1995年5月発売
「和を以て貴しと為す」を社是とする日出製作所。入社10年目の羽島民義は、本社から企業城下町・日出市へ転勤になった。そこで命じられた「企業ぐるみ選挙実行部隊長」。自らの出世を賭けて、羽島は悪戦苦闘、下請け工場28社の組織票をまとめていく。だが、投票前日、本社上層部が翻意、敵対陣営への鞍替えを指示された。カイシャ絶対主義に翻弄されるカイシャインの哀しい性を描く。
あなたがとっても好きだから、あたしは自分がわからなくなる。あなたのことだけを考えていたいのに。あなたは今夜も、まだ、帰らない…。三津子と忠春は結婚七年。旦那様は会社で出世頭だし、夫婦仲も円満で、三津子は絵に描いたように幸せな専業主婦。なのにー愛する人のことを想うひたすらな心を静かに蝕んでいく孤独の闇。日常生活に潜む正気と狂気の狭間を描くサイコ・ホラー。
完璧な美貌に抜群のプロポーション、そのうえ成績はトップクラス。ニューオーリンズのテューレーン大学ロースクールで、ダービー・ショウは男子学生の憧れの的。だが、FBIさえ解決できない難事件の答えを、クールな頭脳で推理して文書にまとめたその時から、彼女の悪夢が始まったー彼女を巻き込んだ巨大な国家的陰謀とは。その「ペリカン文書」で言い当てられた衝撃の事実とは。
ニューヨーク、ワシントンDCと場所を変え、生命の危険にさらされ続けたダービーが協力を求めたのは、新聞記者のグランサム。事件の背後に潜む組織が「ペリカン文書」をもみ消そうと動くなか、証人を探しだし、情報の裏づけをとらなければ、陰謀を暴くことはできない。殺されるか、それとも巨大権力を突き崩すかーアメリカの現実をリアルに織り込んだノンストップ・サスペンス。
知的で自由な精神をもつ、考古学者トーリーに初めて会ったその日から、別荘管理人ジョーは彼女を愛し続けてきた…73歳の今日まで30年間も。春には珍しい雪嵐の夜、陸の孤島となった別荘に閉じ込められた2人は、初めて過去を語り合い、愛を確かめ合った。身分も年齢もすべてかけ離れた彼女に、ひたすら捧げ尽した無償の愛。スティーヴン・キング夫人が織り出す、静かだが熱い恋の物語。
円くん、ホタル、小雪とのマジカルラヴのトライアングルに、伊福部晶子まで加わってしまった。その伊福部まで“発熱少女”のメンバー入りするありさまで。円くんに想いを寄せる少女だけに“伝染”する異常な発熱現象は、いったい何を意味するのだろうか。ますますもつれるマルチアングル・ラヴにからめとられてしまった円くんは、ホタルへの想いもハングアップのまま、ついにはホタルの抱える秘密まで知ってしまったのだ。
明るい陽の光と豊かな自然につつまれた沖縄の小島。そこに生きる人びとの日々の営為。静かな、そして濃密な生のエネルギーをにおわせる人びとの人生の断片を、深い共感をもって描きあげた名作四篇。
大破局のショックで部分的記憶喪失に陥った如月烏有は、寺社に繰り返し放火して回復を企る。だが焼け跡には必ず他殺死体が発見され、「次は何処に火をつけるつもりかい」との脅迫状が舞い込む。誰が烏有を翻弄しているのか。烏有に絡む銘探偵メルカトル鮎の真の狙いは。ミステリに遊戯する若き鬼才の精華。
金剛神に育てられた仁王丸は、契りを交わした風神の娘・嵐とともに巨鳥・魁に乗り、生き別れになった妹を求めて地上に一番近い天界、須弥山へと向かう。途上、凄絶な地獄めぐりを体験した仁王丸の前に今度は、業火に包まれた四魔の関が立ちふさがる-。壮大なスケールで描く日本人のニューバイブル、第2巻。
夢が誘導する物語の始原。詩のような小説のような対話篇のような声と色彩の氾濫する宇宙。想像力の水源に浮かぶ鮮やかな花びらの数々。小説のジャンル・内容・文体に大胆な実験を試み、作家の誕生を記す、著者初の掌篇小説集。
“やっぱり、日本は美しいなあ。”万延元年(1860)五月五日、端午の節句の日、浦賀の港で『咸臨丸』の手摺から身を乗り出すようにして四カ月ぶりに故国日本の山河を眺めているのは、あの歴史的壮挙であるいわゆる遣米使節一行の中の軍艦操練教授方頭取・勝麟太郎その人であったが、船中取調べの浦賀奉行所付与力から、この年三月三日上巳の節句の日の雪の朝、登城の途中で大老井伊掃部頭直弼が水戸藩の浪士たちの襲撃により斬殺されたことを初めて知らされることになった。これ以後、大変革の暴風雨が軍艦奉行の勝海舟を襲うことに…。-幕末維新、この日本の大難局を勝海舟の“江戸っ子気質”の武士道が救う。