1992年8月発売
お陰参りの集団で混雑する伊勢神宮参道に花吹雪のようにお札が舞った。打倒水野越前の不敵な文字を記したお札をまいた一団は、雲切十兵衛ひきいる雲切五人衆であった。捕り手に追われる雲切一党の美女千里のお虎の急場の難を救ってやった若侍は、岸波又四郎であった。次の集合場所に定められた尾張名古屋城の天守閣めざして、お虎と又四郎も名古屋へと急いだ。又四郎・伊織兄弟の幼き日、大坂城の金塊を江戸へ運ぶ宰領役を命じられた岸波半兵衛こそ兄弟の父であったが、宇津谷峠で盗賊団に襲われ、半兵衛は何者かの手で行方不明となった。孤児となった又四郎を養育してくれた恩人丸目洗心斎と名古屋で再会の又四郎は?黄金の行方をめぐって波瀾万丈の物語が展開する時代長編の快作。
第二の“若王子事件”か?総合商社丸和のマニラ支店長が誘拐された。犯人は身代金20億円を要求し、マスコミを極度に警戒して人質の生命も保証しないと脅迫している。事件を知るものはフィリピン大使・内閣官房長官・外務省アジア局長などほんの数名で、身代金引き渡し期限はあと5日しかない。局長の特別密命で部下の本郷義明が人質救出に潜入したが、その当日にはASEAN歴訪中の日本国の首相が何も知らずに現地入りする。人質の幽閉場所も犯人像も皆目不明で、すべては謎のままであった。本郷はみずからを囮にして敵の正体を暴くよりほかに手段はなかった。本郷の怒りの鉄挙がうなる。-バクラス(変造パスポート)コネクションの絡んだ事件の裏の陰謀とその黒幕は。
奇妙な首吊り死体だった。その男は口にティッシュを詰め、コマのように回転していた。新潟県警は不自然さは残るとしながらも、自殺として処理。が、ポケットから発見された〈ピタゴラスの時刻表〉と題された紙片に込められた殺人者の意図には気づかなかった。“新潟・東京・米原”の3点を結ぶ地名と時刻が記されたその紙片こそ、1年後に始まる惨劇の予告だった…。
〈大坂箱〉を譲りたいー。鎌倉で骨董屋を営む剣崎新は、亡父の知人・田村の思いがけない提案に驚いた。豊臣秀吉ゆかりの品といわれる大坂箱は、骨董蒐集家垂涎の的で、本物ならば大変な掘り出し物である。早速剣崎は、越前・武生にある田村の実家を訪ねたが、その直前、田村は何者かに殺され、箱は姿を消していた。嫌疑は剣崎に向けられ、やがて第2の殺人が…。
豪傑アイリーンの演技を、NYで1番有名な劇評家がけなした。アイリーンは相手の頭にパスタをぶちまけ応酬するが、仲直りの一幕もあり、騒ぎは無事収まるかに見えた。ところが、くだんの劇評家が謎の死を遂げたことから、事態は悪化の一途をたどる…。古風だけれどイキのよさでは誰にも負けない、女優ジョスリンの名推理。洒落のめした筆致で贈る、チャーミングな本格ミステリ。
初めはよくある事件に思えた。まだ若い主婦の、突然の失踪。夫が語るあれこれも中流核家族にはいかにもふさわしく感じられたが、調査を始めるや、問題の妻は5年間ひたすら偽りの人生を生きていたことが明らかに…。くされ縁の親友、運動不足の飼い猫、元亭主ー。そんな仲間に囲まれながら、忌わしい過去の悲劇に深入りしていく女探偵ジェリ。私立探偵小説コンテスト受賞作。
今年の夏は暑くなりそうだ。まだ5月の末なのに、海水温が27度もあるのだ。ここはプエルトリコの東400マイル。毎年数多くのハリケーンが誕生する場所である。この知らせを受けた若き気象予報官コナーズは、いやな予感を覚えていた。彼を取材したニューヨークの雑誌記者ジョセフィーンは、仕事に情熱を燃やす彼に強い印象を受けた。しかしそのときには、まさか彼女の家族がハリケーンの犠牲者になろうとは、夢想だにしていなかった。
ジョセフィーンの家族に地獄の苦しみを味わわせたハリケーン〈フェイス〉は、そのあと東の海に去って行くかと思われた。しかし、気象予報官コナーズは、片時も気を緩めなかった。〈フェイス〉が再び針路を西に変えないとも限らない…。そして彼の危惧は的中した。〈フェイス〉は、時速180マイルという驚異的な暴風と、高さ40フィートにもおよぶ高波を伴って、ニューヨークを直撃したのである。迫真のディザスター・ノヴェル登場。
ニューヨークのTV界を舞台にくりひろげられる、とびきり愉快で、ちょっぴり心暖まる物語。『君がそこに…』のトム・レオポルドが再びおくる、ユーモアあふれるラブ・ストーリー。
全学共闘・学費値上げ反対闘争に浮き沈みした、男1人・女2人の青春の無惨さを歌い、現実と回想で時代を刻む。キーワードは「去年マリエンバートで」。書き下ろし長編小説。