1993年10月発売
偉大なるフロベールの故郷ルーアンを訪ねた「僕」は、博物館で、彼が『純な心』を執筆する際に常に手元に置いていた鸚鵡の剥製を見つける。だがのちに訪れたフロベール邸のはなれには、もう一羽の鸚鵡が鎮座していた。いったい本物はどちら?フロベールという作家にさまざまな角度から覗き眼鏡をあて、文学的にして愉快な小説。
第一次大戦下、英国で、アフリカで、苛酷な運命を生きぬいた男と女たち-。そこには、喜びと哀しみに満ちた愛があった。夢をつむいでゆくはずだった者たちの人生は戦いの無意味さに翻弄され、やがて真夏のアイスクリームのように溶け去っていく…。人生のはかなさを、詩情とユーモアで謳いあげる、ジョン・ルウェリン・リース記念賞の話題作。
伝説に聞く古代超文明の、唯一の継承者とされる有翼人エルディール。彼はラパロの村はずれにある城で、ひとりひっそりと暮らしていた。しかしそんな彼をそそのかし、古代文明の力を手に入れ世界の覇者となろうとする一派があらわれた。闇の一族、グルーダたちである。首尾よく城へと忍び込んだ彼らであったが…。イース4本編では語られることのない、驚異の物語が開幕する。
ロンドン市内の「ホームズの名所」新旧様変わりの報告から、英国南部にドイルの隠れ家やその家族の墓を探し歩く旅…。前回のシャーロッキアンたちが再集合して、ウィリアム・テルに会い、熊とたわむれ、戦車にも乗ったスイス建国700周年記念のホームズ・ツアーの行程…。ニューヨークでホームズの誕生日を祝うB・S・Iのディナーなど、ますます興味が広がる、楽しい旅日記の第二弾。
勇と滝子の前に再び高秋が現れた。学生時代、司法試験に敗れた勇は滝子との愛を得、試験に勝利した高秋は愛に敗北していた。滝子をめぐる三角形は微妙な緊張感を孕みつつ、20年という歳月を越えて再び揺らぎはじめた。海の底深く美しい光景の中での激しく狂おしい慕情の錯綜は、やがて、自壊の非劇へと転調してゆく。恋愛の生む全ての敬虔な悲しみと救済と贖罪を描く渾身の恋愛長編。
見合い結婚した津田とお延の夫婦と、津田のかつての恋人清子の三角関係を軸に、エゴイズムのゆくすえを追究した夏目漱石の『明暗』。漱石の死によって未完のまま閉じられた近代小説の最高傑作が74年ぶりに書き継がれた。東京を遠く離れた温泉場で二人きり、久々に対面を果たした津田と清子はどうなるのか?漱石の文体そのままに描く話題の続編、遂に刊行。芸術選奨新人賞受賞。
離婚するのかしないのか、夫と話し合う喫茶店。洋子と背中合わせの席から「馬鹿だな」という声が聞こえてきた。若い娘と向かい合って座る灰色のコートの背中。淋しそうなその肩を、洋子が忘れるはずもなかった。意地悪な偶然に弄ばれ、かつての恋人の述懐を背中越しに聞かされる人妻の緊張を描く表題作を始め、ふとしたきっかけで日常の裏側を垣間見る女たちを描く21の短編。
アナコフ大佐には野心があった。ハインドを改造した最新鋭ヘリ・ヘルハウンドで、特別部隊を編成しようというのだ。彼にとって目の上のこぶともいうべき存在は、かつてそのヘルハウンドを撃墜した、天才的ヘリ・パイロット、デヴィッド・プロス。プロスとその愛機リンクスを抹殺しなければ、アナコフの将来はない。両者の決戦の時は刻々と迫っていた…。迫真の軍事サスペンス。
美貌の広告会社副社長、フレーム・ベネットと危険な魅力を持つやり手ディベロッパー、チャンス・スチュアートは会った瞬間に激しい恋に陥ちた。ところが皮肉なことに、チャンスを憎む伯母のハッティが彼に遺産を譲らなくてすむように探しあてた相続人がフレームだったのだ。彼が進めているプロジェクトにはその遺産がぜひとも必要だったー。愛と憎悪、打算と欲望が渦巻くロマンス。
チャンスに利用されたと思い込んだフレームは深く傷つき、復讐の炎を燃やす。以前から言い寄っていたデパート・オーナーのマルコムに身体を許し、チャンスの計画を潰すための資金を引き出すことさえ辞さなかった。その頃から彼女の周囲に不穏な影がちらつき始めた。繰り返し脅迫電話がかかり、車が追突され、銃弾が撃ち込まれた。それは果してチャンスの仕業なのだろうか。