1988年発売
文学のみならず、20世紀の社会思想に広範かつ決定的な影響を与えたカフカの傑作短篇を精選して収録。カフカ文学の一大転換点ともなった記念碑的作品「判決」をはじめ、長篇「アメリカ」の序章ともいうべき「火夫」、アフォリズム的断章を積み重ねた「彼」など21篇を、長谷川四郎の名訳でおくる。
土から離れ、切り割りされた都会の空間で“生”を営む現代の姿を、ワンショットで捉えた断片を積み重ねるという斬新な手法で描いた表題作に、生の飢餓感を満たそうと彷徨う“性”の実相を見事に浮彫りにした中篇「裸」を収録。
35万両の大金と共に忽然と江戸から消えた長崎平戸屋仁右衛門…。その父の復讐を誓い策を弄する娘・お美津。何かを探ろうと苦心する娘曲芸師小狐太夫と、阿保八と名乗るのんびり浪人の2人旅は…。欲に憑かれた者たちが江戸から安房へそしてまた江戸へ。波瀾の人間葛藤を描く大長編!
淑恵夫人にとって、他人の目に晒すことは最高の悦楽だった。藤巻が背後からいきり立つものを夫人の秘唇の溶けきったあわいにあてがうと、夫人は腰をまわすように蠢かせて、美和子に叫んだ。「いいわぁ、見て、見てぇ」赤坂でブライダルセンターを営む藤巻は、実は不倫請負人でもあって、自らも、白い獣となって悶え狂う女たちの快楽の相手を努めていた。ハードなラブプレイで迫る官能サスペンス長編。
現代のキリストたる破門神学生アヴジイ・カリストラートフの麻薬採集秘密組織潜入、広大なカザフの原野に展開する狂気のような野獣狩り、追われる母狼アクバラの子を思う哀切な咆哮!いま辺境の文学が世界の読書界を席捲しつつある!停滞し腐蝕するソ連社会に挑む雄渾な文学!
ふりかかる火の粉、いや火の弾は自分で払う!それが竜堂家の超能力四兄弟のやり方だ。「創竜伝」第1作で得たスーパー人気はダテしゃない。四兄弟を手に入れようとする権力者も後をたたず、東京の新名所で兄弟の怒りが爆発する。圧倒的迫力でノベルス界を疾走する痛快爽快壮絶シリーズ、お待たせの第2弾。
トッドは明るい性格の頭の良い高校生だった。ある日、古い印刷物で見たことのあるナチ戦犯の顔を街で見つけた。昔話を聞くため老人に近づいたトッドの人生は、それから大きく狂い…。不気味な2人の交遊を描く「ゴールデンボーイ」。30年かかってついに脱獄に成功した男の話「刑務所のリタ・ヘイワース」の2編を収録する。キング中毒の方、及びその志願者たちに贈る、推薦の1冊。
戦後の崩壊感のなかでの、主人公の母の死、父や妻との葛藤、先輩の妻との情事やその発覚後の抜き差しならぬ展開…捉えどころなく移ろう日常にひそむ「おそれ」と、人間のエゴイズムの深部を乾いた筆致で描き出した「幕が下りてから」「月は東に」の二つの長編を収録。なお「月は東に」には今回大幅な加筆が行なわれた。
明の建文永楽の交、中国を二分して相争ったこの二帝のたどる数奇の運命を軸に、群臣諸将の盛衰を描く一代の雄篇「運命」。一片の盃に人生の来し方を映し出す佳品「太郎坊」。露伴の人間観照を直載に示す諸作を収録。
こわいおばさんに夕里子はナイフをつきつけられ、陰気なおっさんは珠美を誘拐。長女・綾子は不治の病いの宣告を受けたと信じこみ、記憶喪失の少女は父親が海外!出張中の佐々本家に転がりこむ。名門吉沢家で起きた殺人事件は、容赦なく三姉妹を謎の大渦に巻きこむが、死を覚悟した綾子の大変身が見ものです。
伝説の戦士矢沢高雄が魔女マダム・マヌーの兵士として戦場に復活し、世界各地で大量殺戮を繰り返す。一方、マヌーの軍隊との戦闘で、ゆりは盟友ハマー・オースティンを失う。そして、矢沢がゆりの戦友達を全滅させたとき、ゆりは風祭凱との愛を選んだ。さらに激化していく闘いは遂に矢沢とゆりの対決へ…。
歌麿にアリバイがない!写楽が活躍した11ヵ月間、歌麿はどこで何をしていたのか?なぜ作品を発表しなかったのか?やはり歌麿が写楽だったのか…。世界一の美人画絵師をめぐる現代の罠と、歴史の謎に挑む塔馬双太郎の冴えわたる頭脳。大きな仕掛けでまたも読者を唸らせる高橋ミステリーの最高傑作。
主人公は理々子と元気。だけど前代未聞の珍刑事・西条香織の登場で事件は前代未聞の方向へ。見当はずれの独自捜査、狂いっぱなしのヒラメキ推理で、事件は迷宮へまっしぐら!最終ページまでに殺人事件は解決できるのか?大型♀推理作家誕生。毎ページ笑える爆笑ミステリー衝撃作。
8年前、スイスの国境近い町で自動車事故にあった夫。車を運転していたのは日本人女性だった。その死に納得がいかないまま暮しに追われてきた祥子の胸に、男との逢瀬が安らぎと希望を満たしていく。表題作のほか「白萩」「変身」「隠れ谷」「双生」等を収録。揺れ動く女の心の襞を細やかに描き上げた名作集。
運命的な愛の輝き、男の真心と行動の美学を描く処女長編。敗戦後の横浜を舞台に、放蕩とスタッド・ポーカーの勝負に明け暮れた無頼の青春。神戸に移り、脱走米軍将校と組んで始めた酒場での日々。謎を秘めた中国美女・李蘭との出会いに至る異色の恋愛小説。全女性に捧げる恋文として書かれたデビュー作。
男ゆえの傷をかくして港町神戸をキザに生きる名倉。その彼を敬愛しながらも、やがては追い越そうと狙う若者。そして誘蛾灯のような名倉の魅力にひかれて寄ってくる女たち…。名倉をめぐる人物の相関図が次第に暴いてゆく彼の謎の過去とは何なのか?美しい神戸を舞台に、人生を踊る男女を洗練された手法で描くロマン。