1993年発売
豊臣秀吉の弟秀長は常に脇役に徹したまれにみる有能な補佐役であった。激動の戦国時代にあって天下人にのし上がる秀吉を支えた男の生涯を描いた異色の歴史長篇。(小林陽太郎)
足軽から身を起こした秀吉は父祖伝来の領地もなければ親族も少く、将から兵にいたるまでその人材に乏しくていつも寄合所帯だった。秀長は人柄もよく、様々な実務に抜群の才があつたばかりではなく、いくさでも負けを知らなかった。兄の大胆さを補うに弟の手堅さ、秀吉の成功はこの人なくしてはありえなかった。
夏休みの最後の数日を長野県下の親戚で過ごした矢車ユカは、クルマで東京へ帰る途中の軽井沢で、一人の女性を轢死させる寸前に危うく難を逃がれ、この女性を追っかけて白樺林の中から姿をみせたサングラスの男を、その特技の護身術でその場に叩きつけていた。京北女子大学二回生のユカは、鬼警部で知られた元警視庁刑事の祖父との二人暮らしで、幼少のころよりその祖父から指導を受けていたことで、護身術には特に長けたものがある。そんな矢車ユカが、この偶然の出会いが奇縁で、親友横芝真奈の兄でプレイボーイを自任する陽一にまつわる連続殺人事件の渦中にまき込まれることになって…。-キュートな女子大生探偵と、元鬼警部の祖父の名コンビで難事件に挑む好評シリーズ作。
退屈であるはずの日常生活にひそむグロテスクさと、グロテスクなはずの非現実の退屈さがせめぎ合う、〈現実〉という血まみれの部屋-。夫婦間の秘密、葛藤、すれちがいをさらけだす、アトウッドの短篇集。
二十三も年上の夫に満たされない日々をすごす二十七歳のアツコは、一夜のときめきを求めて街に出て、さまざまなタイプの男たちと不倫の夜を重ねるが、彼女の愛の終着駅は…。熟れた人妻の大胆な不倫模様を描く官能長編ロマン。
闇の中で大きく目を開けて、目の前の光景を想像した。二メートルを超える太った雌の大蛇が、ゆっくりととぐろを解いている。骨まで凍りつき、身体に氷の芯ができたようだ。部屋は不気味なほど静かだった。-悲惨な死を遂げた父の謎を追う美人犬訓練士キャサリンの身に危難が…。アガサ賞受賞の傑作。
伝説のピアニスト、バローは生きていたのか?40余年ぶりの新録音がCD化され、話題を呼んだ。奇跡の楽壇復帰を仕掛けたのは、スイス在住の島村夕子であった。しかし、ベストセラーを続けるCDに疑惑の影が。美に憑かれた女のゆくところ、謎また謎。最終章に衝撃的ラストが待ちかまえる音楽ミステリー。
真紀子ー5月17日。恵子ー18日。小百合ー21日。3人の女性たちの誕生日は5月の第3週に集まっていた。月曜日、3人の女性たちに渡すべきプレゼントに関して、アイディアがひらめいた。彼の決定的な思いつきとは…?都会に住む男と女の光と影を、透明なタッチで描く独特の恋愛小説集。
全く違ったタイプの四人の女性が同じマンションに引っ越していっしょに暮らし始めた。いつも既婚男性との恋に生きる真琴。一人の男を思い続ける麻子。夫と別れてキャリアの道を歩む江美。離婚歴のある、五歳の男の子の父親にプロポーズされた史子。波乱に満ちた四人の女性の共同生活がたどる愛の行方は…?
淳子は離婚後、ギャラリーでイキイキと働き、新しい生活をつかんだ。彼女は、その才能を認めたカメラマン・伸樹と恋に落ちるが、その妻・純子との間にも、不思議な友情が芽生えて…。出会いと別れを一巡し、愛を見つめ直し始めたハーフムーンたちの新しいライフスタイルを描く、個を越えた新恋愛小説。
二十五歳という年齢は、青春の夕暮れに浮かぶ迷子のお月様のようね…。七年越しの恋にピリオドを打ち、大阪に舞い戻ったさつき。新しい職場、新しい仲間、新しい夢、そしてふるえるような恋の予感。それは、青春のフィナーレを鮮やかに彩る、せつないドラマのはじまりだった。