1992年2月1日発売
この世には2種類の人間がいる。死んでいることに気づいている者と、そうでない人間の、2種類。自分の死に気づいている者は、当然ながら死んでいる。死んでいることがわかっていない人間は、生を信じるがゆえに、やがて死を受け入れざるを得ない。ようするにこの世は死者でいっぱいだ。
『愛人』のモデルとなった男の死を最近知ったデュラスが、憑かれたように書き上げたもう一つの愛の物語。『愛人』の姉妹篇。最新作。〈絶望のワルツ〉にのせて語られる、15歳の少女と中国人青年との、性的悦楽と殺意が溶けあった“狂気の愛” デュラスの最高傑作。
山形県・赤湯温泉のクラブ『夜会』に、派遣コンパニオンで失踪一週間になる小野川利美から「殺される!」という緊迫した電話が入った。警視庁捜査一課の北条千里警部は、東京にいる利美の恋人で生命工学の研究者・松山勇二の身辺を探る。高級な天然香料を人工的に造り出す松山の技術が巨大な利権を生むことから、開発プロジェクト内に暗闘があることを知った千里は、利美がその渦中に巻き込まれたことを直感する。だが、警察を一歩先んずる犯人は、まず秋田にいる利美の両親を惨殺した。犯人の次なる狙いを読んで、女刑事が東北道を疾走する。
CIA不正規作戦部隊ティーム・ストライカー隊長のオリビア・レッドパワーズが、テロリスト“笛吹きイワン”抹殺の秘命を帯びて来日した。首都・東京ではイワンによる残虐な無差別殺人が連続しており、影なき標的を急追したオリビアは、背後に存在する謀略“ダーク・サマー”を暴き出す。だが、その筋書とは別に新生の叫びをあげた若き野獣がいた。
3歳のとき、何者かにさらわれた過去をもつ人妻・草木礼子が、再び姿を消した。警察で手に余る事件を請け負う元刑事・鳴神一介は、去来正成を相棒に解決に乗り出した。その道すがら出会った超嗅能力犬・頑鉄の「脳嗅」で図らずも少女売春組織を摘発し、さらにもう一人、行方知れずの音無千尋の捜索依頼を受けるのだが-。3歳まで礼子はだれだったのか?礼子を養女にした黒石文蔵、そして突然現われた女「アキラム」の目的は?心鏡流の杖をふりかざし次々と謎に挑んでいく二人は、40余年前、千尋の祖父が関わった旧陸軍の極秘研究と、今なおつきまとう亡霊の正体に目を瞠った。時の陥穽に滑り落ちた人間の闇を描く長編ハード・サスペンス。
4人の人間が同時刻、遠く離れた四つの場所で殺害された-。龍王という名前のついた場所で。被害者の一人、羽島建設社長・羽島裕一は、岡山県“竜王”村へ廃棄物の不法投棄を行なっていた。その竜王村に残された古い伝承に事件のことが予言されていた。それによると、犯人は単独犯で、あと4人が殺されることも暗示されていた。事件究明のなか、浮かび上がる瀬戸大橋の謎…。新たな犠牲者が龍王山で発見されたとき、隻眼の私立探偵・南虎次郎が不可能犯罪に挑む。はたして龍王の意味は?気鋭の乱歩賞作家が挑む、大胆な同時殺害トリック。斬新なアイデアと伝奇が織り成す、書下ろし推理力作。
「逃げなきゃ、あいつから逃げなきゃ!」花屋で働く夏季の前へ突然現われた謎の影。その瞬間から彼女の逃亡生活が始まった。が、彼女自身にも戦慄の秘密が、そして逃れられない宿命が…。一方、神奈川県下を恐怖に陥れる婦女連続殺人が発生。県警刑事部長・小田垣は自ら捜査の指揮をとる。しかし、犯人の巧緻な殺人方法と、不敵な行動に捜査陣は翻弄される。苦悩する小田垣に近づく美女・摩衣子?逆転、逆転、逆転-そして、息を呑むクライマックス。期待の新鋭が挑む、驚愕の新手法。大胆な仕掛けとサスペンスに読者は最後まで震えずに読めるか。
警視庁警備三課のダメ刑事・安田保重は、窓際族を通りこして“ベランダ刑事”と呼ばれていたが…。ある日、過激派がマンションの一室に迫撃砲を設置し、皇居を狙っているという情報が入った。公安の連中は過撃派に面が割れていて近づけない。そこでやむなく、安田に白羽の矢が立った…。ベストセラー作家が描く、痛快無比のアクションミステリー。
北条貴は、警視庁の白バイ乗りだ。非番の日、彼は、恋人で婦人警官の由紀とのドライブの最中、暴走族に襲われた。病院で意識を取り戻した北条は、有紀の死を知らされる。心身ともに憔悴し切っている彼に、身内の者だという奇妙な訪問者があった。その男は、暴走族に復讐する気はないか、と尋ねる…。法手続き抜きで極悪人を制裁する、新シリーズ書下ろし力作。
夫に顧みられることのない、冷えきった結婚生活は、メアリー・ラティマーをすっかり変えてしまった。美しく着飾ることも、楽しく微笑むことも忘れた、魅力のない退屈な女に…。たった一人の娘マーガレットは、幼い頃から寄宿舎に入れられたままだった。やがて、夫の突然の死。なんと彼には愛人がいたのだ。あとに残されたのは、本当の愛を知らずに育った娘と、時代遅れの服をまとった抜け殻のような未亡人。しかし、それは思いもかけない新しい人生の始まりでもあった…。