1993年発売
海と船への憧れを抱いて対馬で育った笛太郎は、海賊船黄丸の船大将となつてシャムを舞台に活躍する。バンコクは明国の海賊マゴーチの本拠地。マゴーチは笛太郎の実父だが、笛太郎が異母弟を殺したことから、親子の宿命的な対決となる。海に生きる男たちの夢とロマンを描いた直木賞受賞作『海狼説』の続篇。
奥州藤原一族四代をテーマに描く名手風巻絃一の書下ろし本格歴史ロマンの傑作編。検非違使の志という職を捨て、京を脱出してきた神無木式部は、琵琶湖近くの鏡の宿場に泊まっていた。夜半、突然に起こった物音は、羽黒山の大天狗藤沢ノ入道一味の襲撃であったが、剣にすぐれた式部はたちまちにして入道一味を斬り倒してしまった。この事件で、式部は平泉屋敷を宰領する堀弥太郎吉次、通称金売り商人と呼ばれていた男の知遇を得た。天平二十一年、陸奥の国から黄金が出た。平泉は初代清衡以来、鎮守府将軍の三代秀衡と繁栄を続けた。源九郎義経も身を寄せ、式部と知り合うことになって…。
間宮林蔵以前、北辺の地を探検した山口鉄五郎・青島俊蔵・庵原弥六・佐藤玄六郎らの、北方四島から樺太(現サハリン)への想像を絶する決死の踏破行を資料により描く問題作。天明のころ、蝦夷地はまだまったくの未知・未開の地で、幕府から統治権を与えられていた松前藩ですら全領土の掌握は疑わしく、ましてや東蝦夷のもっと先の北方四島やウルップ島などの諸事情については、江戸にいては知る得べくもなかった。そこで、老中筆頭田沼主殿頭意次は北方経営の方針によってなされた北方事情調査であったが、幕閣の軋轢のうちに意次が失脚し、これら北辺探検隊の苦心もまたはかなく消失していった。全国民の関心事、“北方領土問題”にからめて一石を投ずる注目の本格歴史ロマン。
巨額脱税により逮捕されていたアメリカ麻薬界の大ボスであるランデスが、500万ドルの保釈金で仮出所、そのまま逃亡した。強力な護衛とともに日本に潜入したとの情報に、その命を狙ってさまざまな殺し屋集団が、そしてまた逮捕状を持った腕ききの賞金稼ぎたちがその跡を追ってきた。それらの中には二人の美人ハンターまで介在している。しかも、しばらく鳴りをひそめていた日本の暴力組織の北関総業が不気味な動きを見せ、ふたたび麻薬界を牛耳るべく暗躍しだした。こうなっては竜崎軍団も黙ってはおれない。アメリカの命知らず、中東からの暗殺団、北関総業一派と賞金稼ぎ、竜崎軍団の猛者たちが卍巴となって錯綜する。そのさなかで、快男児壇竜四郎を魅了した謎の美女とは。
優秀なコンピュータ・エンジニアである本田一郎は、二つの顔をもっていた。妻との交渉はほとんどなく、夜になると女性を求めて街へとくりだす一郎は、甘いマスクを武器に孤独な獲物を狩るドンファンなのである。そんな一郎が、ある日突然逮捕された。彼が今までにつきあってきた女性達が次々と殺され、現場には一郎の犯行を裏付ける遺留品が残されていたのだ。巧妙に仕組まれた罠。彼を陥れたものは誰か?妖しい筆致で読者を夢幻の境に誘う異色のサスペンスロマン。
ニューヨークでVIPを乗せた旅客機が墜落。現場からはソ連製の毒ガスが発見された。モスクワではパイプラインが爆発…。デタントのうねりが世界を覆い、米ソ日で軍縮条約が結ばれようとしたとき、平和に挑戦し、冷戦の復活を目ざす巨大な陰媒が進行しつつあった。圧倒的迫力の第36回江戸川乱歩賞受賞作。
『社内局』経由で配付した会議用資料を回収することになったかれ。ところが『社内局』とはいったい何なのか、どこにあるのか、だれも知らない。たった一人、会社という迷宮をさまよう羽目におちいった困惑の一日ー。一九八九年度の野間文芸新人賞受賞の表題作と芥川賞候補作『パパの伝説』を収録。
70年代に作られたという“幻の映画”が、蒸発した夫の部屋から出てきたので見てくれないかと、人妻から誘われたぼくは、一夜を共にしてしまった。それが彼女との最後になった。ぼくは幻のフィルムを作った男たちを、女子大生・初美と共にバイクを駆って探し回り、一人の美女を巡る深い疑惑の渕に飛び込んだ。
人間は空を飛べるはずだ、と日頃主張していた幻想画家が、4階にあるアトリエから奇声と共に姿を消した。そして4日目、彼は地上20メートルの電線上で死体となっていた。しかも黒い背広姿、両腕を大きく拡げ、まさに空飛ぶポーズで! 画家に何が起きたのか? 名探偵・御手洗潔が奇想の中で躍動する快作ぞろいの短編集。 人間は空を飛べるはずだ、と日頃主張していた幻想画家が、4階にあるアトリエから奇声と共に姿を消した。そして4日目、彼は地上20メートルの電線上で死体となっていた。しかも黒い背広姿、両腕を大きく拡げ、正に空飛ぶポーズで!画家に何が起きたのか?名探偵御手洗潔が奇想の中で躍動する快作集。 山高帽のイカロス ある騎士の物語 舞踏病 近況報告
「魔女狩り」と恐れられたマッカーシズムの嵐の中、政府高官だった父は無実の罪で投獄された。その裏にはCIA幹部さえ未知の恐ろしい陰謀があったのだ。そしてその秘密が新生ロシアの管理体制を脅かしー。KGBが、GRUが、「神の館」が、「古の信者たち」が牙を剥く迫力満点大波瀾ストーリー。
地下室に人工的に造られた“孤島”の扉が再び開かれるのは72時間後。参加者はミステリー講座を主催する推理作家を含め、若い教え子七人。密室状態になった初日の夜、推理作家は死体となって発見された。異常な心理状態に追い込まれる参加者たち。しかし、それは次々と起こる事件の幕開きにすぎなかった。
毒殺されたと噂される革命の父レーニンはもう一通の遺書を書いていた。事情を知った者は今日も次々と殺されてゆく。若きCIAエージェント・チャーリーに、密命が下された。別れた美しい妻、大富豪レーマン、謎の女ソーニャ、豪華絢爛たる登場人物が事件に巻き込まれー。手に汗握る国際謀略小説。
〈EX=3333〉の船長ヴィヴィアー・ボンテイナーは、結婚したてのアルサリとともに南太平洋で休暇を楽しんでいた。ふたりは、テラの富豪ノエル・ミント=キシランのパーティに招かれ、深海ヨット《ポセイドン》による海底探検にさそわれる。発見されたばかりの古レムール人の遺跡を調査しようというのだ。だが、深海に向かったボンテイナーたちを待ち受けていたのは、二次制約者とアコン人による地球破壊の陰謀だった。
君のことを愛してはいないー。男と女の間にはこうして始まる恋もある。練達の楽器職人ステファンが美貌の新進ヴァイオリニスト、カミーユと出会ったのは、ヴァイオリン工房の共同経営者マクシムを介してだった。ステファンはマクシムの恋人カミーユから目が離せなかった。カミーユはその強い視線に愛を感じた…。二人の男性の間で心がゆらぎはじめた彼女は、自分の気持ちに素直になってステファンに愛を告白するが。