1992年3月発売
私立探偵スペンサー・ブームに火をつけた代表作『初秋』から十年-十五歳の少年だったポール・ジャコミンはみごとに自立してダンサーになり、ガールフレンドのペイジとの結婚を考えていた。だが、遊び好きの母親パティとの連絡がとれず、困り果てた彼は、父のように慕うスペンサーに母親の行方を捜してほしいと頼む。男がいないと生きていけない彼女は、案の定、リッチ・ボーモントというチンピラと付き合って、さいきん駆け落ちしていた。しかも、その男はギャングの親玉ジョウ・ブロズの息子ジェリイの仲間で、百万ドルをこえる組織の金を持ち逃げし、命を狙われていた。失踪した二人を追って、ギャング組織とスペンサーとのつばぜりあいが始まる。親と子の絆、男と女の永遠の結びつき、探偵の生い立ちを物語る、人気シリーズ第18作。
100年前のフロリダ-無法の辺境地帯。貧しい白人の入植者、黒人逃亡奴隷の子孫、インディアンなどが流れこむ混沌としたこの地に、謎の男エドガー・J・ワトソンはやって来た。マングローブの茂る湿地帯で他の入植者が苦闘している間に、ワトソンは有能な農園主としてたちまち頭角を現わす。しかし、一方では黒い噂が囁かれていた。一見して完壁な紳士である男が、なぜ地の果てまで流れて来て、肌身離さず銃を持ち歩いているのか?もしや、西部の名高いお尋ね者、人殺しのワトソンと同一人物ではないのか?そして、1910年10月24日、最大級のハリケーンが一帯を襲った後の静寂の中、惨劇は起こったのだった-。謎と伝説に満ちた実在の男エドガー・J・ワトソンが、綿密な調査と物語の凄まじいエネルギーによって、神話から蘇る。ナチュラリストとしても高名な著者が、息を呑む迫力のストーリーテリングで描き上げる、自然と人間の叙事詩。
網走刑務所から悪魔が解き放たれた。6年前、兄と共に7人の女性を惨殺し、日本中を震撼させたかつての少年・Kが出所した。兄を射殺した警視庁歌舞伎町分室の辣腕警視、村木正-通称“村正”への復讐に燃えるK=朽木田公明は、旭川でソープランドの社長を殺害。直ちに東京に向かい、魔性の女・相沢知子と出会った。淫蕩で残忍な2人は、凄絶な報復を開始する。執拗かつ容赦のない攻撃に、歌舞伎町分室の刑事までも犠牲者に…。厳重な警戒態勢の中、狂気の魔手は遂に村木を捕えた。警視“村正”最大の危機。
満50歳の誕生日の当日、石井清が愛用のライフル猟銃で謎の死をとげた直後に警視庁嘱託の尾高一幸は盛岡の彼の自宅を訪れた。尾高は遺産相続の件で和歌山を訪れたとき盗難に遭い、その急場を画家仲間と旅行中だった石井たち一行に救われた返礼にやって来たのだった。証言からも自殺の動機が考えられないことから、不審な死に疑問を抱きながら、尾高は秋田の小松茂男宅に向かったが、そこでも異常な事故死の報が待ちうけていた…人間の善意が一瞬にして悪意に暗転、殺意の矢が放たれる恐怖を練達の筆致で描く書下し。
中国は不思議な国だ。現実がフィクションを食ってしまうほどこわい。文字通り食人の記録からはじまって、自然の恐怖、言語の怪談、政治、習俗ととりあげてゆけばきりがない。このような「現実」の記録から、SFを含む未紹介の現代文学までを新しい視点からとりあげ、従来の「中国怪談集」とはガラリと趣向を変えた画期的アンソロジー。
気鋭の女流彫刻家、スーキ・ラベットは彫刻展を開いて全米を回っている。しかし、ツアーの最終地コロラド州ベイルではハプニングの連続だった。まず、空港でスーツケースを間違えられ次には、作品の一部を壊される始末。もうこれ以上、何も起きないようにと願いながらホテルに向かった。ところが、悪いことはこれだけではなかった。ホテルのエレベータの中では、1人の魅力的な男性と一緒になるのだが…。
遥かなる砂漠への憧れ…募る思いをかなえるべく、英国貴族の娘ダイアナ・メイヨは、アフリカ大陸へと旅立った。だが、その地に足を踏み入れたとたん、キャラバン隊はアラブ人の一団に取り囲まれ、彼女の前に1人の男が立ちはだかる。アラブ人の族長、アーメッド・ベン・ハッサン-気性の激しい砂漠の男が、ダイアナの運命をその手に握ろうとしていた。1923年、ルドルフ・ヴァレンチノ主演で映画化され、全世界の女性を虜にした、愛と情熱の物語。
サビーニュ公爵は青春時代に受けた心の傷がもとで人間不信に陥り、今はパリで放蕩生活を送っている。母の公爵未亡人は独り息子の行末と公爵家の存亡を心配し、従兄のロシュシャン枢機卿に相談する。二人は公爵を結婚させようと企て枢機卿は花嫁探しに近接の城を訪ね回った。
なに不自由なく育ったシェイラ・ロジャーズは、ある日突然、すべてを失うことになった。新婚旅行の最中、メキシコ山中で山賊の一団に襲われて夫を殺され、彼らの隠れ家に連れ去られた。一団を統率するラファーガ〈風〉と呼ばれる男は、自分に女がありながらも、シェイラに野性的な情熱を抱く。けんめいに拒みつつも、シェイラはいつしかこの荒々しく力強い男に身も心を委ねたいと願うようになっていた。しかし、それもつかのま、捜索の手は刻々と迫っており、シェイラにもついに決断の時が来た。