1988年8月発売
1942年・夏、ひときわ熱く燃えた季節。ナチの軍靴の響きとともに訪れた、短くも激しい恋…。レジスタンスに身を捧げるジェロームと、少年の心をもつシャルル。2人の間で揺れ動き、過去におびえる女、アリス。出会いから7日目、ついに選択の時が来た-。恋愛小説の名手・サガンが奏でる、哀しい愛の三重奏。
『マクベス』の上演には必ず災厄がふりかかる-パリスもその言い伝えは知っていた。しかし彼自身が死体の発見者となり、殺人の容疑をかけられることになろうとは…売れない俳優パリスにひさびさに舞い込んだ仕事は、地方劇場で上演される『マクベス』の端役だった。共演者は皆、一癖ある俳優ばかり-思わぬ殺人事件に巻き込まれたパリスの悲喜劇を、才人ブレットが達者な語り口で描いた人気シリーズ最新作!
太陽系帝国財務相、ホーマー・G・アダムスは生きていた。島の王たちの作りだしたデュプロ、複製といつのまにかすりかえられ、誘拐されたアダムスーかれは五人の太陽系帝国要人とともにアンモニア大気に覆われた惑星グラハトに幽閉されていたのだ。厳重な監視下にありながら、ひそかに脱走計画をねりはじめた六人の前に、意想外の人物が現われた。もう一人のアダムスが姿を見せたのだ。少なくともどちらかが島の王が送りこんできたスパイのデュプロにちがいない。だが、偽者はアダムスだけなのか…。六人それぞれが疑心を抱きつつ、ついに計画は実行された。
恋しいエルミザードの消息を求めて、エレコーゼは黒い船に乗り、新たな次元ー〈輪の界〉へと出発した。そこで〈混沌〉勢力を粉砕すれば、エルミザードのいる次元へ帰れるかもしれないと信じて。〈輪の界〉の沼地を進むエレコーゼは、ナチス・ドイツの非道を逃れ、この次元にやってきたゲルマン貴族フォン・ベックと知りあった。ふたりは大型蒸気船に乗りこんで〈輪の界〉の中心部をめざすが、その行手には地獄の公爵バラリザーフの罠が待ちかまふていたのだ。さまざまに転生を重ねながら〈混沌〉を戦う英雄エレコーゼの活躍を描く、待望のシリーズ第三弾。
太陽系最大の惑星ー木星。神秘に満ちたこの巨大惑星に、果たして生命は存在するのか?この問題の究明こそ、地球を遥かに離れ、木星軌道上をめぐる観測ステーションで暮らす人々にとって、最重要の課題だった。木星をとりまくメタンやアンモニアの大気の奥深くにまで、いくつもの探査機が投入された。だが生命はもちろん、その存在を暗示する証拠すら、なにひとつ発見されなかった。ついに地球の国際宇宙局は、経済的な理由からプロジェクトの中止を決定したが…。科学者作家ベンフォードが最新の科学知識をもとに迫力あるタッチで描きあげた『アレフの彼力』の姉妹篇!
馬にひかれた真紅のシボレーが大通りを走り、通貨は稀少な蒸溜酒、昼夜をとわず武装自転車暴走族が略奪のかぎりをつくす奇妙な世界…だがこれこそ核戦争後の廃墟から甦ったロサンゼルスの姿だった!しかも、妖しげな“儀式”を行なって信者をふやす淫祠邪教が不気味に勢力を拡大している。ミュージシャンのリーヴァスは、かつての恋人がこの教団に囚われたと知り、その奪還を決意した。だが、総本山《奇人宮》への単身潜入した彼を待っていたのは、想像をはるかに超えた異様な光景だった!米SF界に新風を吹きこんだ期待の俊英が暗黒の近未来を描くディック記念賞受賞作。
湖の貴婦人と魔術師マーリンの奸許により、ドルイド教の聖なる儀式の名において近親相姦を犯してしまったモーゲンとアーサー。あまつさえ、モーゲンはアーサーの子を身篭る始末。今やブリテンの宗主となったアーサーは、これを知って恐れ恥じ入り、モーゲンを遠ざけたあげく美姫グウェンフウィファルを娶った。が、皮肉なことに彼女は、アーサーの側近ランスロットにかなわぬ想いを寄せていた。アーサー王宮廷内の愛と嫉妬と陰謀に彩られた三角関係をよそに、外ではブリテンの命運をかけたサクソン人との決戦の時が着々と迫りつつあった…。
民間人初の宇宙飛行士、ウェイトレスのサンディーと探偵のデュークを乗せてスペース・ローリーは飛び立った。直後に地球は核戦争で壊滅。孤立無援の船はやむなく地上に降りた。しかし、地上に破壊のあとはなく、原始の自然が広がるのみ。しかも口のきけない村人達はサンディーを神とあがめるのだった。-故郷の石塔の中で女神サンディーヌがタリオンに語った不思議な物語。それは女神自らの運命をも巻き込んだ妖魔と人間の遥かな戦いの歴史だった。そして神々の血を受けついだタリオンの使命とは?いま新たなる戦いがタリオンを待ち受ける。
第二次世界大戦後、陸軍より独立し、一人歩きをはじめたアメリカ空軍。そこに六人の男たちが入隊した。ある者はパイロットとして、またある者は整備兵として、新生空軍の伝統を築きはじめる。その彼らが直面した第一の試練は、極寒の朝鮮戦争だった!数々の飛行シーンをまじえて、巨大組織アメリカ空軍に生きる人々の姿を描き、全米でベストセラーになった話題の大河航空ロマン。
朝鮮で初めて実戦を経験したケリイたちは、東西冷戦の中で空軍の中核に成長していく。空軍の過酷な生活は家族にも多大の犠牲を強いるが、妻たちは気丈に耐え、それぞれの生き方を模索する。だが東南アジアの小国ヴェトナムで発生した戦火が、彼らを飲みこみ、いま燃え盛ろうとしていた!ワイルド・ブルーー征服されざる蒼空に挑んだ男たちと、その家族を描く雄渾のサーガ。
ヴェトナム戦争は大きな試練だった。B52爆撃機隊を率いるワシントンは、優秀な北ヴェトナムの防空網に苦戦を強いられ、強引な攻撃方法を主張するデュークと衝突。一方、ケリイやガーヴィーたちも、ファントム戦闘機を駆って過酷な任務を続けていた。上層部の無理解のために、優秀な男たちが泥沼の戦場でつぎつぎと倒れていく。だが彼らは飛びつづけるー空がある限り!翼を愛した男たちと、彼らを愛した女たちが織りなす感動のドラマ。第二次世界第戦後から1970年代に至る空軍の歴史を通じ、アメリカ社会の変遷をも浮き彫りにする航空巨篇。
突然それは襲ってきた。海水浴中の教師チャイルズは、一瞬のうちに血の臭いに包まれ、恐ろしい光景を目にした。それが発端だった。その日から、予期せぬ時に幻影が見えるようになったのだ。それも、吐き気をもよおすような連続殺人の現場ばかりだ。まるで犯人と同化し、犯人の目を通して見ているように…。やがて狂気の殺人鬼は彼の存在を察知し、彼が勤める女子校に魔を手をのばしてきた。自ら望まぬ超能力を持った男の悲劇を描く、ベストセラー作家の代表作。
イギリスへ向うフェリーの船室で、劇作家アンソニー・ムーアは殺人事件を目撃した。驚いた彼は事務長に知らせに行くが、戻ってみると船室は空だった。数日後、二つの死体がイギリス南部で発見された。警察の依頼でムーアが確認したところ、それは件の殺人事件の加害者と被害者だった。内務省に所属する二人の男の話では、事件に莫大な額の金が絡んでいるという。不可解な思いに捕われつつも、ムーアは仕事でカナダへ赴く。だがそこにも邪悪な黒い影が迫ってきた!トロント市街と雪の森林地帯に展開する死の計略。新鋭が放つ力作サスペンス。
十八歳の誕生日を迎えて、フィリッパは実の両親を捜しはじめた。だが彼女が探りあてたのは、父は少女暴行罪で服役中に獄死、母はその少女を殺害した罪で今も服役中という恐ろしい事実だった。母メアリの出所が間近であることを知ったフィリッパは、養父母の反対を振り切って、出所後の母と一緒に暮らすことにした。だがフィリッパだけがメアリの出所を待っていたのではなかった。娘を殺された父親も、復讐のために、殺人者の出所を待ちかまえていたのだった…。人の犯した罪とは何か、親子の絆とは何かを問う、ミステリの新女王の戦慄の問題作。
暗黒街を牛耳る麻薬王ブルヌッチを監獄にぶち込む絶好のチャンスだった。彼の依頼を受けていた殺し屋が証人となることを承知したのだ。だが公判当日、法廷へ向かう証人は、何者かの手によって狙撃されてしまったー。目前で証人を殺された辣腕の黒人警部ラツトは、怒りの炎を燃え上がらせた。こうなったら手段は選ばない、何がなんでもブルヌッチを叩きつぶす!その夜、スーパードームのロック・コンサートに出かせたラットはそこで意外な人物に出会うが…黒人警部のパワフルな捜査を描き、ニューオーリンズの暗部を抉り出すシリーズ第二弾。
キューバによる宣戦布告なき対アメリカ戦争、白い十字軍(クルサーダ・ブランカ)作戦とは?失踪した夫を求める人妻を助けるうち、またも邪悪な陰謀に巻き込まれた隆治、柊子、ミゲル。奥アマゾンに浮かぶ巨大基地を舞台に、怒りと哀しみが交錯する…。最新書下し長篇!
推理作家の朝見は、自作の映画化に立合うため、ロケ現場の法隆寺を訪れた。女優・薬丸淳子は熱のこもった演技で短剣を胸に突きたてた。ところが小道具の短剣は本物で危うく命を落としかける。薬丸と朝見は犯人を追及するうち恋に堕ちるが、その眼前で次々と奇怪な殺人が…。しかもその殺人は朝見の作品そのままに、なおかつ作品を上回るトリックと謎を秘めていた!奈良-和歌山-東京を結ぶ殺意の延長線上に浮かんだアイドル歌手・岡村有香の飛び降り自殺。殺人者の死を賭した挑戦とトリックの暗示するものとは…。