1992年2月1日発売
名画盗難、その行方を追って、フランスはパリ警察の腕きき女警視ふたりが来日した。空港に着いた絵画はひとまず都心の大銀行の金庫に搬入され、そこで輸入主・銀行幹部・鑑定家・税関員立ち合いで検査が行われる。最近の贋作は本物とほとんど区別がつかない。女警視ふたりの来日の真の目的は…。彼女らを狙う正体不明の殺し屋の出現。一方、日本経由でアメリカに持ち込まれる大量の麻薬ルートを追って来日中のPSB(大統領諮問委員会)の美人捜査官リタ・グレイの身辺にも執拗な殺し屋の魔手が。そして、女警視ふたりとリタ・グレイの来日の目的がここで合致する。-日本警察界きっての猛者たちが、名画盗難のカラクリと巧妙な麻薬密輸の謎を暴く。
東北の小京都・角館で、3年前に失踪したOL堀内美奈子の白骨死体が発見された。捜査線上には、元恋人のエリート商社マン小此木宏が浮かぶが、小此木には鉄壁のアリバイがあった。名探偵・浦上伸介は真相追及のため角館へ飛ぶが、彼を待っていたのは第2の殺人だった。なんと小此木が刺殺されたのだ。二つの殺人にはどのような関連が。そして新たに浮上する時間の壁…。本格謎解きの醍醐味を存分に堪能させる名手会心の推理傑作。
「なぜ斬らん、真実この阿賀妻をお家の害悪と思うなら、斬奸状をたかく揚げて斬るがよかろう…」旧藩士たちの、旧い主従関係と、新しい生き方への葛藤は深い。明治期の北海道を描く歴史大河小説。
入営して、やがて3ヶ月目に入る。上官上級者によって仕掛けられる無理難題、“思想上の嫌疑”に対する東堂太郎の精妙かつ尖鋭な“合法闘争”はつづくー。「こういうことに血眼になっても、それにどんな意味があるのか、あり得るのか」懐疑に陥りながらも…。しかし一方、奇怪な「剣〓(けんざや)事件」の犯人と目されて窮地に立つ冬木二等兵救済のために「精一杯抗うべく」決意を固める。
毎朝、日本国憲法を朗々と誦する堅介老人。その妻、名脇役としてならすお径さん。可愛くもけなげなムムちゃんに多少優柔不断なボーイフレンド・エイシン…。その他その他、高潔のようで俗っぽく、いいかぼんなようできまじめな人びとが世紀末を縦横にかけめぐる。この人たちは、いったいどんな明日をむかえることやら。
クイーンばりのロジックで密閉状況における推理問題に挑戦しつづける江神二郎。彼を主人公にしたこのシリーズも、本書で三作目。クイーンでいえば、著者がこの敬愛する先人の作品の中でイチオシの『オランダ靴の謎』に相当します。第3回鮎川哲也賞受賞作。
匿名の中傷文の執筆にいそしむ偏屈な老人、マフィアにコネがあると称する9歳の悪ガキ、寄る年波に必死の抵抗を試みる美貌の未亡人ー。こうした登場人物の入り乱れるなか、ある日2人の男女が失踪する。駆け出し弁護士アラゴンをも巻きこんで、物語は予想外の方向へ…。カリフォルニアのとあるビーチ・クラブに展開する恐ろしくもユーモラスな悲劇の顛末。鬼才の異色サスペンス。
アメリカ軍のスティンガー・ミサイル二十四機が、極秘輸送中に強奪された。犯人は国際的テロリストのヴェガ。彼はこのミサイルで、まずアイルランド航空の旅客機を撃ち落とした。次々に旅客機を狙うつもりなのだ。もしそうならば、国じゅうがパニックに陥る。合衆国大統領は緊急閣僚会議を招集した。犯人を突きとめ、ミサイルを奪還せよ!席上、ひとつの電話がかかった。その電話の主が、ミサイルと交換に要求してきたのは…。
カークは自暴自棄な生活を送っていた。テロで妻子を殺され、それを機にCIAを辞めてしまったのだ。そんな彼のもとにかつての上司が訪れた。ミサイル奪還作戦に加われ、相手のテロリストは妻子を殺した連中と関係があるらしい。その言葉に突き動かされたカークは、ヴェガを追いはじめた。だが、ヴェガを操る謎の人物、さらに事件全体の裏で糸を引く黒幕の存在が浮かびあがったとき…。錯綜する展開、そして衝撃の結末を呼ぶ大作。
マスコミ関係者が相次いで怪死を遂げた。一人は宣伝部の伊沢、もう一人はカメラマンの斉藤。いずれも派手な死化粧が施されていたことから犯人は同一と思われたが、二人を結ぶ接点は見つからない。やがて浮かびあがった共通のキーワードは“アリス”。80年代を駈け抜けた青春の光と影のハーモニーは、遂にトレンディ犯罪をも生み出していたのか…。
身分違いの大名のお姫さまに一目惚れして失恋した次郎吉は、生来の敏捷さを買われて火消し人足になった。屋根瓦を音もなく走る練習を重ねながら、火付けで材木の高騰を狙う悪徳商人を懲らしめたこともあった。正義感が強かったのである。その次郎吉が、大名屋敷専門の盗っ人に身を落とした理由は…。ご存知“鼠小僧”誕生までの痛快時代娯楽。