1988年発売
大久保長安の遺した不思議な連判状は何を意味するのか。やはり大坂は討たねばならないのか。しかし家康の願いは豊臣家存続にある。そのためには戦の回避と大坂開城が必要絶対条件だった。家康と片桐且元の和平交渉が始まる。家康は方広寺の鐘銘事件に名をかりて、淀君、秀頼母子に、大坂城無血明け渡しの謎をかけた。だが…。
大坂冬の陣!籠城を決定した大坂方は河内出口村の堤を破壊し、枚方付近の道を閉ざした。しかし家康は容易に二条城を動かず、東海道を大軍で西上する秀忠にも「急ぐな」との命を発する。はたして家康は、胸中に何を秘めているのか?紆余曲折ののち和議成立。が、それも束の間、時の勢いは夏の陣へ…。
大坂夏の陣!濠を埋められ、篭城できなくなった大坂方は城外に打って出た。名ある猛将も相次いで倒れ、太閤以来の名城も紅蓮の焔に包まれる。そして、家康の最後の悲願淀君・秀頼母子の救出も水泡に帰した。やんぬるかな、秀頼母子ご自害!こうして豊臣家は地上から永遠に消え去った。
豊臣家減亡後の家康に残された仕事は幕府永続の礎石固め、すなわち確乎とした泰平の世づくりであった。「人間はみな永遠に続く大樹の枝葉なのだ」という万民の愛と安らぎをめざす世を!その理想を果たし、巨樹はついに波乱にみちた75年の生涯を終える。時代を超えて生きる壮大なロマン完結編。
金色の虹を描いて、白い月光の中を跳ぶ「黄金豹」。宝石を喰い、札束をかすめ、幻のごとく消えてしまう魔豹に、人々は慄然とする。園田家に収蔵された、豹の美術品の数々。「八方にらみの豹」と名付けられた一枚の日本画より抜け出した魔豹は、黒メノウと青ダイヤを嵌めこんだ金の豹を狙って、闇の中をしのびよって来る。
友人の死に導かれ夜明けの穴にうずくまる僕。地獄を所有し、安保闘争で傷ついた鷹四。障害児を出産した菜採子。苦渋に満たち登場人物たちが、四国の谷間の村をさして軽快に出発した。万延元年の村の一揆をなぞるように、神話の森に暴動が起る。幕末から現代につなぐ民衆の心をみごとに形象化し、戦後世代の切実な体験と希求を結実させた画期的長編。谷崎賞受賞。
ジゼル(エリー)・サイモンズはロンドンに住む27歳のインテリアデザイナー。頭の回転も早くユーモアのセンスもある彼女の最大の悩みは太っていること。そんな彼女にある日、大金持のマーリンおじから親戚の集まりを知らせる連絡が入り、彼女もエスコートサービスから紹介された作家志望の青年ベンをにわか恋人に仕立て、おじのもとを訪れる。そして数週間後、マーリンおじが亡くなり、再び集まった親戚一同の前でおじの遺言が発表される。その内容は意外にも、エリーとベンに莫大な財産を残すというものだった。ただしそれには、マーリン屋敷に6カ月間住み、その間にエリーは体重を30kg減らし、ベンはまともな本を1冊書き上げ、さらに2人で“秘密の宝物”を探すことーという4つの条件を達成しなければならない。他の親戚たちの羨望と嫉妬の視線のなかで、意を決して苛酷なダイエットに挑みはじめたエリー。その翌日から彼女のまわりで次々と奇怪な出来事が…。
コンピュータ・ソフトウェア会社の野心家のSE・桂木勲は、ある日の午後、若いOLと情事を愉しんでいた。ところが、その同じ時間に出向先の銀行で、まったく予期せぬ出来事が起こり、桂木はピンチにおちいる。はじめて味わう挫折感。やがて、新しい出向先に移った桂木は、今度は自己の存在理由が根底からゆさぶられるような、衝撃的な事件に遭遇する。その事件とは?ビジネスマンの生き方の問題を、恋愛とえん罪をからめて鮮烈に描く感動の長編推理。
「ひょっとして、透とは親がちがうのでは?」真帆は弟の透より一つ上の中3。美形の透はおしゃれでモテる。それに比べて、真帆は平凡で美的センスに欠ける。親がちがうという考えは、疑問から確信へと変わっていく。ある日、透の所へ、真帆と同学年の達也が訪ねてきた。真帆の心はドキッとなった。サッカー部のキャプテンの達也に憧れる女の子は多い。真帆の親友の尚美も、その一人だった。
春休みの第1日目。クセっ毛が悩みのあたしは、こっそりストレートパーマをかけに行くはずだった。ところが、ひょんなことから、笑い上戸の男の子と出会った。そして、あたしはひと目ボレ、ついに初恋。だけど、2度目に会った彼は冷ややかで虚無的、まるで別人みたい。しかも彼の耳には真っ赤なルビーのピアスが…。いったい彼に何があったの、すてきな彼の笑顔はどこにいっちゃったの?
ブルーな工場での1日、京介が落とした財布を届けてくれたポニーテールの女の子ーそれが海だった。織田川海、19歳、三つ子の兄弟・空、大地たちとロックバンド「ポルカドッツ」をつくって、ライヴハウスで活躍している。実家は大きな造り酒屋で、親に決められた生活を嫌い、上京してきたのだ。京介は、さっそく海に交際を申しこむ。だが、ポルカドッツのプロデビューが決定し…。