1994年5月10日発売
祖国が分断され、まだ多くある差別の中で、若い青春を、本当の生きかたとは何か、を真摯に問いながら生きる群像。李恢成の初期中篇「われら青春の途上にて」「青丘の宿」ほか父親の死を契機に、対立し、相反する二つの組織が手を結ぶ僅かに残された“黄金風景”を描く「死者の遺したもの」収録。
元チアリーダーの過激派で「筋肉のあるモナリザ」のサラ、ナイスガイのラファティー、200ポンドのティナに爆弾狂のオリー、そしてシェルターを掘り続ける「僕」…’60年代の夢と挫折を背負いつつ、核の時代をサヴァイヴする、激しく哀しい青春群像。かれらはどこへいくのか?フルパワーで描き尽くされた「魂の総合小説」。
唾液にまみれぬらぬらと光る肉根が唇の間から抜き出され、ひくつきを打ちつつ、女の頬のわきで揺らぐ。半びらきの唇が咥えなおすように棍棒のようなそれになすりつけられる。「バックから男に嵌められるのが好きなのだろう、ん。」大手電装メーカー「アヒサ」の紛失した極秘リストを見つけるよう業務命令を受けた総務課長の梶谷弘一は、リストと共に姿を消した犯人らしき女を探し出すため、自慢の肉体を武器に社内の美女たちを次々と征服してゆくが…。長篇官能小説。
一人の銀行員がマンションの一室でゴリラに刺し殺された。血の海となった惨劇の現場には、書きかけの日記が。しかし、被害者の自筆による日記は、その日に限って横書きで記されていた。渋谷署のベテラン巡査部長夏目邦雄は、その謎にこだわった。被害者は、なぜ日記を横書きにしたのか。やがて、犯人から新たな殺人を示唆する奇妙なクロスワードパズルが送り届けられた。本文のレイアウトそのものが事件を解くヒントになっている、前代未聞の横書きミステリー登場。
アメリカでの不毛な生活を脱し、タンジールへやって来たダイアーと、モロッコ人タミ、レズビアンのユーニスらはいかなる運命に翻弄されたか。人間存在の言い知れぬ不安と恐怖、闇の中を手探りで進むように一寸先に待ちうけるどんでん返し、読む度ごとに発見がある伏線につぐ伏線。メイラー、カポーティと並ぶ第二次大戦後を代表する作家であり、スタイン、オーデンらと邂逅し、テネシー・ウィリアムズ、カポーティ、ブライオン・ガイシン、バロウズ、ケルアック、ティモシー・リアリーらから敬愛され、ジェインの夫であった、あのポール・ボウルズの傑作長篇。
様々な方面に手を伸ばし、結局大成しなかった山田美妙は、歴史小説にその本領を発揮したと言ってよい。本書では、初期の『武蔵野』『蝴蝶』及び後期の『四郎高綱』『二郎経高』を採り上げた。いずれも初出により、『武蔵野』以外は初の注釈の試みである。付録として、「山田美妙歴史小説一覧」を掲載。50作品の初出が一覧できる。
民衆の英雄『水滸伝』の生残りたちが、運命の糸にあやつられて再び大同団結し、戦いに斃れ、あるいは讒言によって殺された不運の兄弟たちの無念を晴らそうと、大陸と海を舞台に痛快極まりない縦横無尽の大活躍を繰り広げる。民衆の願望の中に今もなお生きつづけるこれら英雄たちの復活劇を、快テンポの筆で見事に活写した『水滸伝』の後日譚。