行事に向けて忙しなく動く家族の声を、敬子は眠たげに聞いていたーー「港たち」 帰省先には、相変わらず酒に浸る父や、知り合いの家を飲み歩く男がいた。 昔のことに水を向けると、彼らは仕事で羽振りが良かった時代の武勇伝を語り出す。 この頃、社会はコロナ禍から回復しつつあったーー「明け暮れの顔」 緩やかな坂の上にある教会風の建物で行われる、従妹の結婚式。 稔は煙草を一服するために式場の外へ出ると、空を旋回する鳶が目に留まった。 ふと、幼い頃の夏に、父と島で見た光景がよみがえるーー「鳶」 ……など、吉川家のとある1年間をたどる豊かな語りの5編を収録した、 芥川賞受賞作『背高泡立草』に連なる小さな島の物語。 【著者略歴】 古川真人 (ふるかわ・まこと) 1988年福岡県生まれ。國學院大學文学部中退。 2016年「縫わんばならん」で第48回新潮新人賞を受賞しデビュー。 2020年『背高泡立草』で第162回芥川龍之介賞受賞。 その他の著書に『四時過ぎの船』『ラッコの家』『ギフトライフ』がある。
【小説すばる新人賞出身の気鋭が描く、令和版ハードボイルド!】 【深町秋生さん (ミステリ作家) 推薦!】 瑞々しく、怖い小説だ。 無垢な少年を情と恐怖で絡め取る半グレ集団は生々しく、 青春を呑みこむ闇の深さに戦慄した。 【杉江松恋さん (書評家) 推薦!】 裏切られ、泥を舐めた者だけが知る、本当の優しさが描かれた小説だ。 高校生の椎名和彦は、バイト漬けの日々を送っていた。 鬱屈した日々から逃げ出すように、同じく暗い境遇にある中高生たちが集まる大阪・道頓堀の”グリ下”で過ごす時間が長くなっていく。 そこで出会った半グレ集団「顔役」の溜まり場に顔を出すようになり、やがて大麻入り錠剤をグリ下で売り捌くように……。 ミナミ(難波周辺)を拠点とする「顔役」は、敵対するキタ(梅田周辺)の半グレ集団らと、ことあるごとに衝突を繰り返していた。 闇深きアンダーグラウンドな世界に否応なく巻き込まれるグリ下メンバーたち…… 令和大阪の路上(ストリート)を活写したアングラ×青春群像劇! 【著者略歴】 増島拓哉 (ますじま・たくや) 1999年大阪府生まれ。関西学院大学在学中の2018年に『闇夜の底で踊れ』で第31回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『トラッシュ』がある。
有馬かなと黒川あかねは、来月出演するW主演舞台の稽古として即興劇を演じていた。 映画「15年の嘘」から時が経ち、お互い実力派若手女優と称されるまでになったが、相変わらず仲は悪い。結果、稽古のはずがただの罵り合いになってしまっていた。舞台の先行きを不安に思う二人だったが、ふと過去に共に挑んだ“ある舞台のオーディション”を思い出す。それは二人の関係が、今へと至るきっかけとなった出来事で…!? 有馬かなと黒川あかねの過去と未来を描いた小説版第2弾!!
杜王町在住の人気漫画家・岸辺露伴。類稀なる好奇心を持つ男が出会う、この世ならざる奇怪な出来事とは……!? 露伴がイタリアで手に入れた“何の変哲もない”人形の正体 (曰くのない人形)。美しい庭園に潜む恐ろしい秘密 (ペア・リペア)。ある過疎地に伝わる、一生に一度だけ見ることのできる神事 (不見神事)。露伴の作品を愛する、ひとりのファンの奇譚 (ファン・鏑木八平太の場合)。4つの物語を収録した小説集。
「人を轢いたかもしれない」 厳格な父親からの一本の電話。それが悪夢の始まりだったーー 80歳目前の武は、教職退任後、市民講座で教える地元の名士。父の武と同じ教職に就く敏明は、妻の香苗と反抗期の息子・幹人との平凡な生活を送っていた。 このところ父の愛車に傷が増え、危険運転が目に余るようになってきたため、敏明は免許返納を勧めるが武は固く拒絶する。 さらに、市民講座の生徒である西尾千代子と武との親密な関係を怪しむ噂が広がり、敏明は悩みを深めていた。 そんなある日、近隣で悪質な轢き逃げ事件が発生。 「あれってーーまさか」 疑念に駆られ、事件の真相を探る敏明が辿り着いた“おぞましい真実”とは? 『悪寒』『不審者』『朽ちゆく庭』に続く、不穏で危険な家族崩壊サスペンス! 【著者プロフィール】 伊岡瞬 (いおか・しゅん) 1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞しデビュー。2016年に『代償』、2019年に『悪寒』が啓文堂書店文庫大賞を受賞。2020年に『痣』で徳間文庫大賞を受賞。『不審者』『朽ちゆく庭』『清算』『水脈』など著書多数。
たゆまぬ努力と膨大な魔力で王妃となったシアーラ。夫となる国王は、幼い頃から密かに慕ってきたクライヴだった。 けれどクライヴには厳格な性格を嫌われ、白い結婚が続く。 そんなある日、泉から癒しの力を持つ少女ヒカリが現れ、瞬く間に国民やクライヴの心を掴んでいった。 寂しさを募らせる中クライヴの暗殺未遂事件が起き、シアーラが容疑者に! 斬首直前、犯人はヒカリだと判明するもなすすべもなく処刑された……はずが、なんと目を覚ますとヒカリが来る前に回帰していた! 「私今度こそ、あなたを守ります!」 バッドエンド回避のため奔走するやり直し王妃の物語、開幕ーー!
可憐な公爵令嬢のレティシアは、美術室での一件以来、婚約者・ウィリアムの前でドギマギしてしまう日々を過ごしていた。 ウィリアムを会長とする生徒会役員の選出が迫る中、性悪なレティシアよりも、温和な侯爵令嬢・リリエルの方が役員に相応しいという声が大きくなってしまう。 大好きなウィリアムの負担になることを恐れ、指名の辞退を考えるレティシア。そんなある夜、リリエルの本性を知ってしまい…!? 「--悪辣さでは、わたくしも負けていないのですよ?」 裏の悪女・リリエルとの、生徒会役員の座をかけた即興詩作対決が始まるーー! 「レティを乱暴に扱ったら、いくら僕でも穏便にとはいかないよ」 天然悪女と絶対的紳士の、甘美な学園ストーリー、白熱の第2弾!!
国王の命令で継母となった公爵令嬢ロゼマリア。だが、義娘となる王女スノウに森へ追放される。 継子いじめの継母になる悪夢を見続けていたロゼマリアは正夢とならなかったことにほっとし、嬉々として森の中へ。 そこでロゼマリアは隣国の第二王子リオヴァルドと第四王子ルイセージュと出会う。 なんとこのルイセージュ、精霊の加護を持つ「精霊の愛し子」らしい。 怯える彼にロゼマリアは魔力の使い方を教え、優しくふるまう。 テイムした大型犬や鏡の精霊ラブボと共に、りんごスイーツや毛織物を売って楽しい毎日を送るロゼマリアだが、彼女を恐れるスノウが森を焼く計画を企てておりーー!? 天才魔術師ロゼマリアのドキドキスローライフコメディ!
「あなたは今日からわたくしのものよ」 公爵令嬢のヴィヴィアンは思い出した。自分は、前世でプレイしていた乙女ゲーム『クローデット』の、ヒロインを虐める悪役令嬢であることを。そして、この世界にはゲームの1周目で死んでしまう “推し”の攻略対象、隠しキャラの魔王様がいることを…。 推し魔王様が辿る運命に悲嘆するヴィヴィアンだったが、彼のバッドエンド回避を決意! 奴隷にされていた魔王様を購入し、大事に世話をしていく中で、彼は失っていた記憶を取り戻した。 侍従となった推しとの愛を深めていくヴィヴィアン。 しかし、王太子の婚約者になるよう、王家からしつこく申し出がありーー!? 「そなたが望むなら、我の全てを与えよう」 半吸血鬼の悪役令嬢が推し魔王様を救う、艶美な異世界ラブファンタジー、開幕!!
大河ドラマの主人公・蔦屋重三郎の粋でいなせな一代記!! 山東京伝、曲亭馬琴、喜多川歌麿、東洲斎写楽……江戸っ子たちを熱狂させた大勝負、とくとご覧あれ。 豪華絢爛の吉原が業火の海に包まれた明和九年。多くの人が落胆する中で、江戸をふたたび元気にしようと心に決めた男がいた。蔦屋重三郎。通称蔦重と呼ばれたその男は、貸本屋では飽き足らず、地本問屋の株を買って自ら版元として様々な勝負に打って出る。「楽しんで生きられたら、憂さなんて感じないで済むんです」面白い書物や美しい浮世絵は、きっと世の中を明るくしてくれるーー。彼の熱意が、山東京伝、喜多川歌麿などの心を動かし、江戸を熱狂に包んで行くのだった。しかし、そこに立ちはだかったのは……。エンターテインメント歴史小説‼ 世の中は酒と書肆が敵なり どうにか敵にめぐり会いたい 【著者略歴】 吉川永青 よしかわ・ながはる 1968年、東京都生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。2010年『戯史三國志 我が糸は誰を操る』で第5回小説現代長編新人賞奨励賞、16年『闘鬼 斎藤一』で第4回野村胡堂文学賞、22年『高く翔べ 快商・紀伊國屋文左衛門』で第11回日本歴史時代作家協会賞(作品賞)を受賞。著書に『誉れの赤』『治部の礎』『裏関ヶ原』『ぜにざむらい』『乱世を看取った男 山名豊国』『家康が最も恐れた男たち』『戦国・江戸 ポンコツ列伝』など多数。
1995年1月17日未明、阪神・淡路大震災が発生した。 神戸市内の高校から都内の大学に進学し、東京で働いていた青年は、早朝の電話に愕然とする。 かけてきたのは高校時代の友人で、故郷が巨大地震に見舞われたという。 慌ててテレビをつけると、画面には信じられない光景が映し出されていた。 被災地となった地元には、高齢の祖父母を含む家族や友人が住んでいる。 彼は、故郷・神戸に向かうことを決意した。 鉄道は途中までしか通じておらず、最後は水や食料を背負って十数キロを歩くことになる。 山本周五郎賞を受賞した作家が自らの体験をもとに、震災から30年を経て発表する初の現代小説。 【著者略歴】 砂原浩太朗(すなはら・こうたろう) 1969年生まれ。兵庫県神戸市出身。早稲田大学第一文学部卒業。2016年「いのちがけ」で第2回「決戦!小説大賞」を受賞。21年『高瀬庄左衛門御留書』で第9回野村胡堂文学賞、第15回舟橋聖一文学賞、第11回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。22年『黛家の兄弟』で第35回山本周五郎賞を受賞。他の著書に『いのちがけ 加賀百万石の礎』『藩邸差配役日日控』『夜露がたり』『浅草寺子屋よろず暦』など。
なんと6年ぶりにスピンオフノベライズ『銀魂 3年Z組銀八先生』の最新刊が登場だァァ!! 3Z初めてのオンライン授業、ドキドキのバレンタインチョコ製作、銀八タイムスリップ、銀魂高校ハチャメチャ大球技大会など、すぺしゃるおバカなエピソードがてんこ盛りィィ! そして、吉田松陽も登場…!?
中学3年の猪股大喜は、中学生活最後のバドミントン部の大会で思ったような結果を出せず、部活を引退した後もモヤモヤした気持ちを抱えていた。夏休みのある日、学校で匡と雛と夏休みの課題を片付けていると、「中学最後の思い出作りに夏休みっぽいことをしようよ!」と雛が提案する。何か今からでも出来ることはないか思案しながらバドミントンの自主練に向かった大喜だったが、思いかけず部活の顧問から明日から高校の練習に参加していいと伝えられーー!? ほか夢佳や、針生と花恋の中学時代のエピソードも収録!! 本編開始前、“青春”が動き出す初小説版!!
『SAKAMOTO DAYS』スピンオフ小説第2弾が登場!! 小説だけで読めるエピソードが入った、ファン必見の1冊!! 描きおろしイラストも見逃すな!! ・殺し屋温泉旅行 坂本一家は温泉旅館へ。久しぶりの家族旅行だ。楽しみな花だったが、トラブルでお風呂に入れなくなってしまう。なんとかしようとするシンだったが……。 ・勢羽兄弟のアルバイト 勢羽兄弟の過去。クレープのキッチンカーでアルバイトをする2人だったが、やる気の出ない真冬。潔癖がゆえ、接客はしたくない……。そんな2人の前に危険な男が……。 ・株式会社サカモト商事 〜裏切りの請求書〜 本編とはちょっと違う世界のお話。会社員としてバリバリ働くシンだったが、経理部の晶から、不穏な相談を持ちかけられる。社員の誰かが汚職に手を染めているというのだ……。 ・JCC真夜中の探索 坂本、南雲、リオンの学生時代。深夜、テスト問題を盗むため校舎へ侵入した3人。しかし、佐藤田先生が立ちはだかり……。 ・神々廻と大佛の食べ歩き 1人で食事を味わいたい神々廻。今日もネットで気になるお店をチェックするが、当然、それを大佛は見逃さない……。
古今東西の書物が集う墓場。 明治の終わり、消えゆくものたちの声が織りなす不滅の物語。 花も盛りの明治40年ーー高遠彬の紹介で、ひとりの男が書舗「弔堂」を訪れていた。 甲野昇。この名前に憶えがあるものはあるまい。故郷で居場所をなくし、なくしたまま逃げるように東京に出て、印刷造本改良会という会社で漫然と字を書いている。そんな青年である。 出版をめぐる事情は、この数十年で劇的に変わった。鉄道の発展により車内で読書が可能になり、黙読の習慣が生まれた。黙読の定着は読書の愉悦を深くし、読書人口を増やすことに貢献することとなる。本は商材となり、さらに読みやすくどんな文章にもなれる文字を必要とした。どのようにも活きられる文字ーー活字の誕生である。 そんな活字の種字を作らんと生きる、取り立てて個性もない名もなき男の物語。 夏目漱石、徳富蘇峰、金田一京助、牧野富太郎、そして過去シリーズの主人公も行きかうファン歓喜の最終巻。 残念ですがご所望のご本をお売りすることは出来ませんーー。 【目次】 探書拾玖 活字 探書廿 複製 探書廿壱 蒐集 探書廿弐 永世 探書廿参 黎明 探書廿肆 誕生 【著者略歴】 京極夏彦 きょうごく・なつひこ 1963年生まれ。北海道小樽市出身。 日本推理作家協会 第15代代表理事。世界妖怪協会・お化け友の会 代表代行。 1994年『姑獲鳥の夏』で衝撃的なデビューを飾る。1996年『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞長編部門、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2000年 第8回桑沢賞、2003年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年 『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞、2016年 遠野文化賞、2019年 埼玉文化賞、2022年 『遠巷説百物語』で第56回吉川英治文学賞を受賞。
竹千代は今に天下を掌中に入れおるぞーー。 室町幕府の権威が低下し、各地で戦乱が巻き起こっていた激動の時代。 松平家が城を構える三河、周辺国である尾張、遠江、美濃、駿河、信濃らが絡む東海地方の覇権争いは熾烈を極めていた。 そんな争いのなかで、織田家ついで今川家の質物として囚われていた松平家の竹千代ーー後の徳川家康。 数奇な運命を辿った幼少期から天下人へ。 直木賞候補『まいまいつぶろ』の著者が、天下統一を果たした男を鮮やかに浮かび上がらせる十の物語。 【著者略歴】 村木嵐(むらき・らん) 1967年、京都府生まれ。京都大学法学部卒業。会社勤務を経て、95年より司馬遼太郎家の家事手伝いとなり、後に司馬夫人である福田みどり氏の個人秘書を務める。2010年『マルガリータ』で第17回松本清張賞受賞、23年『まいまいつぶろ』で第12回日本歴史時代作家協会賞作品賞、第13回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞し、第170回直木賞候補作品となった。他の著書に『阿茶』『まいまいつぶろ 御庭番耳目抄』『またうど』など。
成都(せいと)随一の高級旅館、張家楼(ちょうかろう)。 主人は成都屈指の豪商、張家の末息子・エン(※)圭(えんけい)である。 すこぶる病弱なエン圭は、23歳になる今まで幾度となく生死の境をさまよった。 風が吹いては寝込み、雨が降っては寝込む。とにかく体が弱いのである。 ある日、久しぶりに体調がよく市をそぞろ歩いていると、 売卜者(占い師)のような男から突然声をかけられる。 いわく、エン圭は幽鬼、妖魅のたぐいを引き寄せる体質で、そのために不調が出るのだと。 半信半疑のエン圭だが、彼にお祓いをしてもらうと、確かに調子がいい。 それを知ったエン圭の父親は、どういうわけか、売卜者の娘を嫁にもらえと言いだした! 戸惑うエン圭をよそに結婚話は進み、いよいよ娘はやってきた。 ーーそう、色とりどりに輝く雲に乗り、空の上から。 天女とみまがう美しい少女はエン圭に歩みよると、 「人間の花婿なんて今時、流行らないわ」と言い放つ。 どうやら彼女は「人」ではないらしい……。 果たしてこの夫婦、一体どうなる!? ※王へんに宛
真実を見抜き、罪を償わせる。 たった、それだけ。それだけのことが、なぜこんなにも難しいーー? マンションの一室で発生したある殺人事件の現場に向かった、県警捜査一課の和泉。 そこで出会った女性警官・瀬良の第一印象は、簡単に言えば「最悪」だった。 しかし、上の命令で瀬良とタッグを組み殺人事件を捜査することになり、 和泉は彼女の類い稀な観察力を知ることになる。 二人の懸命な捜査により、事件のかたちは徐々に輪郭を現していくが、 待ち受けていたのは「正しい刑罰」の在り方を問う、予想外の真相だったーー。 和泉と瀬良が立ち向かった最初の事件「イージー・ケース」ほか、 事件に関する証言を頑なに拒み続ける容疑者の謎を追う「ノー・リプライ」、 解決の糸口が見えない誘拐事件を描く書き下ろし中編「ホワイト・ポートレイト」を収録。 心揺さぶる結末に息を呑む、圧巻の警察ミステリー! 【著者略歴】 本多孝好 (ほんだ・たかよし) 1971年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。 1994年「眠りの海」で第16回小説推理新人賞を受賞。1999年同作を収録した『MISSING』で単行本デビュー。「このミステリーがすごい! 2000年版」でトップ10入りするなどの高い評価を得て一躍脚光を浴びる。 著書に『MOMENT』『WILL』『MEMORY』『FINE DAYS』『真夜中の五分前』『正義のミカタ I'm a loser』『チェーン・ポイズン』『at Home』『ストレイヤーズ・クロニクル』『Good old boys』『dele』『アフター・サイレンス』などがある。