1994年7月発売
五十八年前、農園で待ち伏せにあって殺されたのは、メキシコ革命の英雄サパタではなく、別人だった。ついては、サパタの現在の居所を突き止めてもらいたい…。探偵エクトルは、顔に傷のある男から依頼をたんなる妄想として片づけようとした。だが、彼が断わるまえに、男は金をおいて雨の中に消えていた。この雲をつかむような話が呼び水となったかのように、エクトルのもとには、たてつづけに調査の依頼が舞いこんできた。まずは映画女優から、娘の様子が最近おかしいので原因を探りだしてくれといわれ、ついで鉄鋼会社の社長から、労働争議で揺れ動く工場で起きた殺人事件の調査を頼まれたのだ。どちらとも引き受けたエクトルは、危険が待ち受けているとも知らずに、三つの事件の渦中へと飛びこんでいった。ハメット、チャンドラーの世界を現代のメキシコシティに甦らせ、絶賛を浴びた、話題のハードボイルド。
42歳になる主人公サイモン・ショーは、広告業界で成功を収めているものの仕事に飽き、結婚生活も破綻している。ひょんなことから自由を求めてロンドンを去り、プロヴァンスで小さなホテルを開く計画に携わることになる。仲間は“執事”ともいうべき何でもこなす腹心のアーネスト、そして魅力的なフランス女性ニコル。一方、ジョジョを始めとする南仏人の強盗集団は、地酒パスティスを傾けながら銀行襲撃のプランの仕上げに余念がない…。
貿易船フリードウッド号の船長、ブランドンと一夜を共にしたことから、ヘザーの人生は大きく変わっていく。子供をみごもっていたのだ。ヘザーは子供のために偽りの結婚式を挙げる。ブランドンの故郷アメリカに向かった二人を待ち受けていた、人々の好奇のまなざし、様々な事件、心の葛藤…それでも、やがて本当の愛が芽ばえ、甘い日々が続くようになった。そんな折、不審な事件が相次いで起こる。しかも、その疑いがブランドンにかけられているというではないか…。
「ソングライン」とは、アボリジニの先祖の足跡を辿るルート・マップであり、天地創造の神話であり、法の道であり、情報としての財産でもある。それを歌いつつさすらうことで、彼らは今も、先祖が創造した世界を再創造している。5万年の歴史に培われた特異な文化へのロマンの旅。
“地球の運命そのもの”を敵に回してしまったために、さらわれ、殺されようとした智明を庇おうとして、遂に一樹は絶命した。彼ら2人はこうして引き裂かれたままの運命で終わるのか。彼らが救われる道は本当にないのだろうか。宇宙の創生、そして人類の誕生の謎が解き明かされるシリーズ完結編。
風雲急を告げる大坂夏の陣を目前にして繰り拡げられる、真田一族、服部半蔵一味、風摩の一党、入り乱れての忍者合戦。数奇な星のもとに生まれたがため、そのまっただ中に投げ込まれる駒太郎、波瀾の人生。
吉祥寺の井の頭公園で、首なしの全裸の女が、乳房に流れる血を洗っていた。池では鯉に肉を食べられた白骨がユラユラと泳いでいる。犯人は夜になると、神田川の源、善福寺公園の池、石神井公園の池から血を求めて現われる…。井の頭公園で起った殺人事件の動機は何か。表紙の木々の中に事件が3Dで浮かぶ。カバーの折り返しには、殺人の動機が立体の文字となる。3Dが解けると、探偵よりも早く犯人がわかる、新スタイルのミステリー。
…そのとき、彼は悟った。そこにあるのはただひとつの真理、「人生には一杯の酒で語りつくせぬものなど何もない」という、古人の諺だった。彼はグラスを空にした。目的はただひとつだった。二杯目を頼むことだ。〈二杯目のジンフィズより〉それぞれの酒、それぞれの時間そして、それぞれの人生。街で、旅先で聞こえてくる大人の囁きをリリカルに綴った掌編小説集。
千年の昔のこと、ラケツという町でとんでもない不運の元に三人の主人公が生まれた。王子として生まれたのに貧乏と悲惨という運命をしょいこんだ「文無し男」、絶え間なく絶叫し戦い続ける「絶叫女」、どこまでも邪悪でものぐさな「罵り男」。この三人、次々と混乱を引き起こし町から追い出されるはめになる。異国の町々をさまよい続け、巻き起こす大騒動数知れず…。随所に挿入されるヨルバ族の諺もとぼけた笑いを誘う。いわば神話的な時空の中に繰り広げられる、アフリカ流運命の不条理の物語。『やし酒飲み』で知られるナイジェリアの奇才チュツオーラ会心の作。
人気ゲームの『ウルティマ』がついに冒険文庫に登場だ。美しく、強いヒロイン・シャロンに魅せられるはず。アバタール(八つの徳を究めし聖者)となったシャロンは何者かに導かれ、ふたたび異世界ブルタニアを訪れることとなる。アムリック男爵の娘アリエルを救うべく、アビスに旅立つのだった。彼女は襲いかかる幾多の敵に立ち向かいながら、アリエルを探し求めるのだが…。
天狗党に占拠された故郷のジパングを救うため、冒険者養成学校セルファーの女生徒サラスは、戦士科の仲間たちとともに冒険の旅に出た。魔法士科やメカ召喚士科の少女たちも巻き込んで、サラスたちのパーティーは天狗党を倒すことができるのか。マイクロキャビンから発売された同名のパソコンゲームを、アクションたっぷりにノベライズ。
東アジアの「チェルノブイリ」を防げるか。不審な放射能データから幕が開く日韓米ロを巻き込む一大国際謀略。今、注目、北朝鮮・寧辺の「疑惑の核」を巡る書き下ろし。近未来シミュレーション小説。
ラグビーのチームメイト・宏樹を狂おしく想い続ける隆之、18歳。20歳の年上のカメラマン・北崎との関係に傷つく都、18歳。それぞれの悩みを共有しながら、ピュアな生を疾走する、みずみずしく切ない青春小説。
個性尊重の全人教育を唱え、昭和の初めに創立された玉川学園。園内に住む少年の眼がとらえた開戦前夜から終戦までの日々。都市部から離れているため、どこかのどかなところのある学園にも-戦闘機の空中戦、陸軍の装甲車の駐屯、農家への買出しや疎開-戦争は次第に、そして確実に忍びよってくる。幼き戦争体験を軽やかに描く傑作長篇。