1991年発売
フリーライター浅見光彦は雑誌の取材で名門「菊池一族」発祥の地、熊本県菊池市に向かう。新幹線車中で知りあった美女、菊池由紀は泣いたかと思えば笑いだす情緒不安定。彼女も菊池市に向かうという。ところが、熊本駅で彼女を尾行してきた長野県警の丸山刑事に彼女の父親が長野県“親王塚”で殺されたことを知らされる。容疑は由紀の恋人辻綾一にかかっており、彼女がその逃亡を助けた疑いがあるという。何故由紀の父親は殺されたのか?菊池一族にまつわる因縁とは何なのか?謎は深まり、名探偵浅見の推理が始まる。
東京の北への玄関口、上野駅に再開発計画があるという。地上300mの超高層駅ビル、不忍池地下の大駐車場。地元の下町では賛成派と反対派に意見が分かれていた。大林繭美はタウン誌を発行しながら、この愛すべき街を守ろうと忙しい毎日を送っていた。ある日、ルポライター浅見光彦は軽井沢の作家から1通の奇妙な手紙を託された。そして、数日後、差出人は谷中霊園で「自殺」した。情緒あふれる東京の下町に浅見光彦の推理が冴える書き下ろしミステリー。
検事が一転容疑者となる…。思いもかけぬ展開に、権勢欲、出世欲、金銭欲、所有欲、性欲、あらゆる欲望の渦巻く複雑な人間ドラマがあらわになり、意外な結末へとなだれこむ。歴史に残る法廷ミステリーの傑作というにとどまらず、制度そのものへの批判を含んだ社会小説としても評価された一級品。ハリソン・フォード主演で映画化。
思いもよらない事件が発生した。走行中のトラックから冷凍胎児が落下し、直後、運転手が毒殺されたのである。黒い噂のある光陽医科大付属病院長・森岡剛造との関連が浮かんだが、彼もまた、毒殺死体となって上高地で発見された…。事件の鍵を握るのは森岡の愛人ただ一人。だが、彼女には殺人を犯し得ない完璧なアリバイがあった。やがて、第三、第四の殺人が…。法廷推理の第一人者が、上高地・京都・東京を舞台に、二重、三重のトリックで描く傑作長編本格推理。
関ケ原の合戦が終結して五年。世に溢れた浪人は、“武芸者”として名を上げなければ生きられぬ時代であった。慶長十年十月、宮本武蔵という無名の武芸者が、京都の吉岡憲法に挑戦状を叩きつけた。憲法は代々、足利将軍剣術指南を仰せつかってきた名門であった。同じ頃、美作・宮本村出身の武蔵は、同姓同名の剣の達人の噂を聞きつけ、京に向かっていた…。世に名高い一乗寺下り松の決闘を軸に、従来の武蔵像を覆す独自の史眼で描く“日本剣鬼伝”シリーズ第一弾。
「姉さんの代わりにインタビューするなんていやよ!」ティナは、双子の姉に向かって叫んだ。インタビューの相手は、世界的なシンガーソングライター、シェーン・マクファレン。なにしろ、彼は、マスコミ嫌いで有名な大物だ。やっととりつけたインタビューを、風邪のためフイにすることはできない。とは言え、奔放な性格の姉とは正反対の私がうまく彼女になりすますことができるのだろうか。しかし、ついにティナは、姉の懇願に負けてシェーンのいるカナディアン・ロッキーに赴くのだが…。
ヴッツ先生は貧しくて本が買えない。そこで有名な本の題名だけを拝借しては勝手に著述し、それをわが蔵書の棚に並べて満足感にひたりこむ。ささやかな喜びを糧に人生をおくる平凡な小学校教師の姿を、ジャン・パウル(1763-1825)はユーモアとアイロニーたっぷりに描きだす。ドイツ散文芸術の大先達とたたえられる作者の傑作2篇。
最愛の夫、ジョフレが故国フランスへ旅立ったあと、アンジェリクの許に恐ろしい知らせがきた。あの魔女アンブロワッサンが生きていた。ケベックに姿を現した魔女は、アンジェリクの幼い娘オノリーヌの命を狙っているらしい…。そしてアンジェリクには、荒野で思いがけない敵の大襲撃が待ちうけていた。
「生きすぎた」-短かい言葉を残して老画家が自殺した。そのときから「謎」が奔りはじめ、「真実」が情念の深い淵に沈みはじめる。数億の価値を持つ遺作の修復を受けおった女が見る地獄の構図。代作者の存在、愛する人の死の真相、女へ託された驚愕のメッセージ。そしてラストに待ちうける衝撃。女流新人問題作。
平成3年3月、多摩地区壊滅!ほんの一握りの「カビ」がコンピュータを“脳死”させた。人々はパニックに陥り、スーパーや銀行を略奪・破壊する。「カビ」は都心を狙いはじめ、内閣は崩壊寸前。ただ一人、危機に立ちむかうのは女性官房長官。類いまれな臨場感で読むものを圧倒する痛快エンターテイメント。