1992年9月1日発売
2038年。地球の環境破壊は急速に進んでいた。温室効果によって海面が上昇し、オゾン層の破壊で直射日光を浴びるのは危険な行為となった。人口爆発、緑地の砂漠化、深刻な環境汚染などの問題が山積し、この惑星は一刻の猶予も許さない危機的状況に直面していた。若き天才物理学者アレックス・ラスティグ。彼はマイクロ・ブラックホール生成に取り組んでいた。これが完成すれば、画期的なエネルギー源と 。だが、思わぬ事故が発生。その結果ブラックホールは磁場ケージを離れ、地球の中心にむけて落下してしまった。このままでは、ブラックホールは地球内部の物質を食いつくしてしまう。その結果は、地球の潰滅だ。破局へのプレリュードが響きわたるなかで、アレックスたち科学者チームは母なる地球〈ガイア〉を救うべく、絶望的な戦いに挑んだが…。人気絶頂のデイヴィッド。ブリンが、最新の科学情報とエコロジー的視点を軸にすえ、かつてない壮大なスケールと迫真の筆致で描きあげた近未来スペクタクル巨篇。
崖っぷちを飛びこえる力がほしいと、何度願ったか知れない。始まりは、酔っ払いの老人が行方不明となったことだった。それと前後して、いろいろなことが立て続けに起こった。近所の愛犬家の孤独な老婦人が怪我で入院し、その間に残った犬たちがすべて処分されたこと。弁護士である別れた夫との再開。失踪した老人の昔の職場であるエンジン工場にまつわる不正疑惑。やがて老人は、シカゴ南部の運河で水死体となって見つかり、そうした出来事がすべて一つの方向に収斂していく。しかし、わたしを憂鬱にさせたのはそればかりではなかった。尾行をまくため車を交換してもらった親友の医者ロティが暴漢に襲われ、重傷を負った。それがきっかけとなり、女同士の友情の絆にほころびが生じはじめたのだ。なけなしの年金で暮らす老人たち。彼らを食い物にしようとする企業の犯罪的行為。隣人や親友に見放され、孤独の中で闘う39歳となったシカゴの女探偵。V・Iシリーズの魅力のすべてをぶち込んだ全米ベストセラーの最新作。
ハリウッドの成功者として、富も名声も手にいれた映画監督、ダニー・デニスン。人目をひかずにおかない容貌に、少年のような魅力をたたえた彼には、なにひとつ不足はないように思えた。しかし、彼には誰にも明かしていない過去があった。実は彼にはナチの強制収容所で悲惨な体験をしたユダヤ人だったのだ。名前を変え、新しい人生を生きる彼は、いまわしい記憶を完全に消しさったと思っていた-。ひとりの美しい娘ルーバに出会い、官能的な体験をするまでは。ポーランドの貧しい家庭に生まれ、幼いころから身を売って生きていきたルーバはセックスを自由に楽しむことを知っていた。その素直さがダニーのまとっていた虚飾の鎧をゆさぶりはじめる。同時にダニーは奔放すぎるルーバの生き方にとまどいをおぼえるのだが…。数々の名演で知られるハリウッドの大スター、カーク・ダグラスが、映画界を舞台に、いつわりの人生を送る男と、愛を素直に表現する女のふれあいをセクシャルかつ大胆に描き、シドニイ・シェルドンを越えると絶賛されたベストセラー・ロマン。
終戦後のベルリン。世間知らずの英国人青年技師レナードは、戦争の傷跡がまだなまなましいこの街に足を踏み入れた時、自分の人生が大きく変わろうとしているのを感じた。だが、行く手に待ち受ける恐怖までは予測できなかった。レナードが来たのは、英米情報部の対ソ連共同作戦、トンネルを掘って東側基地の通信を盗聴する〈黄金作戦〉に参加するためだったが、美しいドイツ人女性マリアと出会い、うぶなレナードは激しい恋におちる-運命を知らずに。注目の作家の、エスピオナージュ仕立ての話題作。
陳友諒、そして私塩密売人出身で平江(蘇州)の富を手中におさめた張士誠-である。元朝がすでに形骸化し、その権威が地に堕ちたいま、長江を制した者が中華の覇者となることは、誰の目にも明らかであった。朱軍幕下には同郷・淮西出身の猛者がひしめいていたが、智謀の将と呼べるのは、わずかに李善長と憑国用のみであった。その憑国用の強い懲慂により、朱元璋は三顧の礼を尽して劉基を帷幕に迎えいれる。漢の張良、蜀の諸葛孔明にも比される天才軍師・劉基を得た朱元璋は、彼の言に従い、西の宿敵・陳友諒を討つべく、戦いに臨む。
遠山謙一は、神戸を本拠地に直系団体110組、構成員約1万2千人という膨大な組織を誇る2代目福原組の直系組長で、3代目を背負って立つと見られていた。彼は経済力の強い組織こそが抗争に生きぬくと信じ、多くの企業舎弟を持つ悪だ。遠山の右腕の企業舎弟小原勇治のシノギは巧妙で、企業倒産整理、政治家の利権がらみの事件物件から企業合併、一流商社への食い込みなどで、巨額の黒いアングラマネーを手中にする。その資金力をバックに、遠山は関東への進出を企てるが、背後に反対勢力の巻き返しが迫り…。
春4月、桜花咲き乱れる魔性の季節が再び廻りきた。「花咲村」の事件からちょうど1年を数えるその日、多くの観光客で賑わう京都天竜寺の境内で白髪の老紳士が刺殺された。「こう…朝比奈君に伝えてくれ…決して…信じては…いけない…と」-。推理作家・朝比奈耕作のよき相談役であった尾車泰之教授の最期の言葉だった…。4つの「惨劇」をつなぐ糸は断たれてしまったのか。朝比奈をうちのめす、事件の真相とは?著者渾身の5ケ月連続書下し「惨劇の村」シリーズ。有終の美を飾る堂々の完結篇。
警視庁捜査一課の荒竹十三は、大学の後輩村松から、山仲間の野中恒利が北アルプス・槍ヶ岳から北穂高岳への縦走ルートで遭難したことを知らされた。折から、現場に向かう準備にあわただしい留守宅に、“野中は帰宅したか”という不審な電話がはいる。数日後、今度は野中の友人の他殺体が横尾谷で発見されたのだ。二つの事件を結ぶものは?荒竹・白鳥の名物コンビの捜査が始った。長篇山岳ミステリー。
硫黄島沖で、アメリカ原子力空母「カール・ヴィンソン」に、急浮上をかけたソ連原潜「V・K・ブリュッヘル」が激突した。原潜は沈没、空母はメルトダウンの危機を孕んで横須賀ドックへと向かった。日本政府は海上自衛隊の最新鋭潜水艦「わかつき」に、空母の寄港阻止命令を下す。好機に乗じ空母撃沈を狙うソ連艦隊と米艦隊の攻防の陰、「わかつき」は静かに空母に近づきつつあった。海洋戦略サスペンス。
十七世紀、明朝末の中国。すでに朝は政事に節なく、異民族・満撻子の侵入はほしいまま。野には土匪あふれて、うちつづく凶作に貧窮した民心は、朱家明朝を離れた。反官蜂起した義軍十三家。なかに軍律厳しく、民衆救済を至高の軍紀とした魁雄一人、名を李自成・闖王。だが朝廷軍の各個撃破策に、闖王、孤塁を守るも、ついに潼関南原に壊滅的敗北を喫した。三国志に並ぶ壮大なスケールで描く中国歴史巨篇完訳。
官軍の重囲を、万死に一生を得て突破した闖王軍は、天険の地・商洛山中に兵馬を休めた。かつて十万を誇った軍勢もすでに数百騎。だが民心はすでに朝廷を離れたと信じる李自成は、食糧の欠乏と闘いながら練兵を重ねた。朝廷に投降した義軍に再蜂起の檄を飛ばした李闖王は、合従連衡の秘策を胸に、約束の再挙の日を待った…。中国近世史に燦然と輝く英雄を活写する歴史巨篇完結篇。
狂人たちが集うホテルの1室を舞台に4人の登場人物が繰り広げる言葉の極限状況。やがて明らかにされる放浪の民の悲劇、18歳の少女の内に秘められた凶暴な野性の目覚め…。「『破壊しに』には10通りの読みかたがある」とデュラス自身が語るように、本書は小説とも戯曲とも映像作品ともつかぬ、一種異様な〓@50FCりに満ちた破壊と無秩序への呼びかけである。