1994年2月発売
産業廃棄物の不法投棄をめぐる裁判で勝訴を勝ちとるー。それがかつてない財政危機に瀕したSP&M法律事務所が生き残る最後の道だった。事務所初の女性パートナーを目指す若き弁護士のレイチェルは、この訴訟の原告側弁護団の一員に抜摺され、一躍出世の糸口をつかんだ。が、まだそのとき彼女は知らなかった、行く手に思わぬ陥穽が待ち構えていることを。全米に名弁護士として名を馳せた著者が放つ傑作法廷サスペンス。
訴訟の準備が進むなか、原告の一人が突如不審な死を遂げた。殺人の疑いがあると睨んだ警察は、捜査への協力をSP&M法律事務所に依頼する。だが事務所の上層部の反応はなぜか冷たく、非協力的だった。そんな折、彼女は訴訟から手を引くよう何者かから警告を受け、さらに原告の一人が殺害されてしまった。この訴訟に疑惑を抱いたレイチェルは意を決し、単独調査を始めるが…。法曹界に渦巻く陰謀を迫真の筆致で描く。
冷戦下のベルリン。英国人の青年技師レナードは、英米情報部の秘密共同作戦のためにこの街に派遣されてきた。着いたばかりのある夜、レナードはナイトクラブで美しいドイツ女性マリアに声をかけられ、たちまち恋に落ちる。東側のソ連基地の通信を傍受するためにトンネルを掘るという秘密作戦に従事するかたわら、レナードの情熱は激しく燃えさかるが…。注目の英国作家が愛の悲劇をエスピオナージュ仕立てで描く話題作。
ついに刑事弁護士となったホープに、殺人事件の弁護の依頼が飛びこんできた。依頼人は、映画監督である妻を殺害した容疑で起訴された男だった。凶器のナイフと血痕がついた彼の服が、自宅の庭に埋められているのが発見されたのだ。不利な状況のなか、ホープは被害者の映画監督が極秘撮影していたフィルムが、何者かに持ち去られていることを知るが…。現代ミステリ界最高のストーリーテラーが新展開で描くシリーズ第7作。
マギーは詐欺師。ホテルのバーに一人座り、下心を覗かせて近づいてくる男から金品を失敬するのが仕事だ。ところがある日、網にかけた男シャンクスから逆に仕事を持ちかけられてしまう。ある男をカモにしてフロッピーを盗めば、一万ドル出すというのだ。話に乗ったマギーは、ジャマイカに飛ぶが…。二転三転する展開で一気に読ませる洒落た大人のサスペンス。
旅行作家のジェインは、不審な事故死をとげた有名女優セオの夫だった大学教授ロバートと結婚した。しかし、ある晩ナイトクラブでセオのものまねショーを見て以来、ロバートの様子がおかしくなった。セオそっくりのその〈演技者〉に心を奪われてしまったのだ。〈演技者〉は実は美貌の青年だった。ロバートとの関係がばれて、養ってもらっていたウェイトレスの部屋を追い出された彼は、次のパトロンとして女性カメラマンに接近していく。一方、夫の浮気を知ったジェインは離婚し、旅先で新たな恋人と知り合う。バレットという魅力的な男だった。ところが、思いもよらない罠がここにも待ち受けていた。〈演技者〉をめぐる男と女の間に張りめぐらされた運命の糸は、やがて女優セオの死の真相へと繋がっていく。エレガントで恐ろしいサスペンス。
通信省真岡交換所は陸路と海路の両方から押し寄せてきた蘇連軍に包囲されていた。連続する砲声と銃声。時たまそれに被さって来る魂消る響きは、敵軍の接近を告げている。自分が操縦する流星改がモシン・ナガント・ライフルの七・六二ミリ弾によって昇降装置のワイヤーを切断され墜落した藤堂守は、そこで夢魔の叫びを聞いた。孤立した日本人五四名うち八名の徴用女性にとって、祖国への帰還はもはやかなわぬ夢となったのか。守はワルサーPPKを抜き取った。彼女たちを救うには充分な弾数だった…。気鋭の傑作完結篇。
名探偵・野上英太郎の恋人アキは、親友、紫織の故郷を訪ねた。玄武屋敷と呼ばれる西洋館で、紫織の伯父・多賀谷貴峰を紹介され、気乗りのしない縁談がもち上っていることを知った。貴峰の義妹、真智子と娘の琴絵が多賀谷家の財産を巡って紫織への敵意を露にしていた。さらに、十年前、殺人を犯して姿を消した貴峰の弟が舞い戻ったとの噂が流れるなか、紫織と真智子が行方不明となった。これが恐るべき惨劇の幕開けだったのだ。アキは野上と狩野俊介に助けを求める。気鋭渾身の書下し長篇本格推理。
真珠湾に突撃し、戦艦ニュージャージーを撃沈して凱旋した第七の空母「米賀」だったが、おりしも中国がレーザー兵器を積んだ衛星を打ち上げ、全世界のハイテク兵器が無力化される事態となった。この機に乗じて世界制覇を狙ったのがリビアのカダフィ大佐。世界中からメッサーシュミットME109やユンカースJU87スツーカなどの旧式兵器を買い集め、イスラエルに侵攻。さらに「米賀」に対しても爆薬を満載した特攻船を差し向けてきた。そして地中海で日本の旅客船「前田丸」が人質にとられるに及んで、ついに「米賀」は再び出撃。サムライ飛行隊の零戦は遠く地中海へと飛んだ。
夫を亡くし、娘玲子とともに富豪の実業家の許へ後妻に入った育枝。だがそこは血に呪われた淫魔の棲む館だった。淫らな儀式に悦楽の鳴咽を洩らしたのも束の間、やがて自分たち母娘が永遠に囚われた性奴であることを知る育枝。屈辱のプレイによって母娘がいざなわれるところは、この世の地獄なのか…。
誰も深く愛することなく独りっきりで生きてきたアンジェラがようやく誠実な男ブルースターに巡り会った。「ああ、私の恋愛が始まるんだわ!」思いきってキスをしたのだが…。黒い残像を灼きつける表題作ほか、軽妙な味わいのミステリー・アンソロジー。