出版社 : 集英社
スペインの稀覯本狩猟家コルソは、中世に出された奇書の真贋鑑定を持ち込まれるが、その矢先著名な料理本出版社オーナーが売却したデュマの名作『三銃士』第42章の肉筆原稿の調査も依頼される。しかし、その後、オーナーは不可解な自殺を遂げ、コルソも何者かに襲われる。彼は危険を承知で、ポルトガルのシントラ、パリに飛び原稿の調査をすすめるが、周囲で殺人が次々と!「悪魔を呼び出す呪文」-奇書には恐るべき秘密が隠され、それが現実に…。そして、デュマをめぐる謎の組織の存在が…。17世紀の「悪魔の書」、19世紀の『三銃士』、そして現在。時空を超えて絡み合う、謎また謎。
リオで暮す妹ルシのもとへブエノスアイレスからやってきた姉ニディア。片やロマンチスト、片やリアリストの二人は隣りの女性やハンサムなガードマンをめぐって噂話に花を咲かせる。だが、妹は息子の転勤にともないスイスへ移住、南国を偲びつつその地で病死する。周囲のはからいで妹の死を知らされない姉は、リオで待ち続け、妹に宛てて手紙を送り続ける。ところが、彼女は信頼していたガードマンに裏切られ、傷心のままブエノスアイレスに戻るのだが…。
われわれが知っているのは、実のところ、都会のアブサンだけである。酒場の、詩人たちの緑の妖精…田舎のアブサンについて、潅木林に存在したという製造所について、何を知っているというのだろうか。1915年春、ジョゼが姿を消したとき、丘全体に沈黙が拡がった。アブサンは忘れられてしまった…だが、9歳の少年が、この酒の驚くべき力を見つめていた。
屍の声-山間に響く私を呼ぶ声。祖母の意識は何処へ。猿祈願-秩父山稜の観音堂。老女はなにかを呟いた。残り火-風呂の焚き口で燃えあがる炎。憎しみの火が薪に絡みつく。盛夏の毒-炎天下。背後からふたりにしのびよるものは。雪蒲団-冬の新潟。隣家の窓から不思議なものが…。正月女-病み衰えていく体。夫と過ごす元旦はこれが最後なのか。
植民百周年にわく火星マルスシティ。荒事専門のトラブルバスター、鈴木さやかは、ある女性から、昔の恋人を探して欲しい、と依頼される。尋ね人の名は、チュチェ・フェレイラ。前の晩、天才少女歌手リィ・ドリスを誘拐しようとして、さやかに捕まった間抜けな悪党その人だった!同じ頃、当のチュチェも、栗色の髪の謎の少女から仕事の依頼を受けていた。内容はずばり殺人。しかも断ることができないというーさやかはなんとかチュチェを探し出すが…。老若男女巻き込んでの大逃走劇。
女薬剤師ヘラはハイデルベルクの産婦人科病院に入院中。病院の夜は長く、退屈だ。二人部屋の隣のベッドにいるのは、初老のローゼマリー・ヒルテ。暇つぶしに、ヘラは夜ごと彼女に自分の過去の秘密を打ち明けはじめる。相手の病状は芳しくなさそうだし、どうせ先は長くないはず。だが、ローゼマリーは恐ろしい聞き手だった…。
摩周島は八丈島から船で2時間あまり、伊豆諸島の絶海の孤島である。人口は243名、ゆえに島民はみな知り合いという、平和な土地だった。ゴールデンウイークを恋人・多貴の暮らすこの島で過ごすために敬史朗はやってきた。だが、彼の到着直後、人々から御神木と呼ばれる桜の古木が何者かによって傷つけられる事件が発生。そして、次々と残酷な事件が!島民の間に不穏な空気が広がる。その矛先はなぜか、鋭敏な感受性と複雑な出生の事情を持つ夕貴の姪・明日香に向けられていた。
今から三十年前のパリ。二人の男が一人の女に恋をした。しかし女が選んだのは別の男。失意の二人。一人はそのまま失踪し、もう一人は東南アジアへ旅立ち、マレーシアのゴム園の臨時経営者に雇われ、汗みずくで成功を手にした。そして時は流れ、現代に。相続人の夫妻がゴム園に乗り込んできて、地位に不安を抱いた男は、現地人労働者達を煽動して反乱を企てる。男は武器を調達するため三十年ぶりにパリに戻り、暗黒街とつながる甥を巻き込み、ル・アーヴルから出る貨物船に潜り込んで、いざ出撃。
激動の文化祭も終わり、ほっと一息のしーの。親友のマッキーが他校生からのラブレター攻勢に悩まされているのが、ちょっぴりうらやましい。そんなある日、しーのにも初めてのラブレターが届き、大喜び。でも手紙をもらうだけで満足だったはずなのに、いつのまにか初めてのデートまでセッティングされていまい、またまた大騒ぎ。さあ、どうしよう。
酒酔い運転のトラックが店に突っ込むという事故の現場に居合わせたレイ。美晴の話から、同じような事故がチャイナタウンで続発しており、しかも運転手はみな心臓麻痺で死亡していることを知る。そして背後には住民を無視して進められる街の再開発計画がー。チャイナタウンを守るために立ち上がる決意を固めたレイの前に現れたのは、美晴の従兄で大財閥の御曹司リオンだった。美晴に想いを寄せるリオンは、かつて彼女と暮らしていた頃のレイに、嫌がらせをし続けた男だった…。
クオイルは無器用な三十男。大学を中退、三流新聞に拾われるが解雇されてしまう。初めて出会った女に夢中になり結婚するが、浮気をし放題の性悪女で挙句に事故で死んでしまう。父と母も借金を抱え自殺。残されたのは二人の娘だけ。彼は人生をやり直すために娘達と唯一の血縁の叔母を伴い、父祖の地ニューファンドランドへ渡る。そこには一族の名前が付いた岬があり、叔母が数十年前に捨てた家があった。クオイルは地元の新聞に船の情報-港湾ニュースを書く記者として雇われ、島の生活を始める…。全米図書賞&ピュリッツァー賞をW受賞。ハートランド賞、アイリッシュタイムズ賞など各賞を総ナメし、PW誌1位に輝いた感動の小説。
生と死をめぐる情熱の日々と濃密な時間。「私」を「先生(ソンセン)ニム」と呼んで走り寄り、抱きついてきた若い女性のヤンヒ。急逝したそのヤンヒを追憶しながら、語り手の「私」は、今でも信じられず、納得しがたい彼女の死-この作品は一人の人間が一人の人間の死を悼む最高の形式としての「文学」というものを私たちにもう一度、想起させてくれる。
太平洋戦争中、フィリピンの山中でアメリカ兵を目前にした私が「射たなかった」のはなぜだったのか。自らの体験を精緻で徹底的な自己検証で追う『捉まるまで』。死んだ戦友の靴をはかざるをえない事実を見すえる表題作『靴の話』など6編を収録。戦争の中での個人とは何か。戦場における人間の可能性を問う戦争小説集。
ジョイス文学の輝かしき頂点であり、二十世紀文学の偉大な指針でもある、『ユリシーズ』の新訳決定版。ダブリン。1904年6月16日。それはダブリンにとってはありふれた一日だったが、ふたりの中心人物にとっては平穏無事な日ではなかった。22歳の文学志望の青年スティーヴンと、新聞社の広告とりである38歳のユダヤ人ブルーム。彼らはダブリンのなかを歩きつづける。まだ親しくはならずに。第1挿話「テレマコス」から第10挿話「さまよう岩々」まで。
二十一世紀初頭、多様化、凶悪化する犯罪を未然に防ぐため、日本政府は探偵を国家公務員、即ち「国立探偵」として採用する制度を確立。江戸川乱子は、この難関を突破した現役女子高生にして最年少の国立探偵であるー。全国に展開する多摩総合学園の専属となって二件目の事件は、まだバンカラの気風が残る盛岡の男子校。ひとりの転校生によって学生同士が二派に分かれて対立しているという。一乗寺理事長の強い希望で、乱子は詰襟の学生服に身を包み、男として乗り込むことに…。
旅の途中で出会いを重ねた人に言わせれば、僕は変わったらしい旅の途中で彼女を思い出した人に言わせれば、彼女は悪女らしいけれど僕には、「自然」が見てきた。彼と私、二つの遍歴を重ねる野心的長編。
ニューオリンズのフェアモント・ホテルの豪華なベッドで、テレビ伝道師ジャクソン・ワイルドが死体で発見された…頭と心臓と睾丸に銃弾が三発。全米をまわり、ポルノ一掃の運動を続ける有名人のショッキングな死に、キャシディ検事補はみずから希望してこの事件を担当する。容疑者の筆頭は、通信販売の下着会社『フレンチ・シルク』のクレア・ローレンツ。オーナーで下着デザイナーの彼女は、自社のカタログがポルノだと名指しで叫弾されつづけ、動機は充分。だが、キャシディは初対面で、彼女の気品ある容姿と神秘的な雰囲気にひかれていく。アメリカで人気爆発の女性作家が描く、ベストセラー・サスペンス。
ミシシッピ川の近くのローズシャロン館。カタログ撮影中のクレアのもとへ、キャシディ検事補が姿をあらわした。黒人ファッション・モデルでカタログの製作者ヤスミンは、不倫の相手ピートリー下院議員とのあいびきで留守。バルコニーでキャシディに抱きしめられたクレアはもう抵抗できなかった。でもなぜ。キャシディは自白させるために自分を誘惑したのでは。悩むクレアに、信者をたきつけたエリエルの攻撃は続く。だがジョシュアはそのエリエルのアリバイをくつがえした。真犯人は誰だ。ヤスミンの衝動的な行動で、ついにクレアは決意する…。90年代のアメリカで最も注目されている女性作家の傑作小説。