1996年4月発売
1980年代、アメリカ三大ネットワークの一つNBCで最初のアンカーウーマンとなったジェシカ・サヴィッチ。彼女こそはアメリカン・ドリームを生きた女性だっ。美しく賢く、競争の激しい報道の世界で30歳で成功する。が、つらい過去と秘密があったー。彗星のように現れ、36歳の若さで怪死した実在の人物サヴィッチの華麗なる生涯を描いたノンフィクション。映画「アンカーウーマン」の原案原作。
ロシア極東地区で発生したクーデターを逃れ、ウラジオストクを脱出した20隻ほどの艦隊が日本の領海をめざした。政府は負傷者を乗せた艦の受け入れを認めたが、新潟西港に接岸した駆逐艦は主砲を回転させ、日本の巡視船をとらえた。上陸を開始したロシア兵は機動隊を掃討、さらに新潟県庁・県警本部・新潟空港を乗っとり、数多くの人間を人質にとった。政府は自衛隊三軍に対して防衛出動を命じ、陸上自衛隊の縮小改編にともなって結成された第一空中機動団が戦場に向け飛び立つ。双方が実戦に突入した頃、柏崎刈羽原発をロシアのヘリが襲い、プルトニウムの奪取に成功。待ち受けていた潜水艦に移され、日本海のいずこへと消えていった。一方、首相官邸では総理が服毒自殺をはかり、政府は責任者不在となり、混迷の度を増していた…。大好評の軍事シミュレーション、いよいよ完結。
東京湾臨海署(ベイエリア分署)の安積警部補の許に、殺人事件の通報が入った。ライブハウスでホステスが毒殺されたというのだ。場違いと思える被害者がなぜそこにいたのか。疑問を感じた安積は、同時刻に発生した別の事件との意外な接点を発見。繋がりをみせた二つの標的が、安積たちを執念の捜査へと駆り立てる。気鋭が放つ刑事小説シリーズ待望の文庫化。
女性検屍局長ケイ・スカーペッタ難事件に挑む。バージニアの州都リッチモンドに荒れ狂う連続殺人。被害者の女性たちは残虐な姿で辱められ、締め殺されていた。被害者のあいだに関連はなく、捜査は難航、全市は震え上がっていた。美人検屍官スカーペッタは、最新の技術を駆使して捜査を続けるが…。ミステリー界の女王衝撃のデビュー作。超ベストセラー、検屍官シリーズ第1作。
浅見家では正月にカルタ会が催される。その席で浅見光彦はカルタ界の女王朝倉理絵に辛勝した。勝敗を分けたのは理絵が執着した一枚の札。理由は彼女の父親が三年前に“末の松山”の松の下で殺されたからだった。しかも事件は未解決のままで、父の手帳に書き込まれた「白浪、松山を越ゆ」が唯一の手がかりだという。真相を追って浅見は宮城県へ赴くが、そこでは十二年前にも歌枕にまつわる殺人事件が発生していた。古歌に封印された謎を手操って名探偵浅見光彦がふたつの難事件に挑む。旅情ミステリー。
賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格「ISOLA」の出現に、彼女は身も凍る思いがした。第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。
大化の改新のあと政権を保持する兄天智天皇の都で、次第に疎外される皇太弟大海人皇子。悲運のなかで大海人の胸にたぎる想いは何か。額田王との灼熱の恋、鬱勃たる野心。古代日本を震撼させた未曾有の大乱の全貌を雄渾な筆致で活写する小説壬申の乱。吉川英治文学賞受賞作。
鉄剣を磨き、馬を養って時に耐える大海人皇子はついに立った。東国から怒涛のような大軍が原野を埋めて近江の都に迫り、各地で朝廷軍との戦いがはじまる。激動の大乱のなかの息詰まる人間ドラマの数々。歴史学をふまえて錯綜する時代の動きをダイナミックにとらえた長篇。
一緒に暮らさないか、キンケイドはそう言ってくれる。しかしアリーンは迷っていた。もちろん愛してはいるけど…そんなある日、判事一家が惨殺される事件が発生。目撃者は一人の少女。だがショックからか口がきけない。続いて第二の殺人が。手口は同じだが被害者に共通項がない。やがて彼女のもとに、殺人予告めいた詩が送りつけられてきた。なぜ、わたしに…。新シリーズ第二弾。
それはオコナー上院議員にとって、再選をかけた選挙戦のさなかの出来事だった。雑誌記者である愛人が自宅アパートで殺害され、しかも自らがその第一発見者となる。死亡推定時刻、折悪しくある人物と密かに接触していたために、アリバイは成立しなかった…。弁護士を経て政界に入り、つねに前進をつづけてきた議員。事件は思いがけず、人生の綻びを浮かびあがらせることになる。
毎朝、今日こそ逮捕されるという思いで目が覚める。選挙戦がいかに苛酷であろうとも、絶えず心をよぎる。彼女は本当に愛してくれていただろうか。殺人の真相を掴みたい上院議員は、やがて自分とその周囲の人間を見つめ直すことこそ避けて通れない道であると気づく。見えていなかった過去、目を背けていた現実。単なる政治家の枠を超えて理想を追い求める男を巧みに描いた物語。
ガンプからあなたへ贈る心にしみる人生のメッセージ。全世界で社会現象になった90年代のヒーロ、フォレスト・ガンプ。成長したリトル・フォレストを見つめる父の愛。忘れられないジェニーとの魂の交流。
異形異端の怪剣士・丹下左膳は、今宵も血刀を振るって大江戸の闇に哄笑する。二刀はふたたび仇敵同士の手に引き裂かれたのだ。左膳に与するは奥州中村六万石、栄三郎に力を貸すのは剣侠・蒲生泰軒。血腥い魔風を孕む刀争奪の死闘に、大岡越前の裁きや如何に。『新版大岡政談』として発表されるや、強烈な虚無的イメージで丹下左膳を一躍不滅のヒーローにした、大衆小説屈指の雄編、佳境へ。
秘峰八ケ嶽を舞台に、姫をめぐる兄と弟の愛の確執と惨酷な結末が、果てもなく続く一族の血塗られた歴史の発端だった。憎悪は憎悪を呼び、復讐は復讐を生む。山窩族と水狐族に分れて争う末裔たちの呪詛と怨嗟の叫びは、時空を越え、いま大江戸の夜に凄然と谺する。近代劇作の手法もとりこんだ卓抜な構想力と無類の空想力で妖美幻想の世界を拓き、国枝三大伝奇長編の一つと評される豊饒な成果。
「貝がらを耳に当てると、海の音が聞えるの」「よく知ってるね。こんちゃんも子供のころ、貝がらを耳に当てて海の音を聞いたよ」孫娘と妻との話し声が流れてくる。もうすぐ結婚50年の年がめぐってくる…。穏やかな眼差で描くかけがえのない日々。
瀕死の状態になってゆく美少女を救うために、ともに故郷へ帰り、南方の医学を学ぼうと決意する顔回。物狂いの様相を呈する費の奇襲攻撃に驚愕する孔子。顔回の動揺と孔子の活躍。古代中国のシャーマンたち、孔子とその弟子たちを鮮やかに描く、超大作歴史小説。中島敦記念賞受賞。
中学生のボクは、成績優秀でいわゆる優等生だった。クラスのいじめられっ子を救済したこともある。ところが、一カ月の入院生活がボクに気持ちの変化をもたらした。退院すると、かつてのいじめられっ子を、今度はこのボクがいじめるようになってしまったのだ…。少年の日常を通して、いじめ問題を、いじめる側から描いて警鐘を鳴らす現代教養小説。