1995年10月発売
幾度も繰り返される殺人。殺されるのはいつも渕上零治郎。それは、現実の出来事。だが、それを認識できるのは孫の久太郎だけ。時間の“反復落とし穴”に嵌まり込んだ久太郎が、祖父の命を救うべき孤軍奮闘するが…。
娘が妻のある中年男を愛していると知ったとき、セシルは自分の夫にも疑いの目をむけた。やがて疑いは確信に、そして現実へと変わってゆく。長い年月かけて育んできた夫婦のきずながこんなにも簡単に壊れてしまうのだろうか…。
屏風岩東壁基部で坂東真司の遭難遺体が発見された。彼は恋人の毛利晶子と屏風ノ頭で待合せすることになっていたのだが、行方が判らなかったのだ。遺体は頭部だけが割れていた。直登ルートをたどって落下した場合、最低二度は壁に衝突する。五体は満足でありえない。では壁の下の方で転落したのだろうか…。惨劇の裏に潜む温泉旅館の女将の失踪事件。
異常犯罪集団の狂気の毒牙。餌食にされる女豹軍団壊滅の危機。あの女が必要以上に逆らったから悪いんだー。フィギュアを削っている手を止めた川添がじっと美穂の写真に見入った。今まで憧れていた美穂の裸体が艶めかしく目に映っていた。
夢をなくしたとき、ふとあなたが足を踏み入れる奇妙な四つの世界。蝶のすかしを入れただけの安価な業務用灰皿が、店先から次々と盗まれていく。灰皿をデザインした夢坂雅人は、犯行予告があった喫茶店で息を凝らして犯人を待つが…。新鋭、初の作品集。
売れない純文学作家サド・ボーモントには、世間に知られていないもう一つの顔があった。血なまぐさい犯罪小説を書く、ジョージ・スタークなるベストセラー作家の顔が。本来の自分の仕事に専念したくなったサドはある日、すべてを公表し、ペンネームを葬り去ることにする。それがどんな悪夢の幕開けになるかも知らずに…。
凄惨な殺人現場に残されていたのは、そこにいるはずのない自分の指紋と血で書かれたメッセージ。容疑がかかるサドに“影の半身”の復讐の手が徐々にしのび寄る。対決の日、何か強烈な力に呼び起されたかのように、おびただしいスズメの群れが辺り一面を覆いつくした。作家と抹殺されまいとするペンネームの壮絶な戦い。
新進気鋭の女流絵師・歌川芳花ことおいちは、出世作『竹林七美人図』で彫師をつとめた才次郎と恋におちる。一途に才次郎を求めるおいちだが、才次郎には女房と子供が待つ家があった…。表題作ほか、江戸の町で恋と仕事に生きた“キャリアウーマン”たちの哀歓を描いて直木賞に輝いた珠玉の連作集。
星のまばたきは、ちまちまと生きる人間を見ての涙だという。他人さまの金を利用する逆ピラミッドに賭けた怨念のヒロイン。愛唱する詩に導かれて理想の男性を追い求めるが、彼女の前に現れたのは、似ても似つかぬ…無人のパーティー会場に立ち尽くすララ・キャメロン。世紀の傷害事件の糸を引くのは誰か。はたして神の裁きは。全米ベストセラー第1位に輝くシドニィ・シェルダンの最新傑作。
南太平洋上を漂うヨットの中で、米上院議員の娘が誘拐された。敵は麻薬王として知られるタイの将軍。その軍隊の規模は。人質は無事に救出できるのか。しかも次期大統領の椅子を狙う上院議員がこの機会を逆手にとって、現職大統領の失墜をもくろんでいる。第二次大戦中、空軍パイロットとしてめざましい活躍をした現米大統領の決断を迫られる場面だった。
ローデシア生まれの英生物学者ダニエルは、野生象保護の実態を撮るため、故郷のチウェウェ国立公園を訪れる。しかしそこには、象牙の密売を裏で操る台湾大使、チェンの魔の手が伸びていた。公園管理主任ジョニーの一家も、チェン一味に惨殺される。無二の親友を奪い、自然を破壊する悪の組織に復讐を誓うダニエル。彼の長い長い闘いが今始まった…。
安倍が滅び、出羽の清原一族が治めることとなった奥六郡に藤原経清の妻結有は忘れ形見の清丸とともに留まっていた。清原の嫡子武貞の妻としてである。亡き兄と夫の志を胸に秘め敵方の一族として忍従の戦いを続ける母子の前に源義家が陸奥守として現われる。清原一族の確執が「後三年の役」の嵐を呼び起す。