出版社 : 集英社
南三郡を実力で手に入れた呉の孫権は、無敵の水軍で江南を固めていった。胸中に渦巻くは合肥攻略だ。一方、最強の騎馬軍団と後漢の献帝を擁し、魏の曹操は再び天下統一の野望に燃えていた。「赤壁の戦い」で勝利を収めた劉備は荊州に足掛かりを得、益州を配下に置いて蜀を制した。三国鼎立の時代を迎え、戦いはますます熾烈なものとなった。焦点は荊州争奪にある。
時は八世紀末。東北には、大和朝廷に服従しない誇り高い人々がいた。かれら蝦夷は農耕のために土地に縛られるのではなく、森の恵みを受け大自然と共生しながら自由に暮らしていた。だが、その平和も大和軍の侵攻によって破られる。そして、一人の男が蝦夷の独立を賭け、強大な侵略者に敢然と戦いを挑んだ。彼の名はアテルイ。北の森を疾風のように駆け抜けた英雄の生涯を描く壮大な叙事詩。
年上のいとこ、かれんとの秘密の恋を打ち明けた時から、何かが動きはじめた。単身赴任していた父も帰京し、再婚、そして妹も生まれ、勝利の周囲はにわかに賑やかに。恋の行方は?
「わたしは腕に犬を飼っているー」ちょっとした気まぐれから、謎の中国人彫師に彫ってもらった犬の刺青。「ポッキー」と名づけたその刺青がある日突然、動き出し…。肌に棲む犬と少女の不思議な共同生活を描く表題作ほか、その目を見た者を、石に変えてしまうという魔物の伝承を巡る怪異譚「石ノ目」など、天才・乙一のファンタジー・ホラー四編を収録する傑作短編集。
笑顔の両親のもとに、泣いて生まれてきたあかんぼう。いじめを知り、人を欺くことを覚えてしまったあかんぼう。泣き、喜び、悩み、ひたむきに生きることを学んだあかんぼう。幸福に気づき、成功を収め、人生に翻弄され、挫折を知ったあかんぼう。99才まで生き、笑いながらわたしのところへやってくるあかんぼうの、人生劇場。
明華学園の水泳部部員・鈴原巧は、親友の聡史と菜恵、憧れの佐織らを誘って、美しい湖に泳ぎに行く。しかし、湖で不気味な影に足をとられ、溺れそうになる巧。-逃がさない。それ以来、巧の周りで奇怪な現象が。水のあるところに現れる、怪しい少年の姿。少年の霊は、誰かに取り憑いて、巧に近づいてくる!傑作学園ホラー。
トシオ・マナハン、13歳。フィリピン、セブ島のガルソボンガ地区に祖父と住み、闘鶏用の軍鶏を育てる日々だった。奥地の「虹の谷」には元新人民軍のゲリラ、ホセ・マンガハスがひとり住みついて闘い続けている。そこへ行く道はトシオしか知らない。日本から戻ってきたクイーンを谷に案内したことから、トシオはゲリラたちの内紛に巻きこまれていく。直木賞受賞の壮大な少年の成長物語。
トシオ・マナハン、14歳。セブ島で祖父とふたりで闘鶏用の軍鶏を育てている。ゲリラのホセ・マンガハスが住む「虹の谷」への道を知っていたことから暗殺、誘拐の硝煙の宴に巻きこまれていく。少年の夢。怒りと誇り。愛する者との別れ。慟哭の叫びを胸奥に沈め、少年は男へと脱皮して行く。第三世界の片隅から世界を睥睨する冒険小説、感動の巨編。直木賞受賞作。
昭和四十四年、京都。大学の新入生で、大の日本映画ファンの「僕」は友人の清家忠昭の紹介で、古き良き映画の都・太秦の撮影所でアルバイトをすることになった。そんなある日、清家は撮影現場で絶世の美女と出会い、激しい恋に落ちる。しかし、彼女は三十年も前に死んだ大部屋女優だったー。若さゆえの不安や切なさ、不器用な恋。失われた時代への郷愁に満ちた瑞々しい青春恋愛小説の傑作。
日本語に未来はあるのか!ラ抜き言葉、意味不明な流行語、間違った言葉遣い、平板なアクセント、カタカナ語の濫発…日本語の現状を憂う聴取者からの投書の山に、ディレクターは圧死寸前!?(「日本語の乱れ」)。その他、比喩の危険性、音声入力の可能性と限界、宇宙を蹂躙する名古屋弁など、言葉をテーマにした傑作12篇。
恋人のキタザワに誘われ、同居することになった南。ところが、そのマンションにはキタザワの遠い親戚マリコとその恋人サトシが住んでいた…。成り行きまかせで始まった男女四人の奇妙な共同生活を描く表題作ほか、別れの予感を抱えた若い夫婦があてのないアジア放浪に出る「かかとのしたの空」を収録。今を生きる若者たちを包む、明るい孤独とやるせない心をうつしだす作品集。
路地の奥に隠れ住む、超能力を持つ老人(「路地裏の天才」)、夜はナイトクラブの超人気ダンサーに変身する児童劇団所属の小学生(「名優キャット」)、穏やかに余生をたのしむ老紳士の密かな欲望(「生きる歓び」)…など“一見普通”の人々が隠し持つ、「もうひとつの顔」をテーマにした短篇集。軽快な語り口で、人生の苦さや怖さ、そして切なさを見事に描く、全五篇を収録。
2005年、某国のテロリストが戦略ミサイルを入手、日本を標的にしているという情報が飛び込んだ。平和ボケで危機管理能力ゼロの政府首脳は事の重要ささえ理解できず、事態の収拾を国際的詐欺師・沖田次郎吉に依頼する。彼はその恐るべき頭脳を武器に、3人の“騙しの天才”、足立梵天丸、井原世之介、綾小路右近を率いて現地に向かう。果たして沖田の秘策とは!?痛快無比の近未来ピカレスク。
呉の孫権は孔明の説諭に動かされ、蜀の劉備との連合軍を結成した。一方、荊州を席巻した魏の曹操は勢いを得て、南征を発令する。長江制覇に八十万もの大遠征軍を組織したのである。呉将は必ず投降する、と曹操は勝利の笑みを浮かべたが、その顔が凍り付いた。紅蓮の炎が自慢の水塞を襲おうとしている。世に名高い「赤壁の戦い」の帰趨は。
人生は謎。時を超えてめぐりあう三人のダロウェイ夫人。六月のある美しい朝。三人の女の特別の一日が始まる…ヴァージニア-ロンドン郊外。1923年。文学史上の傑作『ダロウェイ夫人』を書き始めようとする…ローラー-ロサンジェルス。1949年。『ダロウェイ夫人』を愛読する主婦。夫の誕生パーティを計画し、息子とケーキを作り始める…クラリッサ-ニューヨーク。20世紀の終わり。『ダロウェイ夫人』と同じ名ゆえに元恋人リチャードにミセス・ダロウェイと呼ばれる編集者。文学賞を取った彼のためにパーティを開こうと、花を買いに行く…異なる時代を生きる三人の「時間」はいつしか運命的に絡み合い、奔流のように予想もつかぬ結末へ…。ピュリッツァ賞&PEN/フォークナー賞受賞。本年度アカデミー賞受賞、映画「めぐりあう時間たち」原作。
第二次大戦末期、多数のドイツ避難民を乗せた客船がソ連の潜水艦に撃沈された。死者の数はタイタニックの6倍にも達した史上最悪の惨事となりながら、この悲劇は人々の記憶から抹殺されて、半世紀以上語られることがなかった。グラスだからこそあえてタブーに挑んで歴史に対峙した。