1988年発売
一流企業大正重電の社員小木曽は、「白昼の囚人」にも等しいサラリーマン生活に焦りと不満を感じていた。そんなある日、タクシーの中で偶然拾った3200万の大金が、彼を現実からの離脱と野望へと駆りたてた。銀座の夜の世界で、愛人の夏子らと華やかな事業をおこした彼は、だが、色と欲にまみれた人間どものエゴと裏切りの前に、やがて…。長篇サスペンスロマン。
かつて、彼女の恋心も知らず、彼女を別の相手に譲ってしまった男ー律子にとって、それは二十年ぶりの彼との再会だった。初恋の想いを今に秘め、積年の身体の疼きを一夜にかけた人妻の、むせかえるようなセックスを描いた表題作のほか、結婚を決意した平凡なOLが、上司との恋の清算に、最後に燃えた「色づく初夏の風」など、女の肉体と情感を女流作家の鋭い感性で写した官能傑作集。
ロンドン郊外のお城で、偶然知りあったマイケルは、白馬にのったステキな王子さま。もう二度と逢えないと思ってたのに、突然あたしの学校に、留学生としてやってきた…。親友の朝子なんか、もう大騒ぎ。そして、あたしのハートも〓@76B6だけど、この留学生、チョット変。青白い顔で、極度の貧血症。血に対して異状な反応をする。そのうえ、柔道部のジローさんの首を、いきなり締めつけたり、真夜中行方不明になったかと思うと、あたしの首に…!あたしの中にひろがるギワク。でも、イイのだ。母性本能をくすぐる、かわいいあいつが、あたしの血で元気になるのなら…。でも、この恋の行方、どうなるのかしら…?
オスマン帝国支配下のブルガリア、時は17世紀後半、山深きエリンデニャ谷の羊飼いたちに襲いかかった苛酷な運命-。イスラム教徒への改宗を迫られた人びとは、キリスト教徒として死を選ぶのか…?民族の歴史と生活を鮮やかに活写!ディミトロフ文学賞に輝く、ブルガリアの長編傑作!
異形異類の狂い咲く世。豪快な政略軍略を駆使して旧い権威の一切を焼き払い、新しい秩序を目ざして突進する足利尊氏の執事高師直-。猪の生き血を吸って絶倫の精力で、我欲以外は念頭にない権門高家の美姫妻妾を片っ端から毒芽にかけ、遂には前の関白の姫に恋し華燭の典に乱入して-。「神を恐れず」「巨悪と巨善」と「鬼と人と」…乱世型天才児の不敵な生きざまを、歴史文学の奇才が、現代の視点で活写。
歴史の奔流の中で、紺碧のカリブ海に生きたネッド・ヨークの、愛と冒険の一大ロマン。議会派と国王派の対立は、1642年夏についに内乱に発展した。議会派の新国民軍は国王派の軍隊を破り、49年にはチャールズ一世が処刑され、クロムウェルが護国卿に就任する。イギリスは王国から共和国に変わった。清教徒革命である。激動は本国から大西洋をわたってきた。伯爵家の2男でバルバドス島の農園開拓に従事しているネッドに、議会派の迫害は日に日に高まっていく。島を棄て、バカニアとなったネッドは…。
通勤地獄を掻い潜りやっと出社すれば、次には職場のみんなの淫らな視線が無遠慮に注がれ…彼女たちの欲情を見透かすように、中年上司の猥語や指技がその肉体を翻弄すれば、疼きをはらんで堰を切ったように愛液を溢れさす…ピザやクレープ育ちの、奔放なオフィス・ギャルの赤裸々な生態を描く!
如何なれば膝ありてわれを接しやー。長崎での原爆被爆の切実な体験を、叫ばず歌わず、強く抑制された内奥の祈りとして語り、痛切な衝撃と深甚な感銘をもたらす林京子の代表的作品。群像新人賞・芥川賞受賞の『祭りの場』、「空缶」を冒頭に置く連作『ギヤマンビードロ』を併録。
壬申の乱を経て、藤原京へ、さらに平城京へとめまぐるしく都が遷る激動の時代は、また裏面で皇位をめぐって大変革が進行した歴史の重要な節目にあたる。その矢面に立たされた氷高皇女=元正女帝がすべてを政治にささげ、わが身を賭しても守り抜こうとしたものは何だったのか。悲劇の女帝を描く長篇歴史小説。
信じ切っていた友に裏切られ、人も世も神も呪う世捨て人となったサイラスの唯一の慰めは金だった。だがその金も盗まれて絶望の淵に沈んだ彼に再び生きることの希望を与えたのは、たまたま家に迷いこんできた幼児エピーの無心な姿だった。「大人のためのおとぎ話」として広く愛読されてきたエリオット(1819-80)の名作。
1945年以降1970年代までの韓国文学の傑作を精選した初の本格的選集。朝鮮戦争の体験による虚無主義の色濃い50年文学、四月革命の主体となった世代による60年代の社会参与文学、急激な経済成長の裏で疎外される農民・労働者をメインテーマとする70年代文学-骨太なユーモアに満ちた政治諷刺の作品から軽妙なタッチで小市民の暮らしを描く作品まで、本邦初訳6篇を含む19篇の傑作短篇を収録。
死体の消失と出現。夜歩く死者。浮遊する人魂。見えるわけのないものが写った写真。…想像を絶する怪事件が市之瀬徹の属するロックグループに続発した。死者が残した曲の暗号が解読され、奇怪な謎の数々が一挙に解明された時、この大胆な、コロンブスの卵にも比すべきトリックの仕掛人に絶大なる拍手を。
三人のいとこたちの連続殺人の謎を秘めた北の断崖の館は、朝から春の嵐に翻弄されていた。その日、財産目録作成のため四人の鑑定家が派遣されてくるはずだった。だが、現われたのは五人。“招かれざる客”は誰か?その目的は?やがて鳴り響く大時計の三点鐘とともに忍び寄る凶々しい殺意の影。人間心理の神秘を描くサイコ・ミステリー長編。
巨大コングロマリット総帥テオドア・チャーチャーの美術への異常な執着が、世界を絶滅の危機に陥れた。不気味なマンモスタンカーに積まれた、謎の積荷とは何か。そしてクレムリンが狙う恐るべき世界支配の陰謀とは?潜水艦が、戦闘機が、ヘリが死力を尽くして闘う。恋あり、涙あり、活劇あり、緊張と興奮が満載の傑作長編軍事スリラー。