1993年6月発売
六年前、妻のイザヘルを射殺した容疑で起訴されたデヴィッド・バーニーは、裁判で無罪の評決を受けた。だが、イザベルの別れた夫は、デヴィッドが莫大な遺産をめあてに殺人を犯したと信じて疑わず、わたしに事件の再調査を依頼してきた。当時、デヴィッドとイザベルは不仲で別居中だったうえ、彼は事件の数カ月前に、殺人に使われたものと同じ型の銃を購入していたという。さらにデヴィッドは裁判の直後、犯行を匂わす発言を知人にもらしていたらしい。新たな手がかりを求め、わたしは事件を探り始めるが、デヴィッドの有罪を裏付ける事実はひとつも見つからない。やはり彼は無実なのか?一カ月後には、法律で定められた出訴期限が切れ、二度と彼を裁判にかけることはできなくなってしまう。あせりを感じ始めたわたしをよそに、タイムリミットは刻々と迫る…。南カリフォルニアの女探偵キンジーがかつてない試練に立ち向かう、人気爆発の全米ベストセラー・シリーズ最新作。
ミネアポリスで二人の男が惨殺された。ひとりは、インディアン居住区でアパートを経営する高利貸しの男。もうひとりは、社会復帰訓練所の指導官だった。そして今度は、ニューヨークの福祉局の局長が殺された。被害者は皆、黒曜石のナイフで喉を切り裂かれていた。そして、一様にインディアンから憎まれていた。ミネアポリス市警は、特別チームを組み捜査を開始、ダヴンポート警部補もその一員に加わった。福祉局局長殺しの犯人を追ってきたニューヨーク市警の女性警部補リリーと共に、彼は捜査を進めていく。だが、その間にも新たな犠牲者が生まれていった。やがて、ダヴンポートは連続殺人の裏に隠された真の目的に気づく。が、彼は知らなかった-。リリーと自分の身に危険が忍び寄っていることを。『サディスティック・キラー』につづき、ミネアポリス市警の一匹狼、ダヴンポート警部補が再び登場。注目のベストセラー・シリーズ第二弾。
宋の都・開封で、包希仁は白載星と名のる少年とともに双剣舞の花形芸人の花娘こと陶宝春を暴漢から救った。が、その夜、彼女の祖父・陶老は「陶」ということばを残して遺体とともに忽然と消えた。さらに花娘の双剣の皮鞘に隠されていた紙片には、陶淵明の「桃花源記」が書かれていた。桃の花につつまれた仙境の物語である。白載星は実は今上帝の子で、劉皇后と宦官一派の陰謀で母の李妃は追放され、刺客の殷玉堂から命を狙われていた。桃花源の謎と母を捜す三人の旅がはじまったが…。華麗な筆が舞う武侠冒険の第二弾。
昭和18年1月、マッカーサー元帥が率いる南西太平洋方面連合軍によってポート・モレスビーから叩き出された第35旅団は、ブナを目指して、撤退を開始した。豪州方面艦隊司令長官・南雲忠一中将から「生きて還れ!」と海中へ突き落された松尾次郎少尉もこの中にいた。オーストラリア軍の追撃と米軍の地上攻撃にさらされ、行く手には標高数千メートルのオーエンスタンレー山脈が阻んでいた。彼らの食料空輸のために零戦隊を率いた西沢広義は、敵編隊を発見し舌打ちした。「新型機か?こいつは強敵だ」-。渾身の第3弾。
継父が無理強いする結婚話から逃げるため、リーラは伯母を頼って海を越え、オランダに渡った。ところが、愛する伯母には会えたものの伯母は手術しなければ余命いくばくもない体のうえ、手術には莫大な費用が必要だった。そんな折、リーラの絵の才能に目をつけた画商が金になるという話を持ち込んできた。有名画家の絵を模写し、本物と称してとあるイギリス侯爵に渡せばいい、というのだが…。
海難事故で両親を失い、叔父の暴力に怯える毎日を送っていたシタ。インドへの船上、とうとう死を決意したシタは深夜の甲板に立った。そんな彼女の前に現れたひとりの男。ターバンを巻きインド人を装ったその男と話すうち、シタは次第に生きる望みを取り戻していく。
すべてを失い、失意の中で亡くなったロックボーン卿。残されたマリスタら三姉妹は、一家を追いつめたスタンブルック伯爵を憎みながら暮らしていた。そこへ伯爵から膨大な家賃の督促状が届く。途方に暮れたマリスタたちは、屈辱に耐え、かつての自分たちの城に、伯爵を訪ねることを決意する。
旅の途中、盗賊の襲撃に遭いイングランドへ帰るすべを失ったアテーリア。とりあえず身を寄せた教会で、アテーリアはある伯爵夫人に出会った。夫人は旅費はだすから、娘をヨークシャーにいる父親のもとへ送り届けてほしいという。願ってもない話に、アテーリアはさっそく少女と旅立つが…。
1944年6月5日、史上最大の作戦が始まるその前日、ベルリンの戦火を逃れてクリスチーナはボヘミア・モラビア保護領にあるドイツ軍の基地へ戻ってきた。翌日、基地の司令官である父親は、娘の誕生日のためにバレエの先生を求める。ゲットーから連れてこられたアンナ・バロンタイはハンガリー王立バレエのプリマバレリーナだった。祖国の崩壊を感じながらも頑強にそれを受け受れようとしないクリスチーナと、親衛隊員ワイズミュラーとの絶望的な愛、副官の妻モニカのワイズミュラーに対する爛れた恋、そしてユダヤ娘アンナの性と死…。作者の体験を踏まえた異国の民への愛と死の鎮魂歌。
後漢末、「魔」が目覚めた。この世のものならぬ魑魅魍魎が人界の動乱を求めて騒ぎだしたのだ。そのころ、北方のはずれに剛勇でならした若者がいた。後に「人中の呂布」として恐れられた武将の若き日の姿である。やがて呂布はその力を足がかりに、少しずつ中央へと近づいていく。しかし、それには常に影がまとわりついていた。彼の行くところ、必ず動乱が起こり、人々に不幸がもたらされるのだ。呂布自身も知らぬことではあったが、それこそ彼を狙う「魔」の導きであった。漢王朝は今、波乱の時代を迎えようとしている。裏切り者の代名詞、黒い英雄呂布を描く、「三国志武将列伝」第二弾、ここに登場。