1994年9月発売
剣に将来を託し、武市半平太の命ずるままに暗殺剣を振るい続けた岡田以蔵の末路(「魔剣」)。世情騒然たる京都三条小橋のたもとにうずくまる老乞食と維新を焦る桂小五郎との奇妙な交流(「膿殺」)。西洋菓子の原型を日本で造り上げた紅屋留吉と維新後の永倉新八との不思議な因縁(「剣菓」)-幕末から維新の激流に翻弄されながらも、苛烈に生きた志士たちの命運を刻んだ九つの時代異譚。
果たし合いなど廃れていた江戸時代末期に、些細な口論から果たし状をつきつけられた武士の困惑(「蛍橋上流」)。藩主の意に背き、浪人の娘を嫁にとった親子の悲劇(「花散りて後」)。斬るなかれ、斬らるべしーという極意を得ていた剣の達人が、主君から放し討ちを命じられ、悩んだ末に思いついた秘策とは(「放し討ち柳の辻」)。武士道無残を峻烈に描き切った、緊張感みなぎる作品集。
足利将軍家の姫君香具耶を奪った者には南蛮銃三百挺をとらせようー。美女香具耶を憎む妖女玉藻の号令に信長・謙信・信玄らは色めき立った。姫を護るは剣聖塚原卜伝、上泉伊勢守。仕官先の大名の品定めに高見の見物決め込んだのは日吉丸。二匹の狐妖術対決。淀川では上杉軍と武田軍がぶつかって…。戦国オールスターキャストでお贈りする奇想天外・痛快無比の傑作長編伝奇小説。
スティンハースト卿率いる劇団員は、スコットランドの古い館ホテルに滞在。ロンドンの劇場のこけら落としを前に、リハーサルを進めていたが、そのさなか、野心的な新進女流劇作家が殺害された。現場に乗り込んだ貴族刑事リンリーと相棒のバーバラは、やがて、スティンハースト一族のスキャンダル、パブの女房の自殺という、二つの過去の事件を知るのだが…。異色コンビが犯人を追う。
これまであまり脚光をあびなかった、しかし実際は、忍者のように大きな活躍をした日本海軍の潜水艦隊。日本軍の上層部が、その威力と有用性にもっと早期に気づいていたら、日本の勝利もありえたかも知れない…。
アメリカまで来ても、やっぱりヨメなわけ。彼を愛してる、それだけで万事OKのはずだったのに、このしがらみときたら…。日本の元気娘マドコが、「自由」の国アメリカで出合った思いがけない出来事を痛快に描いた表題作ほか、第10回「海燕」新人文学賞受賞作「ヨモギ・アイス」収録。野中柊デビュー作品集。
サンドラの場合、19歳。美しく、憐れだった。悲惨な子ども時代。体を売るのが商売。そして夜の小路で殺された。わたしは、キャット・マーサラ、TVのリポータ。おしゃべりなオウムとシカゴで暮らしている。チャンネル3から依頼されたテーマは、売春婦。女性裁判所でサンドラと知り合い、彼女たちのリポートをするうちに、犯人を追跡する羽目に。
90年代の“青春のバイブル”ここに誕生。家庭崩壊、性的虐待、ドラッグ、暴力…様々な問題を抱える現代アメリカ社会で、ハイスクールのバスケットボール・チームを舞台に繰り広げられる感動の物語。
サムとディーニー。この名前をあなたは永遠に忘れない。あの2人はまったく手に負えない奴らだ-数々の困難を乗り越え、チームを栄光へと導く“聖人”サムと“ミュータント”ディーニーだが…意外な展開、圧倒的な迫力で胸を熱くさせる’90年代、待望の“青春のバイブル”。
赤坂絢子-ヒロイン「マナコ」を演じる女優が作者・寺脇滋有の目を惹いた。稽古から上演へと「マナコ」を介して、二人の関係は急速に深く濃密になっていく。一途に燃え盛る絢子の恋慕。狂おしい歓びと悔いの暗いうねりに翻弄される滋有。悲劇への予兆をはらんで二人の舞台は楽日へと突き進む。
生涯不婚。職をもたず、酒も呑まない。-その男。だが、森の奥に棲む動物の匂いがする。父親の親友であり母親とも微妙な関係にあったその男の、軽やかにも、深い断念をつらぬく生き方を見事に浮び上がらせた表題作ほか2編を収録。
中国春秋時代の大国晋の名君重耳に仕えた趙衰の子趙盾は、父同様晋の宰相となるが、自らが王に推戴した夷皐と対立せざるを得なくなる。王とは何か臣とは何か、義とは何か信とは何か。宰相として国を支え続け、歴史とかかわってゆく趙一族の思想と盛衰を、透徹した史眼と清冽な筆致で描いた長篇歴史ロマン。