1989年発売
夕里子の恋人・国友刑事がやむなく射殺した少年は、服役中の大物・永吉の一人息子だった。脱獄に成功した永吉、国友を仇と狙えば良いのに(!)、殺し屋をやとい、卑怯にも三姉妹の命を狙った。綾子はライフルで、珠美には毒、夕里子は永吉に誘拐され…。三者三様の絶体絶命だ。三姉妹探偵団、いまや風前の灯。
丘の上の高級マンションを眺めて暮らす老人の異様な行動の秘密とは?都心の地下街やデパートをさまよい歩くピエロの目的は?江戸川乱歩と奇妙な建物が写った古い写真は何を語る?-雪の夜、北の海に沿って走る湧網線で起こった不可解な惨劇が、四十年後に再現された時、一挙に立ち上がる驚愕の真相。
奇妙な招待状に誘われて『月蝕荘』を訪れた法月警視を待ちうけていた不可能犯罪。-美貌の招待主・真棹が、客の全員集まったその夜、離れで殺されたのだ。外は一面、銀世界。なのに足跡は発見者のものしかない!雪と鍵による二重密室の謎に、名探偵・法月綸太郎の推理が冴える。これぞ本格ミステリの王道。
人生の、まどろむような昼下り。胸底に押し込めたわだかまりが、哀しみがふとしたことで噴き上げ、平凡な日常が一瞬、色を変え、ゆがむー。シュールな感覚の34のショートショートと12の愛のショートストーリー。
幼い日の記憶への憧れを秘めた孤児星玲子の小さな胸を、祖父が遺した幻の遺産をめぐる大人たちの打算が容赦なく揺さぶる。雪の札樽国道をさまよう少女を必死に守る幼な友だちの丈と愛猫とら。音もなく時間を巻きこんでいく非情な運命の糸車は、どんな明日を見せてくれるのか。雪国に芽ばえた可憐な愛の行くえを美しく描く長編ファンタジー。
愛の波紋のさまざまを鮮やかに描く恋愛小説集。芸大で邦楽に打込む陽子は東京・築地川育ちの下町っ子である。先輩の新進演奏家との恋の行方を、青果仲買店「吉長」の暖廉に生きた祖父や、移りゆく町と人情への哀惜をこめて描いた表題作他、「舞台のあと」「青春の傷」「松の木の家」等、珠玉作9編を収録する。
時は1944年、ノルマンディー上陸作戦の前夜。パリのホラー劇団=グランギニョールの団員による、小企模な逃亡イギリス兵の援助組織があった。その彼らに、撃墜され、瀕死の重傷を負ったイギリス人女性情報員が告げたのは、恐るべきナチスの兵器「鉄のヤスデ」だったー。軽快なテンポの傑作冒険小説。
「どうです?踊りませんか」男の誘いは自信に満ちていて、女に戸惑う隙を与えなかった。「これは、メモリーズ・オブ・ユーかしら?」…抑えがたい男の恋心、危ういと知りつつも傾いてゆく女心ー微妙な大人の愛の心理を、深く、やわらかく捉える恋愛小説集。表題作ほか「後坐配」「逝春期」等18編を収録。
その日まで恋はれてあるを知らざりし死のきはにのみ抱きける人ー。幾たびも恋のほむらに身を焦がし、本能のままに悔いなき女の倖せを追い求めた歌人・麻緒の、哀しく、美しく、奔放な生涯。大正期の名女流歌人・原阿佐緒をモデルに、“愛の作家”が華麗な筆致でこまやかに描く、長編恋愛小説の名品。
なぜ、それが“物語・歴史”だったのだろうかー。おのれの胸にある磊塊を、全き孤独の奥底で果然と破砕し、みずからがみずから火をおこし、みずからの光を掲げる。人生的・文学的苦闘の中から、凛然として屹立する、“大いなる野性”坂口安吾の“物語・歴史小説世界”。
江戸下町の人情の綾を描く。江戸・深川中島町、俗にいう澪通り。過去を秘めた心やさしい木戸番夫婦の胸を熱くさせる愛し、涙し、許しあう男と女たち。江戸下町のけなげに生きる人びとを描いた連作短篇小説集。
私立探偵の緒方は、友人のデザイナー・野島と共に六本木に事務所を構えている。今の仕事は、与党の代議士・堀江の長女みつきの行方を捜すことである。どうやら不動産会社社長・外岡の息子・秀志がみつきを連れ出したらしい。ある晩、秀志は舟木を伴って緒方の事務所を襲うが、その直後、刺殺体となって発見され、さらに舟木も自室で殺されていた…。
テニスコートで知り合った女の子2人にご馳走するはめになったのは、沙世子に断られ、文也とテニスをしたことにあった。彼女らはつまらなかったし、おれ(真人)と文也は逃げ出したかった。そしておれたちを救ったのも偶然そこに来た沙世子だった。こうして、ちょっと変わった風の沙世子と、沙世子に言わせるとケーハクな文也と、ごくフツーのおれの、3人パターンのつき合いが始まった。
私ー秋本苺子は、海棠高校1年生。まだ4月だというのに、荻久保朝くんと大の仲よし。あ、でもそれって“彼と彼女”としてではなく“姉と弟”という感じで、なんだけど。クラブも同じ新聞部なんだよね。ところがある日、桜子というナマイキな女が現れた。幼稚園から中学まで朝くんと同じとかで大きい態度。性格ブスってヤーね!恋や友情の間でゆれる少女の心もよう…。
闇の中に、じっとうずくまる銀色の生き物ー遠い記憶の彼方から、今も心のどこかから、甘くせつなく見つめ返す存在ー幼いころ、きっとあなたも見たことあるはず…。幼なじみのトオルが登校しなくなってから半年になる。楓子は、彼を学校に連れ戻すため、彼の住む“研究所”へ向かった。その途中、あたしは雷に撃たれ…そして、ふしぎな国のミャオが、あたしの前に現れたのだ。
ぼく、ほずみ。親友の股一といっしょにドーナッツ屋でバイトすることになったんだ。もちろん、目的は可愛いGFを見つけるため。で、さっそくふたりして真冬ってコに狙いをつけた。どっちが先に彼女をオトせるか。共有財産のバイクをかけて、オトコとオトコの熾烈な(?)戦いがはじまる。そこへ凶暴性格の赤星や幼なじみのリオコもからんで、うーん、どうやらこの恋、大混線マチガイなし。
人はそれぞれ、他人には決して理解しえない自分だけの憂鬱(ささやかな悩み)を持って生きている。日常の生活の中で確かに悩みのタネはあちこちに転がっているだろうが、嫌いな物を工夫して食べるように、それらの憂鬱も工夫しだい、気の持ち方で全然苦にならなくなるはずである。どれだけ人生を楽しく生きられるかは、この憂鬱とうまく付き合い、おいしくいただくかにかかっているのでは?
バラの匂いのするウチカワくんは、500kmも離れた町に転校していった。スズコはそれが哀しかった。彼女は大人たちが忘れかけたなにかを大切にする女のコ…バラモンは、そんなスズコが大好きだった。ある日、スズコの家の電話機が突然話しだした。「オイラの名はバラード。ヨロシク」それにつられるように、身のまわりのものたちがいっせいにしゃべりだした。なにかが起こり始めたのだ。