1988年5月発売
“人間の土地の王になれ”予言者はいった。神々の王・オーディンに選ばれた美獣・ハリィデールは神槍グングニールを片手に征服への道を驀進する。闘いの途中知り合った黒小人・ギンナルとおだやかな中にもりりしさを秘めた美少女・ミザーラを従え、ミッドガルド南部を制圧する。北には、最大の敵、不死王スカイハイトがいる…。過去を探して終わりない旅を続ける戦士・美獣に最後の闘いの時がきた…。長編ヒロイック・ファンタジー。
藩魂を貫いて壮絶な死闘を挑む会津白虎隊。寛永寺で一夜にして敗れ去ったが、三河武士の骨法を示さんと決起した上野彰義隊。1人の若き俊英が天狗に一撃されたために起きた水戸天狗の反乱。カラフトの隠密・間宮林蔵。西郷隆盛摩下の猛将・桐野利秋…。コップ酒を呻りながら等々呂木仙神翁が語る10の史譚。いずれも日本男子の面目躍如たる時代伝奇小説。
公立高校の校長をしていた奏男は、50歳を過ぎて教え子の母親と駆け落ちし、職を失った。地方都市でひっそりと始めた私塾は、今までの教師生活では得られぬ充実した喜びを彼に与えてくれた(教師)。進学・ツッパリ・学習塾そして組合問題など、現在の教育が抱える問題を、教師の側から見据えた連作。
「愛してる、スーザン」「私の子供を産んでくれ」「私の妻として、ここで生活してくれ」孤独なスーザンに、無機的なコンピューターの声が呼びかける。彼女の家に侵入し、彼女を監禁し、体のすみずみまで調べ、そして求愛するコンピューター《プロテウス》。彼はついに、スーザンを受胎させようと行動をおこした。恐怖におののくスーザンに、氷のように冷たい《プロテウス》の触手がのびる。高度に機械文明化した現代に君臨するコンピューターという“悪魔”。…スーザンは第二のローズマリーになるのか?スティーヴン・キングの次代をになう恐怖小説家、ディーン・クーンツが放つハイテク・ホラーの傑作。
久野冴子は仕事を持ち都会で生きるひとり暮しの若い女性。春夏秋冬の季節の移ろい、淡淡と過ぎていく日々のなかで、妻子ある男性やかつての同級生の男友達との秘やかな関係が、彼女の心に目に見えぬほどの影をおとす。大部分を水面下に隠して水に浮かぶ船の喫水のように、ひとりの女性の日常の喫水を描くことで、水面下にひそむ人間の意識や感情の大きな移ろいを細やかな筆で浮き彫りにする会心の長篇小説。
甲斐の若き猛虎・武田晴信(信玄)の運命は、隻眼の男・山本勘助を知行百貫で召し寄せた時から開かれていった-。諏訪頼重を討ち、宿願だった諏訪を押さえ、父信虎ですら果たし得なかった信濃経略への大きな一歩を踏みだした晴信。これはすべて、軍法にたけた城取りの名人・勘助の武略によるものだった。信濃の一角に武田領を作った晴信は勘助が描く「絵」によって、天下取りの目標を定めていく。「武田幕府を開く!」という野望を秘めた晴信と勘助の戦略をうたいあげる時代大長編。
子供たちは、美しい地球を求めて旅立った。海をさがしに行く少年。空をさがしに行く少女。河をさがしに行く少年…。そうだ、まだ僕たちは人間をあきらめてはいけなかった。この一冊、いま新しい「星の王子さま」。
ドブ掃除から映画館の席取りまで、なんでも引き受ける“なんでも屋大蔵”こと釘丸大蔵のもとに舞い込んで来る依頼の数々、浮気調査の報告書が盗まれた!猫が誘拐された!私は一体誰なんでしょう?…奇妙な依頼の背後に隠された意外な事件。飄々とした大蔵が、持ち前の行動力と鋭い勘、そして冴えた推理で次々と難問を解決する。ほんわかあたたかな連作ミステリー5編。
明治44年8月、巨大な円筒が東京湾に落下した。円筒から姿を現わした4台の怪異な機械。それはなんと、13年前にもロンドンを襲った火星人類の戦闘機械だった。高熱光線を発し、帝都を焼き払う戦闘機械。帝都危うし!この危機に決然と立上がる押川春浪、吉岡信敬らバンカラたちの集団・天狗倶楽部の面々。帝都の運命や如何に!明治末の東京を舞台に繰広げる書下ろしSF長編。
大手製薬会社で唯一の女性プロパーとして働くシーリアは、医者たちに新薬を紹介するこの仕事に情熱を注いでいた。利潤追求のみを目的とした新薬開発競争を目にし、男性社会が持つ様々な偏見や障害と闘ううちにも、彼女の健全な良心はしぼむことがなかった。アメリカの製薬業界で、鋭い直観力と強烈な野心を武器に成功していく1人の女性と、その周辺に展開される多彩な人間ドラマ。
社長となった盟友サムをはじめ、シーリアの確かな判断力に信頼を寄せる者の数も社内に増えてきた。社は、画期的なつわり防止薬モンテインに社運を賭けていた。処方薬販売部長としてその販売作戦の指揮をとることになったシーリアに、医師の夫は、妊婦への投薬に対する疑念を表わした。-企業における利潤追求と社会的使命の調和という、永遠のテーマを追求する、著者の会心作。
デビュー前、ミュージックキャンプで出逢った不思議な女性。年下の理想の先輩。ウィズ・ベイビーの幸福をみつけた学生時代の友だち。そして、遠い北の国で哀しく暮らす女-。著者中島ゆみきがめぐり逢った女たちの奏でる様々な人生のかたちを描く、「女歌」に続く書下ろし小説第2弾。
元老院議員の息子カエソは、パウロによって洗礼を受け、それによって、からくも義母との近親相姦の危険から逃れる。しかしそれも束の間、今度は男色家ネロの淫らな誘いを受けてしまう。皇帝の機嫌を損なうことは、即ち一家の破滅を意味する。宿命的ともいえる美貌ゆえに、カエソの困惑はますます深まっていく。やがて大火災がローマを襲う。ネロが火を放ったという噂が広がると、ネロはキリスト教徒に罪をかぶせ、彼らの大虐殺を決意する。彼らが建設しようとしている美徳の都と、ネロが永久にその名を冠することを望んでいる新しいローマ、輝くばかりの逸楽と背徳の都ネロポリスとは、永遠に相容れない存在だからだ…。主人公カエソはキリスト教徒として、ペテロと共に牢獄に因われる。
全身に煙草の火を押しつけられ、性器を切られた無惨な死体-警察はホモの猟奇殺人と考えていたが、死体の左手の小指が折れているのを見た私立探偵ジョン・カディは、戦友アルは拷問されて殺されたのだと確信した。ガディは友の仇を討つべく調査を始めた。アルの“敵”は何者なのか?彼がわざわざボストンまで来ていたのはなぜなのか?カディは手掛りを求め、アルの故郷ピッツバーグへ飛んだ。精力的に調査を続けるその行手にやがて差すベトナム戦争の影-カディは自らの過去をも振り返りながら、さらにペンタゴンまで探り始めた。だが、危険がすでに背後に忍び寄っていようとは、彼には知る由もなかった。やさしくもタフなボストンの探偵カディの、命をかけた復讐行を描く待望の第二弾。私立探偵小説大賞受賞。
2032年、金色の後光にも似た環状体で直径40マイルにもおよぶ謎の物体が、太陽系を通過していった。それから1年後、地球は“ハロー”と名づけられたその物体が残していった“シード”によっておおわれた。シードはあらゆる都市、町、村の中心に陣どり、強力なアルファ波を放って、人々を恍惚状態のうちに虜にしたのである。かくてシードは地球文明の幕をおろすことにみごとに成功した。人類に残された最後の希望は月の植民者たちームーンメンであった。トレントン博士にひきいられたかれらは、シードから地球をとりもどすべく、ケーキウォーク作戦を発動させたが…。