1988年6月1日発売
シベリア=西ヨーロッパ・パイプライン開通式を目前に控えた1983年12月、極寒の収容所から3人の囚人が脱走した。この事件はやがて凍土帯の少数民族の暴動へと発展する。クレムリンは軍を投入し事態の収拾に全力を傾けるが、脱走犯の足取りさえ掴めない。一方、現地に派遣された民警の女性検事アンナは捜査を進めるに従い、意外な真相に近付いていく。亡命作家が描く迫真のサスペンス。
CIAは、百万人に1人という心を覗く力を持つ男女を集めてスパイに仕立てあげ、国家の重要機密にかかわる情報戦に利用している。しかし彼らは、そのあまりにも“敏感な心”のために32歳以上は生きることが出来ない、という。ふとしたことから、自分の運命に疑問を抱いたスパイたちは、巨大な組織との対決を余儀なくされる。特殊な力を持つスパイたちの苦悩を描く異色サスペンス。
トランクを少し斜めに傾けてみた。試しに留金を押してみると、抵抗もなくパチンと外れる。それならと、蓋をそっと開けた。隙間から、ぎっしりと詰まったものが見える。紙がぎっしり。唐草模様だ。伊藤博文。札束である!-後楽園球場でトランクいっぱいの贋千円札を渡された「私」は、月産百五十億円の紙幣生産地へ赴いた。そこは何と…。「模型千円札裁判」の有罪判決から四半世紀、前衛画家赤瀬川原平が、いま尾辻克彦として放つ、脱経済=超芸術(トマソン)小説。あふれる想像力と言葉の乱舞が、読者を天空の高みへと誘う。
ウォール街のエリート証券マンが、突然透明人間に!その瞬間、街は苛烈な試練とロマンに彩られた未知のジャングルに変わった-。待ちうける罠、忍びよる追跡者をかわし、現代ニューヨークでいかに生きるか。究極のサヴァイバル・ゲームの賽は投げられた!卓抜な発想で描く、新感覚のスーパー・エンタテインメント。
生活のすべてがコンピュータで管理される夢の新興住宅地、コブルストーン・ヒル。白い家と緑の芝生。すみきった青空。だけどこの街に住んでいるのは、ちょっとおかしな人ばっかり。お向かいのご主人は、なぜかわが家を目のかたきにして、わざわざ家庭用ミサイルを設置しちゃうし、それに対抗したうちのパパなんて、ガレージに原発をつくっちゃった!ふたりの喧嘩はエスカレートするばかりだし、おまけに家族は災難つづき…。いったいこの街、どうなっちゃうの?若き異才マーク・レイドローが、ブラック・ユーモア光線を乱射して、アトミック・エイジに捧げる傑作コメディ。
二十九歳の若さで大型航宙艦〈エンタープライズ〉号の艦長に任命されたジェイムズ・T・カークーだが、かれを待っていたのは、移動演芸団率いて宇宙基地を巡回するという退屈な任務だった。何かというと新米艦長に反発する乗組員たち、移動演芸団の気が強い女団長を相手に、クリンゴン帝国宙域と近接する第十三宇宙基地めざしてカークの奮闘の旅が始まった。
クリンゴン帝国との境界宙域を航海中の〈エンタープライズ〉号の眼前に、突如、正体不明の飛行物体が現われた。動揺する乗組員をよそに、自らその物体に上陸したカークは、空を飛ぶ異星生命体フライヤーとのファースト・コンタクトに成功する。しかし、フライヤーと精神融合したスポックはショックで昏倒し、演芸団の女団長らも行方不明になってしまった…。
平和な村ネルウィンに、今戦乱の暗雲が迫っていた。北方の地で権勢をふるう悪の女王バヴモルダが、魔の手を伸ばしてきたのだ。故郷を守り、世界に平和をもたらすため旅立ったウィローを待っていたのは、善と悪の壮絶きわまる魔法の決戦だった!〈スター・ウォーズ〉で全世界を熱狂させたルーカスが贈る最新SFXファンタジイ映画原作。
「燃えろ!」ガリオン少年は、心に潜む不思議な声に命じられるまま言葉を放った。すると、たちまち親の仇チャンダーが炎に包まれた。ついにガリオンの内に眠っていた恐るべき“力”が目醒めたのだ。やがて時を経るにしたがい、この魔力は死んだ子馬を生きかえらせ、巨大な岩をも動かすほど強力になった。が、ガリオンには魔力をコントロールする術がわからない。あまつさえ、彼の内なる声は謎めいたことを語る有様。自分は得体の知れぬ怪物と化したのか?ガリオンは不安にとらわれながらも、〈珠〉を盗んだ邪神トラクの高弟を追うが…。
マーナが72回めの離婚をして、ようやく回ってきたおれの番。この結婚の日を半年以上、待ってきた。ところが、二日間の補給・整備停船の間にひまをもてあまして惑星リュドラに上陸してしまったために悲劇ははじまった。定期船の停泊している軌道ステーションへ向かうシャトルの船長が、空を指差し、出航を拒絶したのだ。「今日はくらげが出ている」空に浮かぶリュドラレンズクラゲが透明な体のレンズ効果を利用してシャトルを撃ち落とすという。だが、ぐすぐずしていると、定期船に乗り遅れ、結婚式はふいに…。表題作をはじめ、6短篇を収録。
マンハッタンのエアロビクス・スタジオが覆面をした男たちに襲われ、従業員が殺害された。一見平凡な強盗事件と思えたが、殺人課のロスとエルナンデスは、死体に空手による打撃の跡を発見する。続いて起こった三つの殺人事件の犠牲者からも空手の痕跡が見つかった。実は事件の背後には、日本人ビジネスマン待島が率いる浪人集団の存在があったのだ。だが忠臣たちは待島の手を放れ、暴走をはじめようとしていた。ロスとエルナンデスに彼らを止める術はあるのか?アメリカ探偵作家クラブ最優秀ペイパーバック賞候補の異色ポリス・アクション。
どこにでもある平和で静かな田舎町に、“それ”はある日突然やって来た。列車の脱線事故、ピクニック場での惨事、狂気にとらわれたとしか思えぬ意味不明の自殺、そして町のそこかしこで起こる不可解な事故死の数々…。町の新聞記者ジョン・ハモンドは事件解明にのりだした。謎を解く鍵は、ハモンドの幻影に執拗に現われる行進する足音と歌声。彼は事件の背後に超常的なものを感じとり、心霊能力者に助けを求めるが…。英国のS・キングと称される新鋭の話題作。
アメリカ大統領とアラブ産油国の国王らを乗せた専用バスが金門橋上で強奪された。知能犯ブランソン率いる犯人グループは、橋の交通を遮断し、爆薬を設置する。彼らの目的は5億ドルの身代金。要求が受けいれられぬ場合には、橋を爆破するという。現場に駆けつけた政府首脳らもブランソンの完璧な計画に、なすすべもない。だが、さしもの知能犯も、大統領一行の中にFBIのリブソンが潜んでいるとは知るよしもなかったー。かくて史上空前の大犯罪をめぐり、熾烈な頭脳戦が開始される!風光明媚なカリフォルニアに展開する大型冒険アクション。
1942年秋、ヒトラーは休戦協定を破り、ヴィシー政権下のフランスへ侵攻する作戦を進めていた。ツーロン港に碇泊する大艦隊を奪い、連合軍の北アフリカ上陸に備えようというのだ。この動きを知った連合軍は、英国特殊作戦執行部の精鋭ジョナス・ロイターをツーロンに潜入させ、やがて彼に重大な使命を与えるー。ヒトラーの計画を伝えて艦隊を救え、それが不可能なら自沈へ導け!ジョナスは密かにフランス海軍への接触を開始する。だが、思わぬことから彼は、敵の手に捕えられてしまった。史実をもとに迫真の筆致で描く戦争冒険サスペンス。
トレースは今回も気乗りがしなかった。しかし、軌道に乗りかけたはずのレストラン経営で急に資金が必要になり、一転調査を引受けた。おなじみグルーチョの依頼は、飛行機事故の一件だった。7年も前に墜落事故で死亡した男の保険金請求が、なぜ今ごろになってなされたのか?遺体は見つかっていないので、男が生きている可能性もあるのだが…。トレースはコネティカット州ウェストポートに飛び、得意のマシンガン・ジョーク片手に聞き込み調査を始める。われらが絶好調コンビ、トレースとチコの爽快かつ鮮やかな活躍を100%楽しめる新作推理。
大リーグを引退したハーヴェイは食いぶちを稼ぐため、私立探偵になった。最初の依頼は学生時代の友人からだった。プロ・バスケットボール界のスター選手が空港で失踪した一件の調査ー日を置かず、今度は別のチームのやはりスター選手が同空港で姿を消した。麻薬がらみとも思えたが、二人の選手は友人でなく、共通項が何もなかった。彼らはどこに消え、背景には何があるのか。敵陣ふかく走りこむハーヴェイに、プロも顔まけのジャンプ・ショットは決められるのか?初打席本塁打を放った大形新人による本格スポーツ・ミステリ、待望の第2作。