1994年4月発売
隠密絵師として九州から江戸へ上る朝霞桔梗之介は、山陰・津和野の寺で一夜の宿を借りた。ところがそこの住職が、かつて斬殺した女の呪いに取り付かれ、奇妙な病に苦しめられていることを知る。助けを求められた桔梗之介は一計を授けるが…。出雲路、袖振りあった人々の悩みを解決し、悪人を懲らしめながら、色事絵師の旅は続く…。長篇痛快時代小説。
朱佐と再び会う為に乗った飛行機内で秋士は意外な男と会う。そして東京の喧騒の中で再会。人の愛憎が隠れた街。12年前に別れた母に求められて再会。人の思惑に絡まれた時。偶然が偶然を誘い、一人の少女を巡って事件が起きる。巻き込まれた秋士。こんな街でもこんな時でも朱佐の側に居られるなら。近端夏也子が貴方に贈るロマンチックサスペンス。こんなに愛しているのに、と誰かが言った。
東光ショッングセンターに勤める斑尾恭一は帰宅途中に妖物に襲われる。そこを救った花王良汰は新入社員。運命の出逢いだった。二人の禁じられた恋を怪奇事件が阻む。美男上客、九曜辰巳が恭一に迫る。レジを打ちながら禁断の三角関係に悩みながら妖物と闘う。なんで俺が、なんで営業中に。明かされる東光SCの秘密。絶えない苦労。野梨原花南が貴方に贈る愉快痛快奇々怪々恋愛小説。
昔、外国はファンタジックワールドだった。想像してドキドキした。外国映画のスターに憧れた。キスシーンを夢みた。今、もうドキドキしない。想像しないから、できないから。いつから異国での恋、異人との愛はできなくなったんだろうか。ファンタジックワールドは存在できなくなったんだろうか。と思っていたら、それは同人誌即売会に存在した。そこに恋する国がある。愛する人がいる。昔も今も変わらない恋愛がある。現実からもっとも遠く近い何処か、ファンタジックワールドは何時も存在する。ドキドキする為に…。
この本の主人公織田大介は、法律学究で、少林寺拳法の達人である。彼は「法の死角にこそ、弱者を救う道がある」と考える。彼の奇略は、六法全書の中にひそむブラックホールに仕掛けられる。そして弱者の立場を見事に逆転させる。現代版〈仕掛人〉の誕生である。
トンデッリの処女作は、ボローニャ周辺の青春群像を描く、6つの短編から成っている。作者の体験が投影された同性愛の世界が、ごく自然な、現実的な世界として、スラングを多用した独特の話言葉で語られる。セックスとドラッグ、学生運動と放浪に明け暮れる70年代の若者の姿が、リズミカルな話し言葉を基調とする、過激でセンティメンタルな文体でつづられる。登場人物の多くが同性愛の青年たち。かれらは、かれらなりの自由を求めてヨーロッパを旅する。読者はゲイ・ロード・ムーヴィーとでも言うべき世界にいざなわれる。
元警察官で探偵事務所を開業する橋本のところに、奇妙な位頼が舞い込んだ。廃線となった広尾線幸福駅の切符を買い、駅の壁に絵馬をかけて来い欲しい、というのだ。切符を届けに位頼人の部屋に入った橋本を待っていたのは、飛び散る血痕と、事件を捜査している十津川警部だった。表題作他4編の傑作短編集。
長い年月の底に沈澱した複雑怪奇な人間模様、エゴと欲望に憑かれた男女の群れ…。病院再建に取り組む医師を待ち受ける、怖るべき陥穽と陰謀。日本最大規模の福祉法人の秘められた荒廃をミステリアスに描き、福祉の未来を問う衝撃の書き下ろしノンフィクション小説。
V・I・ウォーショースキー、キンジー・ミルホーン。今やミステリーは女探偵の時代。しかし、かつて探偵は男の専売特許だった。1864年、女探偵が初登場。南北戦争時の10セントノベルから、本格ミステリー、ハードボイルド、サイコサスペンスまで、120年間300冊に描かれた女探偵を徹底分析する。彼女たちの犯罪解決法は?仕事と私生活は?恋愛と結婚は?物語にうつしだされた女性像を解き明かし、新しいミステリーの可能性を提示する、刺激的な評論。
カレン・ニューマンはニューヨークに住む有能な会社役員。ハロウィーンの夜、彼女は娘と電話でおしゃべりを楽しんでいた。ところが、その途中で娘の家にチンピラ集団が押し入り、残忍なレイプのあとで娘を殺害する。この犯罪の一部始終を電話で聞き、伝聞証人となったカレンだが、アメリカの法は彼女に冷たかった。カレンはやがて、実質的に犯人を守ることもある法に業を煮やし、自讐という考えにとりつかれていく。かつて、ほのかな恋心をいだいたFBIマンを敵にまわし、みずからスパイとなってまで、自讐活動にのめりこむカレン。はたして、その行く末は…。都市暴力に悩まされる現代女性の心理をこまやかに描く、サイコロジカル・サスペンス・スリラー。
29歳のハンサムな青年クリシュナン・ヘムカー通称サニーは、LAの病院に医学実習生として勤務しているが、実は彼がアラブ系テロリストであることは誰も知らない。その彼のもとにある日、電話が入る。「ニューヨークにアパートが見つかったわ」長年待ちわびた任務遂行の日がついに来たことを悟ったサニーは、すぐさまニューヨークに向かい、次の指示を仰ぐべく新聞広告で見つけた司令塔の女性の部屋を訪れる。「7月1日に行なわれるカナダ自治記念日の祝典か、あるいは7月4日の独立記念日に自由の女神像の前で行なわれるセレモニーのどちらかで、彼を仕留めるのよ」そう言って渡された1枚の写真。そこに写っていたのは…。超高速テンポで読ませる暗殺スリラー。
ベッドでみつけた博美の股の付け根にある親指大のヤケド。以前、グレていたときチンピラに入れ墨されたので、タバコの火で焼いた跡だという。鈴木はビビる気持を鎮めて、その傷にキスをした。なんといっても銀行の渉外係の彼にとって、博美は毎月定期預金を積んでくれる客なのだ…。ホステスから人妻・OLまでを狂わす銀行マンの巨根と絶頂テクニック。
鳴尾は美麻子の極孔に指を沈めたまま浅く深く抜き差しした。彼女がレズだと確認できた瞬間から挑発された気分になっていたのだ。眼鼻立ちが整い、いい体をしていながら、女とばかりもつれあっているのかと思うと、男として沽券にかかわる気がしたからである…。六本木でカフェバーを経営する中年プレイボーイ・鳴尾の美少女調教の官能テクニック。
31年間、母国へ帰ることなく徳島の地で果てた作家が、1910年から1929年までの20年間、妹へ綴った絵葉書。孤高の文豪モラエスが肌で触れた明治大正昭和のニッポン。
凋落・明の援軍要請を受けた江戸幕府は鎖国令の中、苦肉の策として浪人数百人を鄭成功に差し向けることに-。日中混血の英雄がサムライとともにいよいよオランダから台湾を奪取。「朱帆」に続く、鄭成功一代記の後半生。
アンネは「日記」のほかに童話とエッセイを書き遺していた。空想の翼をうんと広げて、スターにハリウッドへ招待される話や、汽車の旅で三十男をからかうお茶目な話…これを書いているとき、アンネはどんなにか自由だったことだろう。そしてどの話にも、胸の奥から噴出するキラリと光るものがある。書かずにはいられぬ何かが…。
四百年の時を越えて甦った伝説の黒魔道術士オーガスタ・ディーがついに動きだした。ザーン皇室の皇帝が急死し、オーガスタ・ディーの魂を宿すカミル皇子が次の皇帝に即位する、というのである。時を同じくして、シェスタの盟友アムスィル率いる小国エリアルが、突如近隣諸国に攻め入り、領土の拡大を始めた。シェスタ自身、商業都市ヴァリの三分の一が失われるほどの、炎魔バルログの激しい襲撃を受ける。その赤い瞳に予言された乱を呼ぶ“蛍星”の運命が今、成就しようとしていた。
江戸は黒門町の大店伊勢屋の一人娘お新と浜松屋の一人娘お菊は同い年の十八、近所でも評判の仲よしだった。その一人、お新が奇妙な相対死をとげた。心中の相手は以前から身をもちくずして勘当されていた兄の喜三郎であった。そのことは幼なじみのお菊が証言した。伊勢屋の主人は番頭利吉をいずれはお新の婿養子として身代をゆずる気でいたが、お新にきらわれていることを知る利吉にとっては邪魔な二人、いっそ殺して。動機は充分だ。浜松屋の長屋に住む浪人柊左近は、不審の利吉を洗っていったが、その見込みはみごとはずれた。が、毎日、伊勢屋の居間に人知れず送られてくる不気味な黒十字のついた殺人予告状。事件には三十五年前のどす黒い怨念がこめられていた。はたして事件の黒幕は。