1989年発売
生徒たちの前で、恥ずかしくて消え入りそうになりながらも、1枚、また1枚と着衣を脱いで、白い柔肌をさらしていく女。素肌に縄をくいこませ、生徒や同僚の男たちになぶられていく女教師は、やがて被虐の炎にとりつかれ、淫靡な世界に漂う。汗と愛液を噴きあげ、一気にのぼりつめる女の前にまた…。
独特のセックス感覚で、学園の生徒や教師に君臨する、若きPTAママ。学園の自立と性教育の名のもとに、白く輝くふくよかな裸身と、淫花を開いて、愛液をしたたらせつつ、次々と男を咥えこんでいくママたちは、ピンク色に染まった肌を震わせ、もだえ、さらには快感のあまり、気を失っていく-。
飽くことのない快楽への欲望が美貌の人妻をさらに華麗に、そして魔性へと駆りたてる。彼女たちの女神のような裸身を前に、男は跪き、足指を舐めしゃぶり、自らの奉仕に酔いし痴れる。時に残酷に、時に優しく、女は男を傷つけ痛めることをやめようとはしない。狂った宴はいつ果てるとも知れず続く-。
後の世、名奉行といえば第一に名前をあげられる大岡越前。だが、彼の前半世は決して人に誇れるものではなかった。元禄の悪風に染まり、水茶屋の女お袖との間に一女までなしたが、一緒にはなれない。やがて、彼が江戸町奉行へ抜擢された時、お袖の復讐が彼を待っていた。-みずから蒔いた種をみずから裁く人間大岡越前の苦悩。著者が戦後の混乱した世相に、深い想いを託して描いた意欲作。
平家追討の院宣ならびに朝日将軍の称号を賜わり、生涯最良の日々を味わう義仲。だが、彼の得意満面の笑みも次第に歪みはじめる。牛車の乗り方ひとつ知らない田舎そだちだから、殿上づきあいは苦手だ。相手は老獪な後白河法皇。義仲の凋落は水島合戦から始まった。反撃の平家、背後から襲いかかる鎌倉勢、加えて院方ーと義仲は四面楚歌。さすがの一世の風雲児も、流星の如く消えてゆく。
源氏の内輪もめが幸いして、都落ちした平家は急速に勢力を挽回していた。西海は一門の軍事力の温床、瀬戸内には平家の兵船が波を蹴たてて往きかい、着々と反攻の秋を窺っていた。わけて一ノ谷は天険の要害、平家自慢の陣地だった。加えて兵力では、平家は源氏の何倍も優位にある。しかし、地勢と時と心理とは、まったく平家に不利だった。義経軍の坂上からの不意打ちに算を乱して敗走する。
一ノ谷の合戦から屋島の合戦までには、1年の月日が流れている。さきの合戦に大功をたてながら、なんら叙勲の沙汰もうけぬ義経。そしていったん任官後は、鎌倉に断わりもなく、と不興を買い、平家追討使の大役も範頼に奪われた義経。鎌倉どの差向けの花嫁も、彼の心を暗くする。だが、源氏は義経をまだ必要としていた。-西国攻めの範頼軍は備前児島に立往生し、平家軍が猛威をふるう。
ある夜、青年ハインリヒの夢にあらわれた青い花。その花弁の中に愛らしい少女の顔をかいま見た時から、彼はやみがたい憧れにとらえられて旅に出る。それは彼が詩人としての自己にめざめてゆく内面の旅でもあった。無限なるものへの憧憬を〈青い花〉に託して描いたドイツ・ロマン派の詩人ノヴァーリス(1772-1802)の小説。
自由であっても、いつも孤独なひとり。三田村彩子、32歳の独身OL、外資系会社の秘書。四年以上つきあっている恋人岡本直紀は34歳。結婚すると決めたわけではないが、彼にはもう一人、若い愛人エリがいる。彩子もまた、友人の家で出会った泰生と暮らし始めるが…。幸福を夢みながら、決して満たされることのない、男女の孤独感を描く書下し恋愛小説。
都会の競争社会を嫌ってメイン州の美しく小さな町に越してきた、若い夫婦と二人の子どもの一家。だが、家の前の道路は大型トラックがわがもの顔に走り抜け、輪禍にあう犬や猫のために〈ペットの共同墓地〉があった。しかも、その奥の山中にはおぞましくも…。「あまりの恐ろしさに発表が見あわせられた」とも言われた話題作。
猫のチャーチがひょっこり戻ってきた。腐った土のにおいをさせて、森の奥から戻ってきた。ならば、愛する息子ゲージが帰ってきてもいいではないか!愛していればこそ呪われた力まで借りようとする人間の哀しさ。モダン・ホラーの第一人者S・キングが“死”を真っ向から描ききった、恐ろしくも哀切きわまりない“愛”の物語。
美人で、すてきな夫や親友がいて、もうすぐ赤ちゃんも生まれる。幸せの絶頂にいたあたしは、ある時から奇妙な夢を見るようになった。あたしとまだ生まれていないあたしの息子は、5つの月の骨を捜すためこの世界に帰ってきたのだー入れ替わる昼と夜、現実と夢、そして階下に住んでいた“まさかり少年”…予測不能かつ衝撃の展開で読む者を翻弄し心酔させる類を見ない傑作!
「自分が学校から脱落するのではなく、自分から学校にさよならする」と決めた14歳の少女夏実。「ほかの子がちゃんと行ける学校へ、行けないような子に育ててしまった」と自らを責める母の史子。肉親、隣人・教師たちはそれぞれの立場から、この母娘を見守る。無機質なシステムと化した学校をめぐる問題を、現代を生きるすべての人々に関わるものとしてとらえた社会派小説。
「花まつりを見に行きます」という絵ハガキを遺して死んだ姉・直美。その足跡をたどって岡田美沙緒は北海道を訪れる。冬の花まつりとは一体なにを意味するのか?そして人妻の事故死との関係は?すべての謎が解け、姉の愛した男をさがしあてたとき、美沙緒を待っていたのは、想像を越える慟哭の真相だった。