1990年発売
京都東山、三十三間堂。後白河法皇が創建した名刹も、応仁の大乱後まもない頃なので朽ち果てるにまかせていた。その堂の前で、一人の娘が凌辱されまいと、二人の無頼者を相手にけなげに闘っていたが、力尽きて犯されてしまった。娘の死の寸前、来あわせた堀辺牙王丸は「姉の由布美に」と彼女から錦の袋を手渡された。牙王丸は、諸国流浪の旅に出ている古式拳法・骨法の達人である。洛北の大雲寺に監禁されている由布美を助けた牙王丸は、錦袋の中身の謎を解くため、勇躍、琉球に向う…。長編アクション&エロス。
雷鳴とどろくハミール山脈の奥深く苦難の旅をつづける一行がいた。〈昼の国〉ファリソンの王女ファリナと弩の名手の黒龍、青い髪の青龍、朱鷺色の羽の鳥に変身する緋龍の屈強の三戦士たちだった。険しい峰、人跡をはばむ黒い黒…めざすは霊山ダ・ムーの宮殿。そこには、伝説の英雄“銀色のシャヌーン”がいます。銀のマントに鎖帷子、銀の剣ソルリークを持つ無双の美剣士。だが、行く手には巨大な闇の敵とあらがえぬ運命が待ちかまえていた…。ピュア・ファンタジーの新星が放つ、待望の書下し傑作。
12月20日、JR東部日本は、上越新幹線にガーラ湯沢駅を新設し、ゴンドラで結んだGALA湯沢スキー場をオープンした。その記念に来年1月「ミス・ミスターGALA湯沢コンテスト」が開かれる。予選を通った江森敦子と倉沢和美は久しぶりの滑降を楽しんだ。敦子が忘れ物をとりにロッカーに行き、暗証番号を押して開けると、転がり出たのは女性の死体だった。先程まで華麗なフォームで滑っていたコンテストの優勝候補、梶佐江子である。視察方々、初滑りに来ていた鉄道警祭の高杉春雄警視が駆けつけてみると…。
紀州一の大富豪柳川家。その門前を今、鋭く見つめる三対の眼があった。健次、正義、平太。後に「虹の童子」の名で世界中を騒がせる誘拐団の若者達である。標的は女当主とし子刀自。慈愛溢れる人柄で、地元では生き神様と慕われる82歳のおばあちゃんだ。風雨にもめげず監視に励んだ3人は、持ち山の見回りに出た刀自の拉致に遂に成功。が、このおばあちゃん、タダ者じゃなかった。自分で身代金を決めた上に、その受渡し方法まで滔々と語り始めたのだ。かくして要求総額百億円、授受は全てテレビ中継という史上空前の誘拐劇が始まった。
アフリカ・モザンヴィックの港に碇泊中の南ア定期航路貨物船・白雲丸に突然、次港に寄らずケープタウンへ直行せよとの航路変更指令が届いた。しかも、そこで積み込みまれた大きな木箱の中身が何者かに持ち去られたのだ。稲村一等航海士は行手に不吉な予感を覚えた。ケープタウン入港後、稲村はリンと名のる美貌の娼婦から密航を依頼される…。大暴風雨荒れくるう喜望峰沖を舞台に描く記念碑的傑作。
産業スパイが射たれ、狙撃犯はその場で逮捕された。五十嵐丈吉、59歳。中国戦線を転戦。のち自衛隊で射撃の腕を磨く。渡米後、暗黒街のヒットマンとなる。かつて依頼主を明かしたことのない男が、なぜ今回の依頼主を匂わせた。ヒントは「風呂敷」と「キング・コング」だという。警視庁捜査一課に勤める私は、退職刑事の父に連想ゲームをもちかけた…(「連想試験」)。好評シリーズ八篇を収録。
教育ブームにのって急成長した進学塾の女子生従が帰宅途中に惨殺された。その直後、塾経営者・木暮彰の自宅にはそのあくどい経営と管理態勢を難詰する電話がかかった。数日後、木暮の娘・由香が誘拐され犯人は身代金3千万円を要求してきた。万全な警備態勢の中、身代金受け渡しに臨む警察。一方,身代金の他にもう一つの要求をつきつけられた木暮は、独自に犯人を追った…。長篇本格推理。
逓信省として発足した郵政省はかつては現在の運輸省・通産省の一部をも所管範囲とする有力な官庁であった。しかし、昭和18年の機構改革、24年の分割で、3つの現業、電波監理部門のみと弱体化してした。情報化へと動く時代状況の中、霞が関、郵政省官僚は総力を上げ、電気通信政策局の設置、NTTの誕生、郵便貯金を梃子にした大蔵省との力関係の改善をはかった…。長篇ドキュメンタリー・ノベル。
スコットランドの魔女から「あらゆる海の水が干上がるまで生きる」と宣告された船乗りマシュー・ロー。彼はドレイク、ハドソン、モーガンといった海の勇者たちに仕え、いま1682年、海軍大臣サミュエル・ピープスのもとで名誉革命の波にのまれようとしていた…。英国の海の英雄たちの冒険と、その惨酷な運命を描いた傑作海洋ロマン。本書は「非情の海」で知られる巨匠モンサラットの遺作。3部作の第2弾。
銃も棍棒もなしで、丸腰のまま保安官補をつとめる、一見物静かな男ルー・フォード。ウェスト・テキサスの小さな田舎町を牛耳る建設業者コンウェイを義兄の仇とねらう彼は、売春婦を利用し復讐をとげるが、そのために殺人をくり返すこととなり、心に巣食った病的な暴力癖をあらわにしていく…。たしかな人間観察眼によって描かれる「現実味のある異常者」の物語。“安物雑貨店のドストエフスキー”と称され、再評価の声の高いジム・トンプスンの幻の代表作、ついに登場!
ジャパユキとなっていたオリビア・キハノが北海道の山中で焼死体で発見された。フィリピンの裏社会に君臨する神谷昭次はオリビアの確認に旭川へ向かうが、雪山で二発の銃弾の洗礼を受け、また、オリビア捜索の一カ月間に行く先々で地元の暴力団につけ狙われていたのだった。杳として行方の知れぬオリビアの足取りを追って旭川から網走へと向かうが、そこでも神谷は二人の暗殺者に襲われてしまう。九死に一生を得、狙われる理由が分からぬままフィリピンへ戻った神谷だったが、日本の企業戦士が企む恐るべき巨悪と組織の罠が待ち受けていた…。
CIA最高機密のオメガ・ファイルが漏洩し、持ち出し容疑者を追う精鋭が未知の部隊に撃破された。標的の捕捉依頼を受けた鬼道組はブリュッセルで謎の組織「ダブル・クロス」と対峙する。激闘のさなかNo.3の鏑木が姿を消し、野獣たちは史上最強の敵を前にかつてない苦境に追い込まれる。
どんなにカードが揃っていても、エースは1枚しか存在しない。その“頂点”を目指して、因縁の二人と目されるライバルたちのパワフルでスリリングな戦いのドラマが展開される。心優しき男たちの生きざまと、幾多の名勝負、名場面を熱くさめた観察眼によって浮き彫りにする。-本書に収められたヒューマンな作品群には外からは窺い知れない“裸の選手”たちが息づいている。-プロ野球ノンフィクション・ノベル。
便利屋・芳賀連太郎が帰って来た。刑事を辞めて便利屋稼業を始めた俺だったが、ろくな仕事の依頼がない。今回も懲りない俺は、美女の甘い罠にまんまと引っ掛かって、殺人の片棒まで担がされてしまった。セクシーな悪女が勢揃いする、大好評“便利屋シリーズ”第2弾。
漂泊の俳人山頭火を研究していた老作家が殺された。しかも、厳重に保管された遺稿の文字が消されて…。さらに、ただ一人遺稿の内容を知る女性編集者が失踪。遺稿に秘められた山頭火の謎とは何か?事件に疑問を持った女性編集者の同僚は、山頭火の足跡を追って、中国路へ向かう。文学史の謎と推理を融合した傑作。
女がさらわれた、助け出してくれ。かつて命を救われた戦友の頼みとあれば、コランタンには断われない。たとえ、女衒まがいのダチでも、しかも休暇中、管轄外の捜査活動でも。犯人は陸軍を追放された老将校、狂信的な愛国主義者、そして恐しい秘密を持った男。その秘密のために、キャバレー・ホステス、エピファラニーは誘拐され、地獄の責め苦にあえいでいた、人里はなれた第一次大戦当時の地下壕跡に閉じ込められて。いい仲になったとんでる人妻の情報からついに隠れ処をつきとめ、救出作戦開始。しかし、あわれ人質はダイナマイトをぐるぐる巻きにされた人間爆弾に。どうするコランタン。