1989年発売
16世紀後半、プロテスタントのイギリスと、カソリックのフランス、スペインとは宗教的に激しく対立していた。イギリス船、アリオン号の船長の娘リリーは、父母に伴われ、サント・ドミンゴに祖母を見舞った帰り、何者かに船を襲われ、目の前で父を殺されてしまう。ようやく無人島に逃れ、命は助かったものの、母は熱病にかかり、この世を去る。わずか12歳のリリーは、小さな弟と妹をかかえ、誰からも忘れられたまま、その熱帯の島に取り残されるのだった。そして、いつしか7年の歳月が流れた-。
リリーの父母と運命を共にしたエリザベス女王の家臣ベイジルの弟、ヴァレンタインは、兄の行方を捜しつづけ、ついに、リリーたちを見つけだし、故郷イギリスに連れ戻した。16歳のリリーは、精悍なヴァレンタインに次第に心惹かれていくが、彼には、コーデリアという美しい婚約者がいる-リリーの想いは通じないかにみえた。平穏無事なその生活に突然、降ってわいたような事件が起こる。リリーの邸をわが物にしようと企むハートウェルを、誤って殺してしまったのだ!思いもかけないできごとに、ただ茫然と立ちつくすリリーだったが…。
マギーとチェース(「見はてぬ夢」に登場)の愛の結晶、タイの青春を描く待望のカルダーシリーズ第4弾。成長したタイは、父に反発をおぼえながらも、牧場に生きる男としての自覚を深めつつあった。しかし、都会育ちの美しい妻タラ・リイの野心と浪費にふりまわされる日々の中で、牧場育ちの素朴な娘ジェシィに、心の安らぎを求めるようになっていく。そんな折、タイの両親や妹キャスリーンまでも巻き込む恐ろしい事件が起こった。カルダー牧場の未来は、そしてタイの愛のゆくえは-。
19世紀、イギリス産業革命の激動の時代を背景に、祖父に引きとられた純情無垢な少女ネルの辿る薄幸の生涯を描く大作。祖父は骨董屋を経営していたが、ネル可愛さの余り一獲千金を夢見て賭博に手を出し、破産してしまう。骨董屋は高利貸クウィルプに差し押えられ、ネルは老人とロンドンをあとに、あてどない旅に出る。美と醜、善と悪、さまざまな対立を描きながら、波瀾万丈の物語の幕が上がる。
蛇の髪のメデューサ、火を吹くキマイラ、両性具有のスフィンクスといった怪物とともにくりひろげられる、得体の知れない人物ラーオ博士のサーカス。毒性強烈なユーモアと暴力的な詩情を秘めて、読者をひき込まずにおかないファンタジーの名作。
「冗談じゃない、そんなことさせられんよ」セーラはため息をついた。生活のため自宅を下宿に改造する気になったのだが、何を提案しようが一族が盛大にもめることぐらい予期しているべきだった。でも諦めるわけにはいかない。自ら人生を切り開かなくては、やがて苦労は実った。だが喜びも束の間、今度はテナントの一人が殺され…。好評の第2弾。
アヴァロンは美しい世界だった。人類の進出を脅かすものなど何も存在しないように見えた。人類初の惑星植民団は、キャロメットと名づけた島を拠点に生活を始めるが…。ある日突然、コロニーの動物たちが次々と惨殺され始めた。ちらつく未知の生物の影。そしてある夜、ついにコロニーを恐怖が襲った!ベストセラー・メーカーが贈る待望の最新作。
キャドマンは、その怪物をグレンデルと名づけた。甚大な被害を蒙った植民団は、全力をあげて撲滅作戦を展開する。そしていったんは彼らが勝利をおさめたかに思えたが…。やつらはいったいどこからやってくるのか。人類は、この強大な敵を制圧することができるのか。アヴァロン・コロニーを血と業火に染め、最後の戦いの火蓋が切って落とされる。
マークは震えていた。冬の寒さのためじゃない。早朝の駅、目の前の改札口は乗客でごった返している。その改札がなぜか怖くて、通り抜けられないのだ。14か月前のあの事故のせいか。このキングズ・クロス線の列車から転落して、死にかけたのだ。ただ、いったいそのとき何があったのか、ぜんぜん憶えていない。そんなマークをよそに、乗客たちは改札に向かう。列車が自分たちをどこに連れていこうとしているのか、知りもせずに。
発狂、殺人、自殺ーキングズ・クロス線の乗客たちに異変が相次いでいる。いっぽうマークは、奇怪な超太古の儀式の夢に夜ごと苛まれていた。これもあの事件のせいか。ならば、失われた記憶をとりもどさなくては。そう決心したとき、謎のゴースト・トレイン・マンが彼の前に立ちはだかった。殺戮の列車が疾走し、世界の命運を賭けた死闘がいま火蓋を切って落とされる。超弩級新人作家の爆走ノンストップ・ホラー、ついに日本上陸。
リンは受話器を取った。「ハーイ」「もしもし…ドーンかい?」「そうよ」相手の男がひと呼吸おいた。そして言った。「砂浜で裸で寝てるつもりになってくれないか」-誰が好きこのんでこんなことをするというの。テレフォン・セックスの仕事だなんて。でも、まともな職を見つけるまでの辛抱。一人娘のレイチェルだけには、このことを知られたくない。そのころ、ある男が彼女のすぐそばまで迫っていた。現代サイコ・サスペンスの傑作。
『フロベールの鸚鵡』は、面白おかしい冗談と真摯な叙述を驚くほど巧みに交錯・結合させた小説である。ここには、文学的考証があり、文学評論があり、文学的実験の展開がある。政治、経済、テクノロジー、いずれ分野においても、あらゆる問題に手ぎわのいい即答が要求される現代にあって、この世には真の答えなど存在しない問題もあるのだということを、ジュリアン・バーンズは敢然と、しかも典雅なユーモアをもって我々に想起させる。
類まれな女体の資質に恵まれた未亡人・青柳美春は、東工事会長・東林太郎の専任秘書兼セックス・パートナーとして採用された。好色漢で聞えたワンマン会長のこと、入社試験は老会長自ら、美春にファックを迫るという特別テストの上々の結果である。老会長の指南よろしきを得て、美春は、東工商事の浮沈を賭けた難局に、名器にモノをいわせたセックス・テクニックを存分に発揮し、東工商事の安泰と自らの重役昇進を勝ち取ってゆく。-強烈なセックス・アピールを持つ未亡人秘書のめくるめく性の饗宴を円熟の筆致で描く長編官能小説。