1993年7月発売
捕縛された隠れ切支丹が囁いた“ガラシア・オラショ”とは何を意味するのか。天童・天草四郎との関係は?細川藩が放った男女の密偵が切支丹一揆の真っ只中に潜入するが…。島原の乱を斬新な発想で描く、書下し長編時代小説。
E・M・フォースターが死んだ日に霊感を受けた女性作家、女家主の事故死した子供の幽霊を見てしまった男、母が亡くなって後ひそひそと先祖の話し声が聞こえる隣部屋。大作『ポゼッション』でブッカー賞を受けた英国きっての知性派女流の短篇には、いかにも英国的な、繊細で不気味な雰囲気が滞う。
14年前に失踪した美人モデル、ルビー・リーの白骨死体がシアトル市郊外で発見された。当時、彼女には日本人の婚約者・小渕泰明がおり、同市警捜査官が来日して事情聴収したが手掛りナシ。その小渕も7年前に自殺…。が、同市警は再度、警察庁に捜査協力を要請、兵庫県警の警部補・馬部晋作に白羽の矢が。事件概要を頭に叩き込み、再捜査にのりだした馬部は小渕の自殺に大きな疑問を抱く。他殺では。発奮する馬部の前にシアトルから金髪のグラマー捜査官が来日して-。
四方辰彦-かつてはスーパーコップと呼ばれた男。傭兵上がりのタフガイだけど、なぜか今じゃ、新宿二丁目の『上海』なんてバーの二階で、美形のニューハーフ明夫のボディガード兼、便利屋もどきの探偵稼業。ところが、とある浮気調査の依頼が、とんでもない地獄の魍魎たちを登場させてしまう…。
時は未来。限定核戦争後の米国で一人の青年が私立探偵の看板を掲げた。待望の依頼人が現われたのは、うすら寒い十二月のある日。持ちこまれたのはとてつもなく風変わりな内容の相談だった。自らをさる生物学者のクローンと信じる依頼人は、その生物学上の父親を捜し出したいというのだ…。夢と現実の狭間に揺れる若者の葛藤、そして成長。胸がつまる青春ハードボイルドの逸品。
ショーツの猿轡をかまされ、パンストで手脚をベッドに縛られ、破爪の恐怖に怯える双子の姉妹の妹・有希。抵抗なすすべなく、男たちに処女の花弁を辱められ、菊の蕾を穿たれ、白濁の樹液を顔面に放たれるー。姉・亜希とともに双子の姉妹が晒された凌辱。それは、鏡地獄のように永遠に続くのか…。
グリム童話は読み書きのできない民衆の語りを収集したもの、というのはどこまで真実か?真の語り手はだれだったのか?グリム兄弟はなぜ膨大な書きかえをしたのか?確かな事実を手がかりにグリム童話をめぐる謎を解き明かし、根強いグリム崇拝を根底から解体する。
敗れて当然。勝てたら奇蹟。敗れたら日本は植民地の運命。地上最強のロシア陸軍と対決した貧乏日本の陸軍は「命知らずの将兵の勇」と「神謀奇略の児玉源太郎」に賭ける。生きた空もない明治政府。ロシア軍司令官を手玉に取る源太郎-。神謀は「神の心」に宿り、奇略は「異端の心」に宿る。
「マミイィ!」助けを求める叫びが、惑星アルタイル中に響きわたった。これほどの思念を送れるとは、たいへんな超常能力の持ち主に違いない。惑星政府は発信者の捜索に全力をあげた。そうして救出されたのは、大規模な地滑りで壊滅した鉱山基地でただひとり生き残った少女ローワンだった。卓抜した才能に恵まれた彼女が、超常能力者として、女性として成長してゆくさまを、人気女性作家が情熱あふれる筆致で描く意欲作。
限定核戦争と細菌戦のために壊滅状態になった近未来のアメリカ。すべての大都市を破壊して、あらゆる州を荒れ地に変えた災厄にもかかわらず、人々は生き延びていた。金や生命を狙う暴徒や浮浪者が徘徊する土地を抜け、数千キロ彼方のユタをめざす旅人たちと一匹狼のティーグを描く「西部」、車椅子の教師と不良生徒たちの物語「辺境」など、コミュニティの中心から離れ“辺境”でたくましく生きる人々を描く傑作連作集。