1994年1月発売
からだが牛で顔丈人間の浅間しい化物〈件〉。生まれて三日にして死に、その間に人間の言葉で、未来の凶福を予言する。その〈件〉に生まれ変った私の根源的な孤独と不安を描く「件」ほか、鮮明、不可解な夢幻的世界を稀有の文章で描いて、漱石の『夢十夜』に勝るとも劣らない不朽の短篇小説集。
スペインで130万部を越すロングセラー。カスティーリャ地方を舞台に、妻と死別し、友人も次々と先立ち、自慢の息子も都会へ出て行った定年退職後のエロイ老人の孤独感を、お手伝いの田舎娘デシーとの日常生活を通じて描く。
友だちの恋人が謎の失踪を遂げた。だが、あまりにも唐突な悲劇の輪郭はぼやけていて、誰もがほんとうに起きたことのような気がしない-。当事者たちの証言を集める〈私〉に向けて、記憶の集積はやがて真相を語り始めた。女の秘められた過去とは?曖昧な悲劇は確かな『出来事』になるのか?野心的手法と緻密な構成による傑作長編小説。
俺は、完璧な逆玉に乗ったはずだった。この家の秘密を知るまでは…(ママは何でも知っている)清潔好きで、家中に規則を設けた家族たち。黴菌扱いされた父親は…(ルール)会社は大人の時間、家に帰れば子供の時間。楽しい二重生活が、ある日…。(僕のトんちゃん)家族さえもレンタルできる現代。やがて、本物と区別がつかなくなって…。(出前家族)ある晩、デートから帰った長男の車には、なぜか助手席に死体が…。(団欒)若手実力派が描く、五つの世紀末的家族の肖像。人ごとではない恐怖が迫る、シテイ・ホラー小説集!
お前を刺すのは憎いからじゃない。愛したいから。わかりあいたいから…。孤独のメロディが流れる真夜中の東京で、凄惨きわまる死体がひとつ、またひとつ…。第6回日本推理サスペンス大賞優秀作。
ルイスバーグ・スクェアに豪邸を構えるボストンの名家の女主人が通り魔に殴り殺された。犯人を挙げられない警察に業を煮やした当主のラウドン・トリップは、私立探偵スペンサーを選んだ。殺された妻オリヴィアを心から愛していたラウドンの苦悩は深く、なんとしても殺人犯を捕らえ、厳罰を下したかった。だが、依頼を受けたスペンサーはしっくりしないものを感じていた。いくら家庭を大事にしていたといっても、彼らの息子や娘はなにか問題を抱え、殺された妻には夫の知らぬ秘密がありそうだった。一見非の打ちどころのない幸せな家族-、それは大いなる幻影だったのではないのか?この事件の担当刑事は恋人をエイズで失ったゲイの青年リー・ファレルだったが、スペンサーは彼の協力を得て次第に事件の背後にあるものを嗅ぎとっていく。そして、被害者オリヴィアの出身地サウス・カロライナへ赴くが、そこには彼女の出生にまつわる意外な事実と、調査を妨げようとする巨大な圧力が待ち受けていた…。シリーズ中もっともプロットに凝り、高く評価された第20作。