1991年3月1日発売
ヴッツ先生は貧しくて本が買えない。そこで有名な本の題名だけを拝借しては勝手に著述し、それをわが蔵書の棚に並べて満足感にひたりこむ。ささやかな喜びを糧に人生をおくる平凡な小学校教師の姿を、ジャン・パウル(1763-1825)はユーモアとアイロニーたっぷりに描きだす。ドイツ散文芸術の大先達とたたえられる作者の傑作2篇。
最愛の夫、ジョフレが故国フランスへ旅立ったあと、アンジェリクの許に恐ろしい知らせがきた。あの魔女アンブロワッサンが生きていた。ケベックに姿を現した魔女は、アンジェリクの幼い娘オノリーヌの命を狙っているらしい…。そしてアンジェリクには、荒野で思いがけない敵の大襲撃が待ちうけていた。
「生きすぎた」-短かい言葉を残して老画家が自殺した。そのときから「謎」が奔りはじめ、「真実」が情念の深い淵に沈みはじめる。数億の価値を持つ遺作の修復を受けおった女が見る地獄の構図。代作者の存在、愛する人の死の真相、女へ託された驚愕のメッセージ。そしてラストに待ちうける衝撃。女流新人問題作。
平成3年3月、多摩地区壊滅!ほんの一握りの「カビ」がコンピュータを“脳死”させた。人々はパニックに陥り、スーパーや銀行を略奪・破壊する。「カビ」は都心を狙いはじめ、内閣は崩壊寸前。ただ一人、危機に立ちむかうのは女性官房長官。類いまれな臨場感で読むものを圧倒する痛快エンターテイメント。
横浜、神戸、函館、そして門司。港町を選んで連続殺人事件が起こった。港町探偵・ポートアイを名乗る旧友の遊佐るりと日美子は捜査を始める。二人の明晰な推理でそれぞれ犯人を割り出し、事件は落着するかに思われたが、門司の事件で犯人が身につけていた淡い紅花で染めた布から恐るべき真相が浮かび上がった。
英雄戦士・矢沢高雄が、世界制覇を狙う魔女マヌー側についた!沢村ゆりと風祭凱チームは、南米リマで、蘇った矢沢と最後の対決に挑む。血と硝煙渦巻く大激闘がうち続く。だが、かの勇者の圧倒的な力の前に、仲間を次々に失ったゆりは、狂った矢沢を覚醒させるべく、ついに唯一無二の“手段”をー。
国際線パーサー松島真一のウラの稼業は世界を舞台のギャング団の一員。ボクサーあがりで腕っぷしは強く、犯罪の絵図を描くのも得意だが女好きが玉にキズ。最後の大仕事は不動産取り引きの十七億円強奪。ヤクザを相手に各国の荒くれ男たちとヘリとマシンガンで急襲、みごと成功して喜ぶ真一に思わぬ伏兵。
美貌の人妻・瀬戸溶子が突然消えた。が、ある夕刊の風景写真の中に彼女によく似た女が仙台の街を背景に映し出されていた。やがて杜の都・仙台と鳴子峡で連続殺人事件が発生。溶子の謎の正体とは。溶子を追う数人の怪しげな男たち。探偵役のカメラマンと女子大生が最後に見た恐怖の大どんでん返しとは?
歌麿の「幻の傑作」が発見された?美術界をゆるがすかもしれぬ事件に雑誌編集者の杉原は勇み立ち、研究家の塔馬双太郎の助力をたのむ。しかし、それは巧妙な贋作だった。そして思いがけず、歌麿は謎の絵師写楽でありえたことまで証明されて…。浮世絵ミステリの白眉といえる秀作。
足利義昭、羽柴秀吉、徳川家康、明智光秀…。陰謀の天正十年、それは起こった。名探偵・木下勝俊が暴く本能寺の謎。信長殺しの真犯人と、怪僧天海の闇に新視点を与える本格歴史時代小説。
ロスの田所葬儀所につとめる神奈柊二は、ある日、同じ宿の住人、星川金吾に死後のエンバーミング(遺体整復)を頼まれる。金吾は日系二世の老人で、柊二の恋人メアリーに食事の世話をしてもらっていた。ところが、数日後、金吾は謎の死をとげる。葬儀の準備のため、金吾の別れた妻や親友を訪ねるうちに、柊二の前に死者の重い過去が次第に明らかにされてくる…。
不思議な女性が伊世を呼んだ。呼ばれた彼女は遥かなときを遡り、北九州は末盧の国の王女に生まれ変わる。そこは古代、ヤマト時代。人々がこれから文明と戦乱に遭遇しようとしている時代だった。伊世を呼んだのが邪馬台国の女王ヒミコであることを彼女は知らない。伊世をめぐり、若々しい国造りへの情熱に燃える伊都のタケル、邪馬の軍団のノボル、海賊ハヤト他がいり乱れ、時代は激動にさらされてゆく。ヒミコが伊世を呼んだわけは?悠久の愛と波瀾の大ロマン、いま始まる。
アルフ暦249年、アルフ大陸は、7つの王国にわかれ、戦乱の日々が続いていた。その一つ山の王国ガド王は、アルフ大陸統一の野望にもえていた。ガド王の支配に屈しない大シャルの狩猟族は、騙し打ちのため大シャルの遺児シャルをはじめとする12歳の5人の少年少女を残し全滅した。5人は、ガド王の支配のもとで、魔術やさまざまの武芸を磨いた。15歳の年、双子の兄妹、シャルを憎むガディス王子とリラ姫のいたわりの間で、王への復讐を心に秘め、王の親衛隊士として戦いの日を迎えた。
時は戦国時代。関ケ原の合戦に勝利したものの、まだ徳川は豊臣と対立を続けていた。家康は5千挺の新式銃を手に入れるため、四男頼宗とその忠臣前田大五郎をスペインに派遣した。英国船プリンスオレンジ号に乗った頼宗たちは、刺客や嵐の危険にあいながらも、スペイン・カジス港に上陸した。初めて踏む異国の地。14歳の頼宗の心は、期待と不安で大きく揺れるが、武士の誇りと自分の使命は忘れるはずもない。だがその前に新たな苦難が…。壮大なスケールで描く冒険小説。
「そんなに喧嘩するのなら別れろよ!」息子のジョンが道子の叫びを聞いて部屋から飛び出して来た。ユダヤ人の夫アル47歳、道子45歳、ケンと12歳の息子ジョンの4人家族。何から何まで妻を頼る夫に、堪忍袋の緒が切れて、道子の眼が三角になり、面長な顔が怒りで上気した。そんな時、老母おととが大阪から、このロスアンジェルスにやって来るという。家庭内国際紛争をユーラスに描く長篇小説。
ベルリン留学中の若いエリート・太田豊太郎は、街で出合った美しい踊り子・エリスの危機を救った。やがてふたりは魅かれ合い、豊太郎は友人の中傷により免官となる。いったんは栄誉を捨て、エリスとの愛を貫こうと決意するが…鴎外自身の体験をもとにした表題作ほか『普請中』、『妄想』、『雁』を収録。