1992年11月発売
地中海で密貿易にいそしむトラップ船長のもとに、米軍特殊部隊のウェストン大佐と名乗る男が現われた。彼はトラップに、自分の部隊をリビアに上陸させてくれれば2百万ドルを支払うと告げた。巨額の報酬につられたトラップは、老朽貨物船カロン二世号で北アフリカ沿岸へと向かった。そして中東は、彼の無責任な行動によって戦火の渦に巻きこまれる。史上最悪の船長がまたまた暴れまわる痛快無比の海洋冒険アクション。
サルヴェージ会社の社長オーヴァスは、異父弟マイケルから危険な仕事をもちかけられた。コロンビアから盗み出した大量のコカインをアメリカ国内に密輸入し、以前関係していた麻薬密売組織に売りつけるー。この計画に協力しろというのだ。巧妙な手口で脅され、オーヴァスは仕事を引き受ける。だが、どうやってコカインを運び込み、取引しようというのか?しかもこの時、不気味な男がマイケルの後を追い始めていた…。
綿密な手順に従い、オーヴァスとマイケルは麻薬密売組織の裏をかき、コカインと引き換えに大金を手に入れた。しかし、組織がこのまま見過ごすはずもなく、マイケルたちを制裁すべく総力をあげて追跡を開始する。そして、不気味な男の魔手もじわじわと迫ってきた。果たして、彼らは無事逃げのびることができるか?マイアミの市街と郊外の大自然を舞台に、一世一代の取引に賭けた男たちの鮮烈な姿を描くサスペンス大作。
その女が望めば手に入らないものは何ひとつなかった。ロビイストとしての名声も、財務大臣夫人の座さえも。そんなエリート女性の失踪事件に世間は騒然とした。捜査に乗り出したマクリーシュ警部は、背後に醜悪な人間関係が潜んでいることを知るが、やがて彼女は変わり果てた姿となって発見された。愛と憎悪が交錯する政財界を舞台に、注目の女性作家が描く人気のシリーズ第3弾。英国推理作家協会賞長篇賞ノミネート作。
後悔なんかしていない。その気持ちに嘘はなかった。夫のもとを去ったわたしは、今日からは恋人ピートの家で暮らし始めるのだ。ところが、そんな大切な日なのに殺人事件のニュースが飛びこんできた。さっそくわたしは取材に行ったが、やがてピートの前妻の再婚相手が容疑者として浮かび、事件は思わぬ展開を見せはじめた。前作から一年、記者クリスのその後と新たな事件を描く注目の第二弾。
えっ!わたしが大学の講師に?ミステリに関する豊富な知識を買われ、アニーは大学で講座を持たないかと誘われた。ちょっぴり不安はあったが、夫のマックスに励まされ、申し出を受けることに。が、大学でアニーを待っていたのは、学部内スキャンダルのからんだ殺人事件だった…。マカヴィティ賞最優秀長篇賞に輝く、謎解きミステリの人気シリーズ第三弾。
21世紀初期、日本は世界経済を掌握する巨大ネットワーク国家となっていた。東京で国際情報調査会社に勤務する森口咲子には、もうひとつの顔があった。夜ごと彼女は精悍な男性に変身して「ヴィーナス・シティ」に現われるのだ。ヴィーナス・シティとはコンピュータ・ネットワーク上に構築された仮想現実都市。ヴァーチュアル・リアリティの技術を応用したこの電子都市では誰もが自分の望み通りの人間となり、あらゆる欲望をかなえることができる。ある夜咲子は、シティの中で暴漢に襲われた少女を助ける。犯人は何者か、その動機は?やがて事件は日本全土を巻きこむ国際情報犯罪に発展する…。仮想現実感とジェンダー、コンピュータ技術と日本の将来を迫真の筆致で描いた近未来小説。
カントリーの本場ナッシュヴィルで歌手として立とうとして、行方を絶った木田恵美莉。大手レコード会社の日本人調査員〈私〉は、自にの潰えた夢に重ねあわせて彼女の失踪の謎を追うが…。カントリーの殿堂を買収しようとして日米摩擦を起こす日本人実業家、音楽都市に蠢く黒い陰謀、戦争花嫁だった日系老婦人の相次ぐ不審死が、その行く手を阻む。日本人探偵の必死の追跡劇をスケール大きく描く問題作。
17世紀、絢爛たる宮廷音楽の時代。ヴィオールを弾く二人の天才は、妻や恋人との悲劇を超えて、厳粛で官能的な音の織りなすバロックの世界へ旅立った。そして-世界のすべての朝は二度と戻ってこない。
東京に赴任していた英国外交官ピーター・ダーウィンは、本国へ転勤になり、帰国休暇の途中マイアミに立ち寄った。そこでクラブ歌手のヴィッキイと知り合った彼は、なりゆきで、娘の結婚式のために英国へ行く彼女とその夫を送って行くことになる。ヴィッキイの娘ベリンダの住む、チェルトナム競馬場近くの町は、偶然にも、騎手を父にもつダーウィンが幼年時代を過ごした場所だった。ベリンダは勤めている動物病院の獣医ケンと婚約していたが、ケンの周囲には暗雲がたちこめていた。優秀な獣医である彼が手術した馬が、なぜか次々と原因不明の死をとげ、病院に悪い噂がたちはじめていたのだ。さらにダーウィンらが到着して早々、病院は放火され、焼け跡から身元不明の死体まで発見された。ケンの窮地を救おうとダーウィンは調査を始めるが、やがて幼年時代のこの町での思い出がじょじょに甦り、その記憶の中に、事件の謎を解く重要な手がかりが隠されていることに気づく。
エイズで逝った彼は、15歳年下のぼくを誰よりも深く愛してくれた…。残された者のかぎりない喪失の悲しみを繊細に描くアメリカ新世代ゲイ作家の感動のラブ・ストーリー。
元宵すなわち正月15日の夜は、「都鄙を通じて家ごとに意匠を凝らし巧緻を極めた燈篭を無数に懸け連ね、月明と光を争ふその火影を追うて今日を晴れと着飾った子女老若が夜もすがら歌ひ且つ踊って暁に及ぶ」(石田幹之助)という。羅綺街に満ち塵土香わしいなかを二郎真君もまたひとりの佳人を連れて観燈を楽しんでいた。鴛鴦の好一対。そこへ小珊という平康坊の妓女が声をかけてきた。束の間の立ち話の後、二郎が追うと佳人の姿はなかった。翠心が消えた。意中の女を追って冥界へ旅立つ二郎の前に何が?会心の第5弾。
「大正6年8月28日に本艦の工事を開始して以来、今や艦隊の完成を見るに至った。ここに、本艦を『長門』と命名するものである」大正8年11月9日広島県呉軍港で“鋼鉄の浮かべる城”は誕生した。日本海海戦以来、僅か13年、国防の基本を海として強力な戦艦部隊でこれを守るという構想-戦艦8隻、巡洋艦8隻を基幹とする88艦隊計画が樹てられたのである。『長門』に続く15隻、海軍の夢は着実に実現しつつあったが…激動の世界史に抗う東洋の島国にとって、これは苛酷な試練の序曲だった。大型新人の渾身の大作。
柔術の達人で、文人でもある空中楼夢裡庵先生は、れっきとした八丁堀定町廻り同心。正月早々、絵師が殺された。盆の窪に突き立った矢が致命傷だが、状況が一風変わっていた。壁に立てられた絵馬の人物が、今まさに矢を放った姿なのだ。手の込んだまねを、と渋い顔の先生だったが、ある書物に、「絵の人形に矢を射はなさす術」という文章を見つけたのだ。まさか…。直木賞作家の、洒落た連作七篇。
19世紀末、フランス統治下のベトナム。政府は民族独立を掲げる神出鬼没のゲリラ〈九頭の龍〉に手を焼いていた。彼ら一味を殲滅せんとする仏大佐メニュリーは作戦「オペラシオンU」を計画、伝説的な工作員モンギランを起用する。“U”とは一体何を意味するのか?一方、日本帝国海軍は新鋭巡洋艦「畝傍」を仏造船所に発注、軍備増強を目論む。それを阻止せんとする清国工作員…。長篇海洋冒険小説。
シナリオライターの卵で、自己の霊能力に目覚めた小林まり子。ブルートレイン『北斗星4号』の中で、霊交信を受け、スーツケースに入れられて沼に沈められた寺田正和の死体を発見する。寺田の友人、ロックシンガーの長崎祐介から寺田殺しの犯人を霊視で見つけて欲しいと依頼されるが…。鏡の中に現れる浮遊霊の工藤チャンや、捜査一課の美男警視・一条秀也とともに、霊感探偵が始まった。書下しシリーズ。
チャンドラースクールの優等生アメリカ屈指のハードボイルド・ストーリテラー、ジョン・Dの古きよき時代、50年代のサスペンスもの登場。戦争で傷つき、人生に絶望した青年の信じられるものは金だけ。戦友が死にぎわに残した謎のことば「シンディーが分っている」を手がかりに埋蔵金を求めてやって来た小さな田舎町に待ち受けるものは何か。