1988年発売
ロックが少年の脇で急停止した車に気づいたときは手遅れだった。彼はもう一台の車から飛び出して襲ってきた3人の男を倒すのがやっとだった。その隙に、少年を押しこんだ車は彼の眼の前を走り去った-。かつてSAS将校として勇名を馳せたジョン・ロックは、トロントに住む一匹狼のボディガード。彼の今回の仕事は富豪の一人息子ハービーの警護だった。ハービーは高校をドロップアウトした問題児だが、以前は絵を描くことが好きな心優しい少年だった。家族は優れた芸術作品に触れさせることで昔の情熱を取りもどさせようと、護衛をつけて彼をイタリア旅行に出すことにした。が、到着早々ハービーは何者かに誘拐されてしまったのだ。-プロの意地をかけて少年を奪回せんと反撃に出たロックだが、そこには犯罪組織の絡む罠が…。
時の罠ヴァリオがあるアンドロメダ星雲に到達するのにどうしても必要な新型超光速機関カルプ。それを《クレスト3》に届けるべく《ディノ3》は過去へ旅立った。だがようやく五万年前の過去界に潜入したものの、すでに《クレスト3》のローダン一行はレムール艦隊の追跡をかわそうと5百年だけ時間移行していた。そこで《ディノ3》が試みた命がけの賭けとは?
惑星フェンリルのキチン虫からしか産出されない長寿薬ーその莫大な利益をめぐって、原住種族フェインと同盟する第1次植民者と海岸ぞいに居住する第2次植民者とのあいだでは、激しい抗争が繰り返されていた。だが、地球の太陽系世界政府の本格的な介入で、すべての状況は一変した。新たに赴任してきた航宙軍提督シジミア・エンコフは、長寿薬の全権益を世界政府が掌握すると告げたのだ。航宙軍の圧倒的な軍事力を眼前にして、フェンリルの全住民がその提案を受諾するか否かの決断を迫られる。期待の新鋭が魅力的な異星世界を舞台にパワフルな筆致で描く一大戦争SF。
横暴をきわめる太陽系世界政府のやりかたに、フェインと第1次植民者たる高地族の怒りが、ついに爆発した!航宙軍との前面戦争の火蓋が切って落とされたのだ。高度な科学技術を駆使する航宙軍を相手に、勇猛果敢なフェインを軸にして、高地族は捨て身のゲリラ戦法で挑む。だが、奇怪な機甲服を身にまとう航宙尖兵隊には、フェインの攻撃も歯がたたなかった。あまつさえ、ビュート族の族長の娘アーマーダも、航宙軍の手に落ちた。全高地族の指導者、ファンダン族の族長マザー・フェアは、無謀ともみえる作戦を命じる。とうとう、惑星フェンリルの命運はつきはてたのか?
あたしたちケイとユリは、銀河系のはじの鉱業惑星チャクラへ送り込まれた。鉱山技師の一人が未知の獣に襲われたからだ。襲われたといっても、全治三日のけが。どうして、WWWA(世界福祉事業協会)随一のトラコンであるあたしたちが行かなきゃならないの?と思ったのだがー。鉱山のオーナーに市長、宗教集団の長=マスターの三人のリーダーの思惑が交錯するチャクラで、ハンサムなシェリフとともに真相究明に乗り出したあたしたち二人の前に、意外な事実が現われた。大人気ダーティペアの活躍を描く、ベストセラー・シリーズ第2弾!
冥王星ドーム基地へ、半年に1度、故郷からの郵便物を運んでくる郵送艇。だが衛星ケルベルスが引き起こす嵐のため、ドーム脇に着陸した郵送艇は大破した。命がけで郵便物を守った男は…。「ケルベルスの嵐」、小惑星帯の鉱脈でひと山あてようと、違法採掘を始めた宇宙兵くずれと、僻外星界を布教活動している伝道者に偽装した宇宙警察の女刑事との軽妙なやりとりを描く「天女と羽衣」など、太陽系第3惑星地球を飛びたち、兵士として、またはやむなき事情により小惑星以遠の外惑星へ流れついた男女の哀歓を絶妙な筆致で描きあげた連作短篇集。
自らの出生の謎を解き明かすべく、タリオンは故郷の村を目ざす。氷雪に閉ざされた酷寒の地。自然の猛威に加え兇悪な三兄弟の率いるならず者の軍隊が行く手を阻むが…。一方、東方の蛮族の帝都侵攻を好機として、フォルタらは帝国への反乱の狼煙を上げた。帝国打倒の呼びかけに諸国の人々は立ち上がるのか?また、タリオンを育んだ小人族の島に迎えられたレヴィ王女のその後は?さらにミシュリーヌ殺害がもたらしたフリオ侯爵と狂気の剣士バランの確執のゆくえは?いま大陸全土を戦雲が覆いゆく。
レジャーセンターの建設現場で古代の遺跡が発掘された。地下に封じられていた小部屋にはおびただしい骸骨が…。それが恐怖の幕開きだった。建設現場では原因不明の事故が続発して多くの作業員が命を落とし、町では両眼をえぐられた無惨な死体が次々に発見される。美人考古学者キムとウォレス警部の二人が一連の事件の指し示すものに気づいた時、想像を絶する結末は間近に迫っていた。強烈な残酷描写を過剰なまでに盛り込み、パワフルな筆力で描く、鬼才の会心作。
ウォール街の法律事務所〈チェイス・アンド・ウォード〉のあわただしいランチタイム。同僚たちが見守る中、次期所長と目されていたドナヴァンが、もがき苦しみながら息絶えた。毒殺だった。前所長ルービンはひそかに犯人捜しを始めたが、今や引退同然の身である彼には知らされない様々なトラブルを、事務所は抱えていた。所内の何者かが絡んだインサイダー取引、所長の座を狙う所員間のいさかい、同僚の妻との情事。ドナヴァン殺害の動機もそのあたりにあるように思えた…弁護士作家がシニカルかつ巧みに描くウォール街の生態と事件の顛末。
キナくさいとは思った。だが依頼人はすこぶるつきの美人、しかも同業者ときている。男として、あとへは退けない。依頼は、私の故郷にいるらしい娼婦殺しの犯人の捜査に力を貸してもらいたい、というものだった。私は依頼人の女探偵パメラとともに故郷を訪ねた。が、男の正体をつきとめても、パメラはなぜか無関心だった。不審に思って調べてみると、問題の犯人はとうに逮捕されていたのだった。となると、パメラの狙いは何なのか?現代のサム・スペードをめざす心優しき探偵ジョン・デンスンのオフ・ビートな活躍を描く話題のシリーズ第一弾。
ルポ・ライターの失踪、怪文書、東京都知事狙撃事件…。西新宿に探偵事務所を構える沢崎が立ち向かう難事件の背後には巨大な陰謀が隠され、鮮やかなラストシーンに向って物語はスピーディに展開してゆく。レイモンド・チャンドラーに心酔する、ジャズ・ピアニストの著者が2年の歳月をかけ完成させた渾身の処女長篇。いきのいい会話と緊密なプロットで贈る、期待の本格ハードボイルド登場。
マサチュセッツ州のど真ん中に小さな町ホイートンで、コカイン密売の調査報道をしていた新聞記者が射殺され、睾丸を切り取られるという事件が起こった。この無残な殺害事件の調査を依頼されてスペンサーは勇躍ホイートンへ向かう。そしてスペンサーの調査が進むにつれ、三人の女性が浮かび上がってくる。果して事件の真相をにぎるのは誰か?そうこうするうち新たな殺人事件が起こり、スペンサーの身にも危害がおよぶ。そこでスペンサーは恋人スーザンと盟友ホークに応援を求めるが…。何十億ドルという規模のドラッグ・ビジネスの世界に挑む私立探偵スペンサーの活躍を描く、人気シリーズ第14作。
帝和医大附属病院手術部の雨宮博子は、有能なナースとして高い評価を得ている。特に、第1外科部長で消化器外科の権威である苅谷教授は、野心家の博子にとってなくてはならぬ存在であった。その苅谷が、政界の長老の手術中、突然よろめき、メスを落とすというアクシデントが起きた。苅谷の健康に疑惑を抱く南雲助教授に反撥を感じながらも、博子は不吉な予感に襲われる。会心の長篇医学ロマン。
幕末の京。仁孝帝の没後にその皇女として生れた和の宮は、有栖川家の若宮・熾仁親王と婚約し、興入れの日を楽しみに待っていた。だが、公武合体を狙う岩倉具視らによって、この婚約は覆された。二人の宮は、幼少より和の宮に仕える夕秀の手引で駆落ちを図るが果たせず、和の宮は将軍家茂に嫁した。家茂の病没、十五代将軍慶喜による大政奉還の後、二人は江戸で再会を果たすのだが…。華麗なる長篇悲恋絵巻。
保険調査会社〈トリプルI〉に所属するウルフ・ラニハン。マンハッタンでは少しは知られたタフな調査員だ。おやじは元海兵隊中将のデヴィッドスン。得意先は保険会社。保険金が支払われる前に、キナ臭いところがないか調査するのがウルフの任務だ。女には弱く、バーボンにも目がない。ヤバイことだって平気でやってのける、ろくでなしウルフが手がけた13の事件を一挙掲載。本邦初訳。
世界放浪の果てに、日本に漂いもどった青年と、自らの青春を持て余した家出娘…。都会の雑踏のなかでの一瞬の出会い、同棲、出産。小さい生命がもたらした天と地の輝きのなかで、若い二人が抱きとめた、愛と性と死と大自然の讃歌。野間文芸新人賞を受賞した表題作の他に、九州南端の港町に住む少年の眼を通して著者の原風景を形象化した処女作「行者シン」を収めた、文芸賞作家の代表作。
行方不明になったイギリスの科学者ミッチェルの写真がスイスのグラビア雑誌に掲載された。だが写真のミッチェルは巧妙にメークをほどこして生きているように見せかけた死体であった。敵を欺く策略か?見破られるのを予期した挑発か?-太陽光線を瞬時にエネルギーに変換する発明をめぐって、イギリス情報部と第三国スパイとの虚々実々の駆け引きと暗闘。古典的スパイ小説の傑作。
昭和三年、『週刊朝日』の懸賞小説に入選、のちに物議をかもした『芦屋夫人』を始め、耽美派文学の真髄に迫る珠玉短篇集の復刻版。伏字部分は、すべて注釈つき。即日発禁処分となった幻の話題作、半世紀を経て、ここに完全収載。