1988年7月1日発売
43日間に及ぶ北極海での調査行を終え、わたしはスコットランドの潜水艦基地に帰還した。情報機関を退き、ロンドンの軍事研究本部に勤務する身には、これも日常の仕事の一つにすぎない。だが昔借りていたフラットに、わたしを装う人物の影が現われ、陰謀好きの右翼政治家が事故に遭うなど、周囲で奇怪な事件が頻発。元上司のドーリッシュやKGBのシュトーク大佐も姿を見せ、背後に謀略の存在を仄めかす。否応なく昔の仕事に引き込まれ、再び厳寒の北極海へ赴くわたしを待ちうけるものは?巨匠が過去を断ち切れぬスパイの姿を哀感をこめて描く。
ヒースロー空港の上空で、着陸態勢に入った英国航空の旅客機が、過激派に乗っ取られた。同機は無事着陸したが、やがて犯人側から過酷な要求が突きつけられるー獄中にいる仲間のナスードを引き渡せ、さもなくば乗客もろとも機を爆破する!ハイジャック対策本部長のラティマーは、空港の警備を固める一方で、やむなくナスードを連れ出す命令を下した。だが連行する途中、思わぬ事故が発生、ナスードは逃亡してしまった。窮地に立たされたラティマーの打つ手は?ハイジャック機をめぐる熾烈な攻防を描くサスペンス長編。文庫オリジナル。
「侵攻部隊を満載したソ連機の大編隊がサウジアラビアに向けて飛行中ー同地到着まであと二時間!」急報を受けたスタイナー米大統領は、ペルシャ湾に展開中の海軍機同部隊に阻止を指令。空母からF18戦闘機が発進する一方、ヘミングウェー中佐のハリアー攻撃機隊に支援された海兵隊がサウジに進駐する。だが、米国の介入をめぐってサウジ王家内で内紛が発生、ヘミングウェーは思わぬ危機に!はたしてソ連の野望をくい止めることはできるのか?最新の軍事テクノロジーと中東情勢を基に、明日にも現実となりうる戦慄のシナリオを描く話題作。
夜着の上から毛皮をまとっただけ、おまけに右眼のまわりに痣をつくった金髪の美女ーメイスンの事務所には風変わりな依頼人が多いが、これはまたとびきりの変わり種だ。その美女ダイアナは、住み込みで働いていた大富豪バーツラーの邸宅で窃盗の濡れ衣を着せられ、怒りのあまり飛び出してきたと言う。さっそくバーツラー邸に乗り込んだメイスンは見事にダイアナの汚名を晴らしたが、事態に二転三転、ついには殺人事件の渦中に巻き込まれる…かつてない窮地に立った名弁護士の苦闘!シリーズ中でも群を抜いて劇的な展開を見せる代表的傑作。
英国情報部改革に関する重要報告書の提出を前にして、元情報部長官が謎の失踪を遂げた。彼の報告書が提出されなければ西側の情報網に重大な支障をきたす。事件はソ連側による誘拐か?事態を憂慮した米国情報部は、工作員ベルマンを急遽英国に送りこんだ。捜索を開始した彼は、元長官が失踪したサセックスで奇怪な連続殺人が発生していることを知った。二つの事件の間には何か関連があるのか…錯綜する謎を追うベルマンの前にやがて驚くべき陰謀が浮び上がった!鬼才デアンドリアが『クロノス計画』に続いて放つ異色エスピオナージュ大作。
夜のニュースが、産科医の撲殺事件を報じていた。女医ロティのところの代診の医師だった。通りすがりの犯行でなければ、この前救急病院で死亡した妊婦の夫がギャングを雇ってうらみを晴らそうとしたのかもしれなかった。わたしはその線を洗おうとするが、そんなとき今度はロティの診療所が中絶に反対するデモ隊に襲われた。しかも、デモ隊の指導者についた弁護士はあろうことかわたしの前夫だったのだ…。錯綜する事件の向こうに何が待ちうけているのか?シカゴの女探偵V・I・ウォーショースキーの苦くハードな闘いを描くシリーズ最新作。
2057年、人類はついに低温核融合の動力炉、ミューオン駆動による宇宙船の実用化に成功した。以前には不可能だった探査旅行も、この新開発のミューオン駆動宇宙船ならば実現できる。今こそ人類は新たなる冒険に旅立てるのだ。巨匠クラークが、読者の熱烈な要望に応え、代表作『2001年宇宙の旅』、世界的な大ベストセラー『2010年宇宙の旅』に続いて、奔放な想像力と正確な科学知識を駆使して描き上げた待望の最新長篇。
拳銃自殺を図って失敗したマデリンは、偶然に殺してしまった若い娘の身代りとなって生きることを決意し、娘の過去をさぐっていく…。サスペンス派の巨匠ウールリッチが1968年に他界したとき、四本の未完原稿が発見された。そのうちの一つが本書で、このいかにもウールリッチらしい憎悪と情熱、愛と復讐の物語を、現代ミステリの人気作家ローレンス・ブロックが失われていた冒頭と結末部分を補って完成させ、ついに1987年に出版の運びとなり、話題をよんだ。傑作の呼び声高い幻の遺作長篇の登場である。
アルコール依存症患者のこの世のものならぬやさしさ、清らかさ。純粋な心ゆえに傷つき、苦しむ者がたどる克服へのみち。“社会の病”を魂のドラマにえがく問題の作品。他に、著者のふるさと中国東北部(満州)によせる『承徳の切り絵』『梅花鹿』を収める。
凶器も遺留品も指紋、足跡などどれひとつ一致するものがない女子高校生連続殺人事件が頻発していた。被害者は、もったいないことに全員が美少女。向陽学園の高校1年生・朝生萌は、今日も殺人的な満員電車で痴漢の猛烈アタックに戦死寸前、「もう指なんか折れちゃえ!」。そう念じた瞬間、両手全指が360度回転的骨折の中年の男の絶叫があった。一体、どうなっちゃったの!?永井泰宇の初オリジナル、超常暴風美少女シリーズ開始。
いきなり後ろから袖をひっぱられ、脂粉の匂いを漂わせた、ちょっといい女に「市助さん、お前の女房のお春ですよ」と人違いされた八丁堀同心・若月雨太郎。雨太郎は途方にくれつつも山城屋という茶問屋の市助になりすます。“市助”が戻ってきた祝いの夜も更けて、いよいよお春と水入らずになったことから事件が勃発する…(「忘れた昔」)。下町の風物と人情を背景に繰り広げる、ゆっくり雨太郎シリーズ完結篇。
犬が木に登る?何気ない子供の話に、ぼくは興味を覚えた。先日、崖から転落死した少年が飼っていた犬が登ったという楠は、ぼくがかつて思いを寄せていた真知子の家の側にある。ぼくは以前、彼女の兄が犯した殺人事件を目撃し、それ以来彼女とは疎遠になっていたのだ。木に登る犬のことで久しぶりに会った彼女は、何かを隠しているようで…。推理作家協会短篇賞を受賞した表題作ほか9篇を収録。
俺は三十一歳、独身。背中に神経を配って、今まで生きのびてきた殺し屋だ。暴力団・安東組との抗争から、俺は高利貸の金森に雇われ、その事務所にむかう俺の車を二人組の乗ったトラックが猛スピードで狙ってきた。安東組に違いない。俺がやってくることを奴らに知らせた裏切者は誰だ!-「独り狼」他、組織暴力が蠢く暗黒の世界をたったひとりで生きる孤独な男たちを描く秀作8篇を収録。
人間界と魔界との休戦条約締結が、明日に迫ってきた。調印のため来日した魔道士J・マイヤートを護衛する“闇ガード”滝蓮三郎、妖艶な美女麻紀絵。だが、条約締結を阻もうと魔界の過激派が次々に“妖獣”を放ってきた。夜の東京を舞台に、闇ガードと妖獣の凄絶でエロティックな死闘が始まった…。滝と麻紀絵を待ち受けていた意外な使命とは何か?
戦災で失われた幻の縄文粘土板とそれに記された未解読文字に憑かれた若き考古学者・三村知之は、ゴールドヴァーグ研究所の副所長・ウースラとともに調査に向った折、大地震と大吹雪に見舞われた。そして、続く異常気象によって地球は氷床に覆われ、東京は飢餓と暴動の渦中にあった。三村が入手した〈ミノタウロス符号〉とは?人類の始原に迫る神話SF巨篇第一弾。
ジャズ・ピアニスト橘章次郎のもとに突然、米国の大実業家からジャズ・フェスティバルへの出演依頼状が届いた。その夜、六本木での演奏を終えた帰り、橘は美女に酒を誘われたが、待っていたのは屈強な男たちだった。美女も男たちも、密命をおびた内閣調査室のエージェントだったのだ。彼らの狙いは何か?橘を招いた米人大実業家の真意は?長篇アクション。