1993年10月発売
狂人と健常者の狭間に身を置き、他者を求めながらも得られずに自ら死を選ぶ男の狂気を内側から描いて、現代人の意識に通底する絶対的な孤絶を表出し、読売文学賞を受賞した著者の最初で最後の純文学長篇小説。
冬の北海道から「花まつりを見に行きます」という絵ハガキを遺して死んだ姉。上着のポケットには一匹の蜂の死骸が…。姉は何を伝えたかったのか?姉の死に不審を抱いた岡田美沙緒は、その足跡をたどって襟裳岬から広尾、帯広へと真相を探る旅に出た。哀切な愛の行方を追うトラベル・ミステリーの傑作。
アニーという名の人形に似た顔の美女たちが、何者かに次々と殺されていった。犯人はアニーに死化粧を施し、着せ替え人形のようにドレスを着せて犯していた。犯人を追う刑事たちの行く手にデート商法の詐欺師が浮かんだが、だまされた美人教師は最後の被害者になろうとしていた。現代の狂気に迫る長編推理。
星暦500年頃、大和王国の天空に妖しい炎を燃やす彗惑星が出現。やがて大地が不気味に鳴動しはじめ、王国は血で血を洗う争乱の大地と化す。それは、王族のたった一人の生き残り星霊皇子の苦難の旅の幕開きでもあった。正史には記録されていない幻の王国の興亡を雄大な筆致で描く愛と冒険の古代史ロマン。
日本は独力で立たねばならないー。狂信的国粋派の超大物フィクサーが仕掛けた世界金融システム破壊プロジェクト。それは日米最終戦争への宣戦布告だった。巨大証券を舞台にした闇の勢力にただ一人立ち向かう私立探偵が、日米同盟半世紀の暗部に見たものは。欧米各国で絶賛された衝撃のリアルノベル。
全国高校選手権が終わったある日、Jリーグから一本の電話が…。大学サッカー部に進むか、Jリーグをとるか。一方、日系3世の強力なライバルも出現して…。Jリーガー気分と迫力が味わえる本格サッカー・ノベルス。
アメリカの片田舎で自動車整備工場を営む魔法使いトーキング・マン。ひとり娘のクリスタルと気ままな生活を送っている。ところがある日、見知らぬ女に殺されかけたトーキング・マンはお客の大学生ウィリアムズから車を奪い、謎の失踪を遂げてしまった。残された二人はおんぼろクライスラーを駆って、長い長い捜索の旅に出るのだが…。北米大陸から時の果てまで続く冒険旅行をポップなタッチで描いたSFロード・ノヴェル。
日本企業ナカモトがロサンジェルスに建てた超高層ビルで、美人モデルが殺された。緊急連絡をうけた渉外担当官のスミス警部補は、日本人絡みの事件に豊富な経験を持つコナー警部とともに現場へ急行する。しかし、ナカモトの現場責任者イシグロは、なぜか強硬に捜査を拒む。しかも、犯行時の現場が映っているはずの警備用ビデオテープは、何者かに持ち去られていたー。センセーショナルな反響を呼ぶ日米経済摩擦ミステリ。
崩壊した清国の皇族粛親王の第十四王女ケンシは七歳の時、父と親交の深かった大陸浪人川島浪速の養女となり、芳子と名付けられた。中国から日本へと渡った芳子は男のように育てられたが、十七歳の時、養父浪速に犯され激しい衝撃を受ける。その後結婚にも失敗した芳子は上海でダンサーとなり、日本軍に情報を提供するようになる。“東洋のマタハリ”と呼ばれた女スパイ・川島芳子の波乱に満ちた生涯。
米政府の特命工作員が緊急事態を打電してきた。それはコロンビアの小農村全滅にまつわる信じがたい報告だった。「まさか、そんなはずはない!」という言葉を残し、工作員は息絶えた。この謎のメッセージを追い、一人の大学教授が南米に旅立つ。CIA工作員として、将来を嘱望されていたこの人物の前に立ちはだかったのは、人類を飢餓状態に追い込むことにより「地球支配」をたくらむ、超巨大組織の存在であった。
郷里の街で婦女暴行をやらかした中川は、流れ流れて都会の片隅でバーテンの職に就いた。たまたま店に遊びに来た人妻の和歌が、そんな中川に色目をつかう。亭主だけではもの足りない和歌は若い男の肉体に溺れ、中川も彼女の成熟した肢体と、そのつど渡してくれる小遣い目当てに爛れた関係を繰り返す。しかし些細な諍いから中川は殺意を覚え気がついた時は和歌の首を。犯罪小説の鬼才が放つオリジナル傑作。