1996年4月発売
『人狼城』は独仏の国境の峻嶮な渓谷の上に屹立する古城。城主を「人狼」に惨殺されたという言い伝えのある曰く付きの城だ。1970年西独の製薬会社が10名の客をこの城に招待した。長い間、人が近づくのを峻拒してきた城に滞在しはじめた人々の上に、伝説を地でいくような、身の毛もよだつ殺人事件が起きた-。
横浜での海外ツアーコンダクターの死。大阪・豊中でのハイソサエティーの若妻の死。東京・神田での元暴力団準構成員のバーテンの死。三つの射殺死体を結びつける短銃トカレフの謎と、国際線に仕掛けられた鉄壁堅陣のアリバイに、浦上・美保のコンビが挑む。
世界核戦争から数十年。突然変異により生まれた妖獣が人間を次々と襲撃、人々は都市の回りに防護壁を作って、その攻撃を防いでいた。ソフィアポリス評議会は、妖獣に対抗するため、美少女戦士バイオソルジャーからなる対妖獣特殊警察を組織、妖獣たちの中枢を攻撃して、それを撃破することに成功した。そして妖獣特殊警察は解散となり、隊員達はそれぞれの場所へと散った。そして10カ月後。弱まったはずの妖獣が、また活動を開始した…。
米英対独の両軍が死闘を続けるノルマンディー近郊のカーン。ここを突破すればパリへは一本道である。連合国軍第21軍集団司令官モントゴメリーは、デンプシー中将の英第2軍に加え第51ハイランド歩兵師団と第4機甲師団、それと英第6空挺師団まで投入するが、攻略できなかった。米第3軍傘下の山下第25軍は、そのカーンに向けて自由フランス軍のクレール中将率いる第2機甲師団と共に、共同作戦を展開する…。日本軍のM4シャーマン対ドイツ・タイガーの死闘。
「一城の主とまでいかないが、ほどほどに出世して、相応の一家をなす男」とはねねの父・杉原助左衛門の藤吉郎評であった。ねねもその程度でいいと思う。だが、藤吉郎の幼いころからの苦労と猿に似た顔であれば道化て皆に笑ってもらいながら出世するしかないという悲痛な本音をきいた時、ねねは、初めて藤吉郎を理解した。
1999年春、軍事マニアの大野光男は、太平洋戦争を逆転させるべく、60年前に通じる時間のトンネルへ飛び込んだ。昭和14年春の東京へタイムスリップした大野は、当時海軍次官の山本五十六だけに事実を打ち明け、大胆な秘策を授ける。まずは開戦までの間に、勝てるだけの戦備を整える事。しかし、残された時間は3年足らず…。だが、彼の頭には戦史の現実がある。たった一人の力で、歴史をひっくり返せるか。
青春ミステリーの金字塔。半年前まで付き合っていた、奔放で少し危なっかしい彼女が自殺して、ぼくの退屈な夏休みは、あつく…なる。千葉・御宿の海でぼくのもと恋人が自殺した。気まぐれで、なにかと周りの人間を巻き込むヤツだったけど、決して自殺するタイプじゃなかった。葬式の日、ぼくと死んだ彼女は同じ幼稚園に通っていたことを知った。そんなこと、彼女は一言もいわなかった…。甘酸っぱいなにかに揺さぶられ、ぼくは“自殺”の真相を探り始める。
ようこそ、フィッツジェラルドの世界へ。「特上クラス」の名作から「シングル盤B面」的佳品まで、村上春樹が愛してやまない作品群から選んだ5短編を訳し、ゆかりの地アッシュヴィルを訪ねて記したエッセイ「スコット・フィッツジェラルドの幻影」を付す。
美しい女主人公・南弓子は、大新聞の論説委員。書いたコラムがもとで政府から圧力がかかり、論説委員を追われそうになる。弓子は、恋人の大学教授、友人、家族を総動員して反撃に出るが、はたして功を奏するか。大新聞と政府と女性論説委員の攻防をつぶさに描き、騒然たる話題を呼んだベストセラー。
第二次世界大戦中のドイツ占領下のリヨンで、友人の神学生をナチの拷問にゆだねるサディスティックな青年に託して、西洋思想の原罪的宿命、善と悪の対立を追求した「白い人」(芥川賞)、汎神論的風土に生きる日本人にとっての、キリスト教の神の意味を問う「黄色い人」の他、「アデンまで」「学生」を収めた遠藤文学の全てのモチーフを包含する初期作品集。
惑星マーティンの平和は突如襲来した宇宙艦隊によって破られた。侵略者の名はアーヴ、遺伝子改造によって宇宙空間に適応した人類の子孫だという。彼らの強大な軍事力の前に全面降伏の道を選んだ惑星政府主席の決断は、その幼い息子ジントの将来を大きく変えたー運命のいたずらでアーヴの星間帝国の貴族となった少年の冒険行を、SFマインドあふれる設定と、息もつがせぬストーリーで描いた気鋭のスペースオペラ超大作。
愛すること、信ずることって何だ。ぎりぎりの死を見つめる“心”の作品集。隠れキリシタン、風葬の島、一妻多夫制、様々な精神のあり方を吉川英治新人賞作家が鋭く抉る。
仲よし四兄弟、セルマ、ロジャー、ジェームス、ハリエットは、お母さんもため息をついたくらい、翼をはやして生まれてきた猫たちです。荒れた町から森へ飛んでいった彼らはハンクとスーザンの心やさしい兄妹に出会うのですが。ル=グウィンの世界を村上春樹さんが美しい日本語に翻訳した素敵な童話です。
どこからか彼に囁く声がする。手を早く洗え、と。平凡な事務弁護士である男は、女の喉に触れた指に力をこめる。あの声を沈黙させるためにー深夜のフラットで独身女性が絞殺された。無惨にも屍肉の一部を切りとられて。ロンドン警視庁のブランチ女性警視と連続殺人鬼との壮絶な戦いを描くサイコ・サスペンス。
スリランカのジャングルで遺跡を捜す日本人「おれ」は、報酬につられて危険な仕事を引き受けた。革命組織の男女をつれて政府軍の包囲を突破し、密林の奥にあるゲリラ基地へと潜入するのだ。しかも男のほうは、なんと日本人だった。ワニがひそむ河をカヌーで進み、野象が咆哮する大地を駆けるーそして襲いくる、謎の追跡者の銃弾。血の民族抗争に燃えるインド洋の島を舞台に、冒険小説の新たな旗手が放つ大迫力の長篇。