1993年7月発売
時は未来。限定核戦争後の米国で一人の青年が私立探偵の看板を掲げた。待望の依頼人が現われたのは、うすら寒い十二月のある日。持ちこまれたのはとてつもなく風変わりな内容の相談だった。自らをさる生物学者のクローンと信じる依頼人は、その生物学上の父親を捜し出したいというのだ…。夢と現実の狭間に揺れる若者の葛藤、そして成長。胸がつまる青春ハードボイルドの逸品。
ショーツの猿轡をかまされ、パンストで手脚をベッドに縛られ、破爪の恐怖に怯える双子の姉妹の妹・有希。抵抗なすすべなく、男たちに処女の花弁を辱められ、菊の蕾を穿たれ、白濁の樹液を顔面に放たれるー。姉・亜希とともに双子の姉妹が晒された凌辱。それは、鏡地獄のように永遠に続くのか…。
グリム童話は読み書きのできない民衆の語りを収集したもの、というのはどこまで真実か?真の語り手はだれだったのか?グリム兄弟はなぜ膨大な書きかえをしたのか?確かな事実を手がかりにグリム童話をめぐる謎を解き明かし、根強いグリム崇拝を根底から解体する。
敗れて当然。勝てたら奇蹟。敗れたら日本は植民地の運命。地上最強のロシア陸軍と対決した貧乏日本の陸軍は「命知らずの将兵の勇」と「神謀奇略の児玉源太郎」に賭ける。生きた空もない明治政府。ロシア軍司令官を手玉に取る源太郎-。神謀は「神の心」に宿り、奇略は「異端の心」に宿る。
「マミイィ!」助けを求める叫びが、惑星アルタイル中に響きわたった。これほどの思念を送れるとは、たいへんな超常能力の持ち主に違いない。惑星政府は発信者の捜索に全力をあげた。そうして救出されたのは、大規模な地滑りで壊滅した鉱山基地でただひとり生き残った少女ローワンだった。卓抜した才能に恵まれた彼女が、超常能力者として、女性として成長してゆくさまを、人気女性作家が情熱あふれる筆致で描く意欲作。
限定核戦争と細菌戦のために壊滅状態になった近未来のアメリカ。すべての大都市を破壊して、あらゆる州を荒れ地に変えた災厄にもかかわらず、人々は生き延びていた。金や生命を狙う暴徒や浮浪者が徘徊する土地を抜け、数千キロ彼方のユタをめざす旅人たちと一匹狼のティーグを描く「西部」、車椅子の教師と不良生徒たちの物語「辺境」など、コミュニティの中心から離れ“辺境”でたくましく生きる人々を描く傑作連作集。
父の形見の老朽船で海運業を営むポールは、英国議会の議員から驚くべき事実を告げられた。コンビュータ技師である兄のチャーリーが、政府の極秘プログラムを持って失踪したというのだ。船の修理費が必要なポールは、絶縁していた兄の捜索を不本意ながらも請け負う。だが彼は、やがて自分が世界の行方を左右する熾烈な争奪戦を展開することになろうとは、知るよしもなかった。冒険サスペンスの名手が新境地に挑む野心作。
ヴェトナム戦争が泥沼の様相を呈していた1969年。ハンバーガー・ヒルにほど近いエヴァンス基地に、一人の若者が着任した。彼の名はローク准尉。ヒュイ輸送ヘリコプターのパイロットだった。戦意に燃えてヴェトナムにやってきた彼は、その翌日から戦場の苛酷な現実を見る。小さな機関銃二梃しかもたないヘリで敵の砲火のただなかに降り立つ危険な輸送任務。朝まだきの発進の胸の高鳴り。そして戦友の無意味な死。やがてロークは、前線の実情を理解しない軍上層部と、その意を体した副中隊長のクレーブル大尉の卑劣さに怒りを募らせていく。その怒りは、クレーブルが臆病さから仲間を見殺しにしたとき、ついに頂点に達した。脆弱なヘリコプターを駆り、自らの腕だけを頼りに危険な任務を遂行する一匹狼パイロットの冒険と成長を圧倒的な迫力で描破、出版前から大きな話題を呼んだ航空戦争小説の白眉。
ロークはふたたびヴェトナムに帰ってきた。今度はカイオワ偵察へリのパイロットとして、ヴェトコンや北ヴェトナム正規軍を駆りだすのが任務だ。一方、クレーブルも自分の軍歴を守るため、ヴェトナムに戻ってきていた。アメリカ軍の撤退が始まり、厭戦ムードの広まるなかで、ロークは戦場で失なったものを取れ戻すためにヘリを飛ばす。やがて、そんな彼の前に、北ヴェトナム軍の大規模な前進基地が現われた。「ヘリコプターの戦争」と呼ばれたヴェトナム戦争の様相を、自らパイロットとして従軍した著者が、手に汗握る飛行シーンをまじえて描く戦争巨篇。
精神科医のデイヴィッド・エイバハートと牧師の娘レイニーは、結婚してシカゴで新しい生活をスタートさせた。だが、三番目の子供ランドールが自閉症であることがわかったとき、エイバハート家の試練が始まった。デイヴィッドはランドールを施設に入れることが本人と家族のためと考えたが、レイニーは自分の手で育てることが母親の使命だと主張して譲らなかった。そして、レイニーはデイヴィッドの反対を押し切って、さらに三人の子供を生む。このことが原因で二人の間は気まずくなっていった。いっぽう子供たちは、ランドールの存在や両親の不和に揺れ動きながらもそれぞれ個性的に成長、やがて波乱の青春時代へと突入していく。家族の絆とは何のなか?1950年代から70年代終わりまで、ヴェトナム戦争を経て激しく変わっていくアメリカを背景に、生命と家族の意味をあらたに問い直す感動のベストセラー。
本書は、あらゆる女の物語、母を失ったあらゆる娘の物語、時とともに力が衰えていくあらゆる女家長の物語、がむしゃらに人生を突っ走ってきたが、ある時ふと手綱を緩めてしまうあらゆる寡婦の物語である。