1994年発売
偶然出会った男・松岡弘樹と淫蕩な日々を送るOLのみゆき。優しい舌戯と愛撫に満たされ、みゆきは官能の世界に溺れていく。弘樹に金の無心をされ、全財産を貢ぎ込んだ挙げ句、サラ金に手を出してまで弘樹をつなぎ止めようとするが、遂にSMクラブに売られてしまう。特異な性戯を調教され、新たな肉欲に目覚めるみゆき。その時、弘樹は密かに悪計を練っていた。
先輩の代理で前衛華道のパーティに出席した村尾栄進は、岡庭理恵子と名乗る女と知り合う。会場を出て二人きりになった時、村尾は理恵子から、自分は不感症で、感じさせてくれる男を探している、と打ち明けられる。不安と期待が交錯するなか、村尾は理恵子をラブホテルにいざない、理恵子の願いを叶えようと白い女体に挑むが…『薔薇の滴り』。ほか六篇を収録。
社交界にデビューしたばかりのヴァレリアに、フランス人公爵との縁談がもちあがった。ヴァレリアはかれのシャトーを訪れることになり、兄のアントニーとともに南フランスへ向かう。ところが、アントニーは妹を強引に説きふせ見合いの前に、評判のカンカン見物をしようとピアリッツに立ち寄った。変装をして出かけたダンスホールで、ヴァレリアはレイモン・サヴァンと名のる伯爵に出会う。
夜も更けた大都会のあちこちに男と女の見果てぬ夢が咲き乱れ、やがて最期を迎えたクレオパトラの嘆きのように空しさだけがわだかまる。そして、稀代の色事師カサノバのため息にも似た底知れぬ幻滅の嵐が心の中に吹き荒れるー豪奢なひとときと蠱惑的なまざさしが交錯する愛のつづれ織り51篇。
人生の途上で堪えがたい悲しみに直面したとき、人はその事実をいかに受けとめ、その後の人生をどう生き得るか。肉体に障害を抱えた長男と精神に障害をもつ次男、二人の息子を同時に自殺によって失った女性が、その悲惨を真正面から引き受け、苦しみの果てにたどりついた生の地平は。魂の癒しを探り、生きることへの励ましに満ちた感動的な長編小説。第一回伊藤整文学賞受賞作。
犠牲者の耳は切り取られ、別の男から切断された小指が差し込まれていた。次の犠牲者の口には、前の犠牲者の耳が押し込まれていた。狂気のナイフで切断された身体のパーツが、次の犠牲者の体内に残されてゆく。大阪の闇を切り裂く凄惨な連続殺人に狂奔させられる刑事たちだが、捜査線上に上った容疑者は、生きている筈のない男だった…。卓抜なトリックのサイコ・サスペンス大作。
日本ジャンプ界期待のホープが殺された。ほどなく犯人はコーチと判明。一体、彼がどうして。一見、単純に見えた殺人事件の背後に隠された驚くべき「計画」-踏切のタイミング、空中姿勢、風圧、筋力、あらゆる要素を極限まであの男のデータに近づけよ。「計画」は極秘のうちに進行しつつあった…。拘留中の犯人が密告者を推理する、緻密極まる構成の本格スポーツ・ミステリー。
人種差別政策への批判が強まる中、南ア白人政権はある極秘計画に着手した。一方ANCは大物政治犯との交換を要求すべく、訪英中の外相を誘拐した。だが工作員たちが身を隠した森林地帯に捜索隊のヘリが墜落、辺りは一面火の海となってしまう。外相を死なせては全てが水の泡だ。果して脱出は可能なのか。また極秘計画「ブラッド・リバー」とは。巧みなプロットが光る本格冒険小説。
プラチナ・ブロンドの髪が輝く天性の美貌と魅力の持ち主クリスタルがスペンサーと出会ったのはまだ14歳の時。二人は互いの目が会った瞬間から恋に落ちたのだが…。女優になる夢を抱き、度重なる逆境を乗りこえるクリスタル。彼女への思いを秘めながら、才気煥発なエリザベスにも心動かされるスペンサー。愛し合いながらもすれ違う男と女の真実の幸せの行方を描いた長編ロマンス。
ハーヴァードを優秀な成績で卒業した苦学生ミッチは、メンフィスの小さな法律事務所から高額の年俸、BMWの新車つき一軒家という破格の待遇で迎えられた。この事務所、新人弁護士にも苛酷な仕事を要求するが、10年もすれば億万長者であとはバラ色の人生が待っている。彼は愛妻アビーの不平にも耳を貸さず、一日20時間働いた。だが、こんなうまい話、この世の中にあるわけない…。
ミッチが勤めるこの事務所、過去に五人の死者をだしている。一切が盗聴され、常に監視されているようだし、何者かの指令で事務所が動いているらしい。接触してきたFBIの捜査官に真相を聞かされたミッチは、事務所を操る巨悪の組織とFBIの双方の裏をかくとんでもない策を練る。タダじゃ正義に加担しない、しっかりと取るべきものはとる。
西部をさすらう凄腕のギャンブラー、マーヴェリック。目指すは、優勝賞金50万ドルのポーカー選手権。だが、参加料が足りない。彼を誘惑する美貌の女スリ、アナベル。ふたりの仲に割って入る謎の連邦保安官クーパー。三人三様の思惑が入り乱れ、悪漢どもが行く手を阻む。タイムリミットまで後4日。危ない橋を渡らなくてはならないー。スリル満点、丁々発止のアドベンチャー・ロマン。
たしかに時の流れのなかで日本共産党は輝いていないかもしれない。しかし、一見その時の流れに外れて光が当たってないものにこそ、明日の輝きがあるはずだ。この本はあくまでもシミュレーション小説の方式をもちいているが、明日おこったとしてもまったく不思議ではない。混迷極まる政治状況の中、唯一我が道を進む日本共産党に明日はあるのか。鬼才が放つ書き下ろし第二弾。
『四万十川』の作者が、二十余年にわたる郵便局勤務をもとに、誰も書かなかった苛酷な労働現場の実態をえぐり出しつつ、そこからの人間的再生を求めて立ち上がる人人の姿を、爽やかに感動的に描き出し、大きな反響を呼んだ傑作。
「ああ、青さん。お前に会うために、わたしはここまで生きてきた気がするよ」-。姉の名は小春、妹は夏子、そこは果たして地獄だったか、それとも桃源郷だったのか。美しい姉妹とその兄と文士が綾なす官能世界の極致を描く絶品。
現役女子大生ミラちゃんが、山桃寺まえみちにある居酒屋のママになった。魅力あふれるミラちゃんを慕って集まる、ちょっと変わった人たちが織りなす歓びと哀しみー。直木賞受賞の話題作『青春デンデケデケデケ』に続く第二作。