出版社 : 風詠社
2021年12月発行の「ギリ飯」続編。おばんざい屋「くるくる」を訪れるパート主婦、トラック運転手、ギョーザ屋店主、工場従業員と、職業も年齢も性別も様々な人々が織りなす人間模様を描いた人情味溢れるオムニバス小説。前篇で登場したキャバ嬢の麻美や信用金庫の宏をはじめ、懐かしい面々のその後は? そして新たに登場する人々が出くわした思いもよらない事件とは? 「人生ギリギリ」の場に立っても、一皿の料理と育子の一言が、いつも人生をもう一度やり直す気力へとつながっていく。誰にも思い当たるようなエピソードの数々と、地元の旬の食材を使った料理の描き方にも注目。全ての章で大きな存在感を示す「くるくる」の女将「育子」の、大地にしっかりと根を張ったような強さは、本作品でも読者に安らぎと心地よい読後感をもたらすに違いない。さらに続編が期待されるシリーズ第二弾。 レジ係の頼子;トラック運転手の孝夫;ギョーザ屋の敏明;ストッキング工場の義男;犬のコタロー
今、この文章を読んでいるあなた。それは本当にあなたの意思でしょうか? すべての人の常識を根底から覆す驚天動地のストーリー。鳥肌・絶叫&感涙必至の超絶ホラー誕生。めくるめく恐怖と感動。救いのない物語が幕を開ける。中学三年生、西澤浩志の心の中には、幼い頃から「ゼル」という小生意気な悪魔が棲んでいた。いじめられっ子の西澤は、ゼルにそそのかされ、学校中で人気のある美少年の同級生、北城翔一に対して魂交換の儀式を行うが……。果たして、本当に魂は入れ替わったのか? やがて起こる凄惨な事件。異世界に棲息し、人の意識に寄生するゼルの正体を追う催眠療法士 黒川美希と新聞記者 瀧口勇介の壮絶な末路は? 最新の脳科学で、魂の存在や意識の正体を極限まで突き詰めた衝撃のホラー小説。この本を読み終えた時、あなたは自分のアイデンティティを保っていられるだろうか? そして最後には、あなたの予想を裏切る結末が待っている。 プロローグ/その前(二〇〇七)1〜7/その時(二〇〇七)1〜2/その後(二〇二二)1〜6/エピローグ
紀元前五世紀、十六の大国が争う古代インド。社会の急激な変革は古い神々の教えを揺るがせ、人々の心に虚無がはびころうとしていた。釈迦国の王子ガウタマ・シッダールタは虚無にあらがいながらも生きることの苦しみを悟り、国も身分も家族も捨て、苦からの脱却を目指す。長い修行の果てに“目覚めし者”仏陀となった彼は、全ての衆生の救済を志すー。古今東西の仏教研究・学説を下敷きに、シッダールタ=仏陀の誕生から入滅、それを彩る「虚無の太陽」プーラナら自由思想家、多くの弟子たち、反逆児デーヴァダッタ、釈迦国の滅亡、王舎城の悲劇、殺人鬼アングリマーラなどを新たな解釈で描き出す。 小乗仏教的志向と大乗仏教的志向の萌芽とその対立の中で、仏陀最後の旅を記した経典である大般涅槃経をなぞりながら、そこに隠された仏教分裂に至る原因と思惑を解き明かす最終章は圧巻である。人間仏陀の偉大なる生涯と挫折を描いた長編歴史小説。 第一章 四門出遊(しもんしゅつゆう)/第二章 梵天勧請(ぼんてんかんじょう)/第三章 初転法輪(しょてんぽうりん)/第四章 祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)/第五章 諸行無常(しょぎょうむじょう)/第六章 破邪顕正(はじゃけんしょう)/第七章 涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)/参考文献
高橋真一郎を中心に展開される家族三代の絆を描いた感動作。真一郎は両親の姿を見て家族の大切さを知り育った。長じて役所に勤め、同僚であった優子と結ばれ、一男一女を得た。しかし、長男の正樹は希望の職に就いたものの突然退職し、そのうえADHDが発症、引きこもり生活に陥ってしまう。その一方、真一郎は定年を機に新聞配達の職に就く。毎日、配達される新聞は社会との繋がりでもあると、その仕事のやりがいを正樹に伝えるが耳を貸さない。しかし、家族の努力により、彼は立ち直りの兆しを見せるが、そんな矢先に真一郎が亡くなってしまう。正樹の喪失感は強く、生前の父の存在の大きさに気づく。そして、真一郎が後半生をかけた新聞配達の仕事に就き、父の仕事をなぞることで、暗く長いトンネルから抜け出す。そして、かねてから強い関心を持っていた自然保護にも取り組むことを誓う。息子の立ち直りを確信した母は星空の彼方の亡き夫に呼びかける。 はじめに/高橋家/葛藤/画策/稼働/別離/憧憬/あとがき
昭和の戦争が終わって5年。旧家「大洲屋」の当主が宿場町の女性に産ませた子という烙印のもと、新興の造り酒屋「相垣」に嫁いだ柚子。そこでも待っていたのは火宅の日々だった。時代の荒波に飲まれ零落する「大洲屋」、やはり時代の波に背を押されながら会社組織へと姿を変えていく「相垣」。幼い頃「井筒のようじゃ」と言われて育った「きょういち」への想い。その人を裏切って他家に嫁いだ自分の罪。2つの家に絡みつく秘められた血の繋がりと、忘れられない人への想いが、津波のように繰り返し柚子を追い詰めていく。母から子、そして娘へと続く火宅の日々。それでも前を向いて生きる柚子の姿を描く半生記。 一 早春 二 埋み火 三 “はこべ”四 理 五 花・顔 六 女 七 繕い 八 鮠 九 影 十 乱れ雲 十一 声 十ニ 相似 十三 靴 十四 命の宿り 十五 贈り物 十六 誕生・終焉 十七 形見 十八 隣国動乱 十九 たんぽぽ ニ十 無言劇 ニ十一 彼岸 二十二 稽古 ニ十三 後継ぎ ニ十四 会社設立 ニ十五 酒場 二十六 霧の中 二十七 絵本 二十八 いや、いや 二十九 方針 三十 待つこと
先生はなぜ、自分を慕う一人の青年に遺書を託したのか──同郷の友人が思いを寄せていた女性を妻にしたこと、その友人が自殺してしまったこと、自身の内面を妻に打ち明けられずにいたこと…。己の運命に苦しめられた男の「こころ」を、登場人物たちの関係性から読み解いていく。先生が以前「私のようなものが世の中へ出て、口を利いては済まない」「恋は罪悪です」などと語っていた気持ちを、青年はそのとき既に心の奥で理解していたのかもしれない。 はしがき/序論/本論(一、先生の“こころ”/二、Kの“こころ”/三、奥さん(先生の妻・静の母)の“こころ”/四、御嬢さん(静)の“こころ”/五、私の“こころ”)/後序/あとがき
お里は、髪結いの技に魅了され、自らも髪結いを志す。二人の師匠に導かれ、技を磨いていく。頼る人もいない不幸な生い立ちのお里は髪結いとして独り立ちするために努力を重ねていく。そして彼女を慕う弟子を預かることになる。自分を慕ってくれる弟子達の為に生きる事も自分の人生と決意を新たにする。お里の腕を信頼する常連もついてきて、順風満帆に見えたが、働きづめのお里の体に異変が表れる……。「私も先の事は何があるかわからない。お前達も技を磨いて、いずれ自分のお店を出してくれれば、これ以上の願いはないよ。これからは自分の力で生きていくんだよ。私には身寄りはないけれど、店にいる三人が私の娘だと思っている。私は幸せだよ」。恋も知らず、人並みの女の暮らしなど考える暇さえなく、髪結いになる為にしゃにむに生きた一人の女の生涯を、弟子達の人生模様も織り込んで描く時代小説。 第一章 見習い/第二章 技は精進/第三章 髪は粋で艶やかに/第四章 旅立ち
大学院生で文学志望の私は、夏休みには小説の執筆等で白馬村の宿に滞在していた。宿で美しい人妻と出会って、年に一度この宿で再会する約束を交わす。恋情の募った3年目の夏、私が訪れる直前にあの人は何故か宿から消えて…。「学生村」が盛んだった昭和40年代、清流の流れる風光明媚な村を舞台に、互いに己を律しながら展開する香り高い愛の物語。
「硬派」、と呼ばれている若造りの専業主婦「彼女(寿)」、その夫で、なめくじ呼ばわりされている中年の貧相な病理医「彼」、ふたりの間の息子で、小学校を「平等の牢獄」と呼び、あえて塾でのハードな勉強に逃避して、そこに友情を見出す多感でシニカルな「少年」。この、すこしねじれた一家とそれを取り囲む人々を色々な角度から見つめたお話。(音楽+虐殺)。「ジャズの研究」「美しい娘たち」「告白的暗殺論」「音楽+虐殺」=4編収録。
リニア中央新幹線建設計画に持ち上がる疑惑!静岡工区の環境影響評価書データにも疑念が?そんな折、調査を担当した関連会社社長が赤石ダムで遺体で発見される。彼の死は果たして事故なのか、自死なのか。地元紙の新聞記者で登山愛好家でもある高木は丹念な取材を続け、真相に迫っていくのだが……。登山家でもある著者の知見を盛り込んだ長編山岳ミステリー!/現実の事案(「JR東海・中央新幹線整備計画」や「国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題」)をも想起させる迫真のストーリー!/リニア中央新幹線建設計画という国家的事業の影でほくそ笑む巨悪。果たして新幹線建設計画を巡る数々の疑惑を記者は白日の下に晒せるのか! プロローグ/井川/椹島/二軒小屋/赤石尾根/聖岳/疑惑/赤石岳、謎の遭難/結末/あとがき
八重は、幼い頃、両親を亡くし、九州の玄界灘に面した島で漁師をしている祖父母に育てられた。その後、十八歳で那嘉田家へ嫁ぎ、一年後には娘が生まれ、皆が仲睦まじく暮らしていた。しかし、三年が過ぎた頃、八重の運命は激変する。那嘉田家の多額の負債を返済するため、遊郭へ奉公へ出される。迎えに来るという言葉を信じて待ち続けるが、音沙汰の無いまま七年が過ぎていた。八重は遊郭から抜け出すために老県会議員の保身のための策略に加わり、一人の少女の恋を引き裂く。遊郭から自由の身になり、懐かしい古里へ戻ったものの、そこはかっての古里ではなく、しかも八重は自らの数奇な運命を知ることになる。やがて古里の小島を離れ、飯屋を出した。そこで、八重は、自らが産み落とした娘と再会するのだが……。波間に漂う小舟のように過酷な運命に翻弄される女の人生を描く。 一章 那嘉田家の嫁/二章 観音堂/三章 糸/あとがき
三世紀半ばの卑弥呼から四世紀後半の百済、六世紀初めの磐井の乱まで、多くの史跡はあるが、人が活動した歴史史料が少ない空白の期間です。採集、狩猟の縄文文化から、稲作を中心とした弥生文化、古墳時代へと、人が集団化して動きが広範囲になり、数々のドラマが生まれてきたのだと思います。本書は「古事記」、「日本書紀」等を参考に、各地の史跡に立って思索し、埋蔵センター等で出土品を見ながら想像を広げ、古代の人の生活と権力誕生を描いた小説です。歴史論議を誘う意図はなく、登場する人名や地名、遺跡の名称は、「記紀」などの記述を少しアレンジしました。歴史とは「人」であり「人の行動」であり「行動を決める心」が歴史を動かしてきました。歴史のロマンや推論に正解はありません。そこに歴史の面白味があります。今、この時が歴史の始まりです、これからの歴史が平和である事を願っています。 まえがき/第一部 四人衆と二人の女性/第一章 神武東征と大国主命/第二章 崇神天皇と大物主神/第三章 日限媛の哀歌/第四章 卑弥呼の旅/第二部 胎動するヤマト政権/第一章 山辺道の大王たち/第二章 食料確保の道/第三章 ヤマト文化の拡散/第四章 仲哀天皇と神功皇后/第三部 難産のヤマト政権/第一章 もがく応神天皇/第二章 大国主命のDNA/第三章 履中天皇兄弟と甥っ子/第四章 焦る倭の五王 讃・珍・斉・興・武/第五章 継体天皇の出現/第四部 考察「古代ヤマト政権の誕生ロマン」の背景と諸説/序章 ヤマト王権かヤマト政権か/あとがき/登場人物紹介
信用金庫の宏、キャバ嬢の麻美、庭師の幸三、ジャガイモ農家の光男、課長の正明。「おばんざい屋くるくる」を訪れる人々には思いもかけないドラマが待ち受けていた。季節の味も合わせて楽しむことができる極上のグルメ&オムニバス小説。
三代将軍家光から、鍔削ぎ清光の鞘に秘められた密命を預けられた霞流開祖の父・脇坂外記は陰柳生の暗殺団に殺害された。「鯉口を切れば冥府への入口」「相手の刃の下にこそ霞流ならではの道がある」苛酷な流派、人斬り剣法に六郎太は身を投じるー。
夢の世界「表象の森」に佇む妖しげな宿。たまたま1泊だけのつもりの旅籠になぜか連泊することになり、やがて私は…今と昔が交錯する空間で様々な幻影や鬼面たちが記憶の「思い」に語りかける幻象妖惑小説。