1992年12月発売
1960年代後半から90年にかけて、〈知〉が沸騰した時代を背景に、バルト、フーコー、デリダ、ラカン、アルチュセール、レヴィ=ストロース、ソレルスなど、現代思想の冒険者たちの強烈な生と死、さらに、多重的にくりひろげられる官能的な物語を描いた華麗な自伝的回想。
上杉謙信が打倒信長に起った。安土を追われた信長は、天下にふたたび覇を唱えるため、南蛮技術を結集して巨大海上要塞を建造、謙信への逆襲に燃える。京都を押さえた謙信、その謙信の意を受ける忍者の暗躍。淡路島のヨーロッパ式城塞を根城とする信長と、彼を狙う暗殺者との息詰まるサスペンス。真の戦国の覇者となるべく両雄の激突が始まった。上杉謙信が死なずに上洛したら…?異色新鋭、東郷隆が壮大な歴史ifに挑戦。前作『信長の野望覇王の海上要塞』につづく歴史if長編第2弾。
引き抜かれたカカシのあとに生えた草の葉っぱ、雲母のようにキラキラする竜のウロコ、字の書かれた小さな石ころーそんな奇妙なものばかりがあるというどんぐり民話館。そのどんぐり民話館を探しに、都会から一人の青年がやってきたが…。いつまでも語りつがれる民話のような味わいで、さまざまな人生の喜怒哀楽を描いた31編。ショートショート1001編を達成した記念の作品集。
元禄四年の早春、天下の副将軍水戸黄門とお供の渥美格之進、佐々木助三郎の三人旅は、奥州路へと向かっていた。-おなじみ水戸黄門漫遊記を描く長編快作。奥州宇多郡中村六万石相馬大膳之亮の城下から、伊達領の一万八千石安房守宗良の領内へと老公の旅は続いていく。各地で老公の裁きによって事件は解決する。一ノ関への山中で三万石一ノ関田村右京太夫の家来脇田新三郎と出会い、真影一刀流牧主水之助の娘お梅との伯もとりもってやった。庄内村で出会った百姓吉右衛門の話から、酒井家の重臣田川新五左衛門の悪事をも老公はみごとに裁いてやった。奥州路の旅から江戸へ戻った三人旅は、次には東海道を京へ上ることになった。老公を待つ次なる事件とは…。
都内のアパートで若い女性の死体が発見された。情況は殺人だが、ドアも窓も内側からロックされている。密室殺人?ただちに警視庁から御存知八木沢警部補たちが出動する。物盗りの仕業ではなさそうだ。しかし被害者の人間関係を洗っても殺されるような動機はまったく見つからない。死体の胸元から平泉の絵葉書が発見される。ダイイングメッセージ?やがて第二の殺人が湯沢で起こる。そして第三の殺人が東京の夜の路上で…。被害者はいずれも若い女性、そして平泉の絵葉書が登場するのだった。
東京の高級住宅地・自由ヶ丘にマンション一棟を所有している29歳の笹岡夏美が自室で、下着もつけず裸同然の姿で殺された。その後千葉県市川市で中年の女性書家・木村初江が殺されているのをフリーライターの叶雅之が発見した。殺された二人は叔母姪の関係で犯人は同一と推測された。叶は事件のひと月ほど前、霧深い納沙布岬で偶然出会った女性に強く印象づけられていたが、その女性によく似たひとが被害者の身近におり、事件と何らかの関係があるように思われてならなかった。書き下ろし長編ミステリー。
ツアー旅行でオックスフォードを訪れたロース・ストラットンは、観光バスがホテルに着くとすぐに、夫をロビーに残したまま、部屋にあがった。はやく風呂にはいりたい。そうすれば、関節炎で痛む足もすこし楽になるかも…。しばらくして散歩からもどってきた夫は、裸のまま床に横たわる妻の死体を発見した。死因は心臓麻痺。だが、モース主任警部には腑に落ちない点があった。オックスフォードの博物館に寄贈するためローラがアメリカから携帯してきた高価な中世の装身具が、部屋から消失していたのだ。ルビーを填め込んだ黄金の装身具を盗みに入った者が、たまたま現場を目撃されてローラを殺害したとは考えられないだろうか?モースの疑念をさらに掻きたてるかのように、翌日、ツアー関係者のひとりが死体となって川面に浮かんだ。アメリカ人観光客と英国人ガイドたちの錯綜する証言をもとにモースが華麗な推理を展開するシリーズ最新作。
売れない純文学作家フレッドは一念発起、アメリカの土を踏んだ。ところがどう道をはずれたか、畑ちがいのコンピュータ会社に就職し、プログラマーにされてしまった。右も左もわからぬフレッドが命じられたのは、軍のためのAIロボット開発プロジェクト。かくて文科系人間フレッドは、人間も人工知能も右往左往する悪夢の悲喜劇に巻きこまれてゆく…。SF最後の鬼才スラデックがギャグと毒を満載して贈る抱腹絶倒の怪作。
いにしえより、魔力を持つ半神的種族デリニと人間との対立に揺れ動いてきたグウィネド王国。現在王国は、人間の王の統治下にあった。ところが、王が何者かに暗殺されてしまった。残されたのは弱冠14歳の王子ケルソン。父の王冠を継ぎ、その暗殺の真相をつきとめようとするケルソンだが、前途には思いもかけぬ邪悪な陰謀が待ち受けていた…。トールキン以後のファンタジイ・ブームの火つけ役となった人気シリーズ開幕。
数多くの傑作を世に送り出し、冒険小説の王者と称されたマクリーン。彼の唯一の短篇集である本書は、『女王陛下のユリシーズ号』を生み出すきっかけとなった記念すべき処女短篇「ディリーズ号」や、ドイツ海軍の誇る巨艦が撃沈されるまでの数日間を克明に再現した「戦艦ビスマルクの最期」、軽妙なショート・ショート「金時計」など、さまざまな角度から海と人間のドラマを描いた珠玉の14篇を収録。冒険小説ファン必読。
まずい。ついに借金が払えなくなってしまった。万年金欠の広告代理店を経営するぼくは、社用の車を売らなければならないほど追いつめられていた。そこへ降ってわいたのが、一流石油会社からの大仕事。もちろん二つ返事で引き受けたのだが、なんとそこにはさらなる借金と危険な謀が待っていたー。悲劇の中年男ボーモントが奮闘する苦あれど楽なしミステリ。
高校時代は陸上選手として将来を嘱望されながら、おしくもオリンピック出場を逃したクリスティン。夢やぶれた彼女は、ある日、アルバイト先で警察のスカウトを受け、未知の世界に飛びこむ。クリスティンに割り当てられた仕事は、麻薬のおとり捜査官。中毒者を装って密売人から麻薬を買い、動かぬ証拠をつかむのが任務だ。腕利きの捜査官ジムと組んで街に出た彼女は、おとり捜査の危険をまざまざと見せつけられる。それは自らも麻薬漬けになる、捨身の任務だった。ジムもすでに麻薬に冒されていたが、クリスティンは彼への愛から、自分も危険な世界へのめりこんでいく。やがて二人に、ボーモントの暗黒街を牛耳る大物、ゲインズの尻尾を掴めとの指令がくだる。ゲインズを潰して、この仕事から足を洗おう-。そう決心した二人だったが、その背後に警察署長代理ネットルの野望が隠されているとは知るよしもなかった。かつておとり捜査官だった著者が、体験をもとに女捜査官の捨身の闘いを迫真のタッチで描き、世界で大反響を呼んだ話題作。