1993年発売
ジョージ王朝様式の家々が緑の丘のあいだに優美に波打つ伝統の町、バース。その近郊の湖に女の全裸死体が浮かんだ。昔気質のピーター・ダイヤモンド警視はこれこそおれの事件だと意気込んだが、有力な情報もなく、捜査は難航する。三週間後、妻の失踪を知ったというバース大学のグレゴリー・ジャックマン教授が名乗り出てきた。しかし、ダイヤモンド警視は、やがてその強引な捜査がもとで辞職に追いこまれてしまう。英国ミステリ界の鬼才が初めて現代のフーダニットに挑戦し、無骨な刑事の捜査ぶりを情趣豊かに綴る、ファン待望の大作。アンソニー賞最優秀長篇賞受賞。
上原厚子は愕然とした。それは27年間の人生で初めての衝撃だった。虎の子の貯金2000万円が押し入れから消えていたのだ。盗んだのは木野昌広。証券会社のセールスマン、彼女の財テクの相談役だった。が、やっと追いついめた木野はすでにカネは持っていなかった。そして揉み合っているうちに彼を殺してしまった厚子。その厚子の手に意外や2000万が。
慶長5年、豊臣・徳川「天下わけ目の関ケ原」は東軍・徳川に凱歌があがった。豊臣の将・石田三成は加茂の河原に首をさらされ、小西行長はしかし、京の遊廓に美女を求めたー。何故か?敗けても夢は咲かせたいのだ。この戦いは、数多の豪傑・怪士を渦にまきこんだ。その「豪傑繚乱」の道なき道を岩見重太郎は辿った…。茶々を偲びつつ。
美女伏姫の体から飛びちった八つの霊玉。その化身、智勇兼備の犬塚信乃、化け猫退治の犬飼現八ら八人の犬士。行く手をはばむ希代の悪人、毒婦たち-。滝沢馬琴の原作を時代小説の名手が平明な現代語によみがえらせた見事な絵草紙。総挿画五十一葉入。
妻を殺そう。そう思いたってからというもの、ヘンリーの頭の中は、太った醜悪な妻をどうやったら始末できるかということで、いっぱいだった。絞め殺す。崖からつきおとす?それとも、自動車に細工して事故に見せかける。いや、毒殺がいい。毒殺こそ、わが大英帝国の伝統と誇りにつちかわれてきた、秘めやかで美的な殺人方法だ。これでいくしかない。手段が決まると、ヘンリーはさっそく下調べをはじめ、タリウムという無味無臭の毒薬があるのを知った。これを料理にふりかければ、健康食品しか食べない妻のエリナーも、なんの疑いももたずに口にするだろう。だが、ヘンリーの細やかな気配りと努力にもかかわらず、妻はそう簡単に毒殺させてはくれなかった。のどかな郊外住宅地を舞台に、さえない中年男が妻をこの世から抹殺すべく、あの手この手の大奮闘をくりひろげる、ブラック・ユーモアたっぷりの英国ミステリ。