1996年4月発売
韓国・大邱市の郊外で惨殺された青年の遺品のノート。そこにはキリストの生誕の頃のエルサレムから始まる驚愕の記述があった。真の創造主の存在をも疑わせる神話的秘密、宗教的矛盾、狂信者集団の謎の儀式、鳥肌のたつ恐怖、そして神と人間の間に絶望した若者の彷徨のドラマ。殺人事件を担当する警部補はその記述の魔訶不思議な世界に圧倒されていく。不可思議の宗教サスペンス。韓国の文学賞「今日の作家賞」受賞作。
事故を起こした自動車は道路脇の木に衝突して大破していた。運転していた老人は息も絶え絶えに「あれは事故じゃない…あいつがやらせたんだ」とつぶやいて事切れた。ハロウィーンを間近に控えたブラックウォーター・ベイの町で、一人の老人が自動車事故で死亡した。保安官のマット・ゲイブリエルに打ち明けたいことがあるという電話をかけてきた直後のことだった。未亡人によれば、彼は毎年この時期になるとふさぎこみ、何かに怯えていたという。老人が告白したかったこととは何だったのか。死に際の言葉の謎を探り始めたマットは、やがて三十年前の恐るべき出来事に突き当たる。さらにハロウィーンの当夜、仮装姿の無惨な死体が発見されるに及び、事件は意外な方向へ…。『ブラックウォーター湾の殺人』につづき、風光明媚な別荘地を舞台にサスペンスとロマンスをふんだんに盛り込んで描く、ゴズリング会心の最新作。
メルポメネーは13歳。地球ー火星間を巡る小惑星改造船で暮らしている。文章を書く才能は誰もが認めるところだが、おかげで担任の先生に大変な仕事を頼まれてしまった。地球の人たちにここの生活を紹介する本を書けというのだ。さあどうしよう。とまどい悩みながらも彼女は書きはじめた。ほんの一年前に体験した小さな「戦争」のことを…宇宙育ちの少女の心の成長をみずみずしい筆致で描く、さわやかな青春冒険SF。
宇宙居留地ゴールデン・ルールで気ままに暮らしていたおれは、ある日見知らぬ男から人殺しを依頼された。だが詳しい説明を受ける間もなく、男は目の前で射殺されてしまった。新婚の妻グエンと共に真相究明に乗り出したおれだが、逆に覚えもない殺人の容疑をかけられて逃げまわる羽目に…いったい誰がおれを罠にかけたのか。宇宙居留地から月世界、並行世界にまで舞台を移しながら、スピーディーに展開する冒険巨篇。
パリに住む25歳のネリーは、失業中の夫を抱えて働きづめの毎日だったが、ある日カフェで初老の紳士アルノーと知り合う。アルノー氏は判事から実業家に身を転じた異色の人物で、執筆中の自叙伝の清書をネリーに依頼する。アルノー氏が手書きの原稿を読み上げ、ネリーがパソコンのキーをたたきながら文章をチェックしていくという作業が進むにつれ、親子ほど歳の離れたふたりの間には愛にも似た感情がめばえていくが…。
ペレストロイカによって改革の進むモスクワ。英国主催のフェアの会場に、ソ連の女性編集者カーチャが出版社社主バーリー・ブレアあての匿名原稿を持ちこんだ。なんとそこにはソ連の核ミサイルの欠陥が詳細に記述されていた。この驚くべき情報に接した英国情報部は、原稿の真贋と著者の正体を解明すべく、バーリーにモスクワ行きを依頼する。巨匠が民主化の進行するソ連の取材し、新境地を拓いたスパイ小説の新たな収穫。
原稿の著者ゲーテは、かつてカーチャの愛人であった理想家肌の科学者だった。以前パーティーで意気投合したバーリーを見込んだゲーテは、国防機密を出版して、一挙に世界的軍縮を実現することを望んでいるのだという。だが国際政治の現実はそれほど甘くなかった。カーチャへの恋心を秘めて再度ソ連を訪れたバーリーは、核の主導権争いに執着する英米情報機関の野望によって、カーチャの身に危険が迫っていることを知る。
カリブ海に浮かぶセント・トマス島。海を望む崖の上に、アダムとケイの夫妻とその娘が平穏に暮らす家があった。だが娘の世話係として謎めいた女性ダイアナが来た時から、不可解な事件が…次々と生まれる謎、予測のつかない展開。ロバート・B・パーカー、ローレンス・ブロック、ジョナサン・ケラーマン、ウェストレイクらが絶賛したサスペンス小説の傑作。
近未来のサンフランシスコ。市民はカルマと呼ばれる点数減点法で管理され、感情や記憶に干渉する合法的麻薬が蔓延し、進化療法によって知能が増大した動物が人間と対等の顔をして街を歩きまわっている。メトカーフは街の片隅に事務所をかまえる、しがない民間検問士。ある朝ラジオの音楽版ニュースで報道された殺人事件の被害者は、ほんの二週間まえまで依頼人だった男だった。驚く彼のまえに他ならぬその事件の容疑者という男が現われ、自分は無実だ、真犯人を捜してくれという。気乗りしないまま捜査をはじめたメトカーフは、さっそくカンガルーの殺し屋につけ狙われるハメに…。管理社会の暗黒街をクールに歩く私立探偵ならぬ民間検問士の活躍を描いた話題作。1994年度ローカス賞処女長篇部門、ウィリアム・L・クロフォード賞受賞。
ピットマンはかつて優秀な記者だった。息子の死の傷手から立ち直れず、酒に溺れていたが、危篤の報が入ったある人物の死亡記事を生涯で最後の仕事とし、その後は自殺しようと心に決めていた。その男は、アメリカの外交政策を陰で操る五人の「大顧問」のひとりで、元大物外交官だった。病院から拉致された男の居場所を突きとめた彼は、そこで一堂に会した「大顧問」の姿を目撃し、さらに病床に伏す男が発した謎の言葉を聞いてしまうが、あえなく見つかってしまい、命からがら逃げ出すことになる。翌朝のニュースを見た彼は愕然とした。例の男は殺害され、犯行の容疑者として、自分の名が報じられていたのだ。かくして、ピットマンは「大顧問」たちから追われる身となった。だが、逃避行の中途で助けを求めた看護婦ジルの優しい愛情に触れるうちに、一度は死を決意した彼の心に、今一度、生への強い欲望が湧きあがる。そして、男が残した謎の言葉を手がかりに、歴史の闇に葬られていた「大顧問」の恐るべき過去が明らかになった時、決死の反撃の火ぶたが切って落とされた…。
コネティカットのランディー・ケンブリッジという十九歳の若者からバークに仕事の依頼が入った。ランディーの母親は、昔バークがロンドンで知り合ったクラブのウェイトレス、チェリイだった。バークは若者の話を聞いてやった。彼は最近、自分の周囲で十代の友人の自殺が続いているが、自分も死ななければならないような気がして不安だからボディガードをしてくれという。いまひとつ釈然としない話だったが、バークはコネティカットに赴き、調査をすることにした。母親が海外出張中のランディーの家には、ファンシイという三十代前半の女が出入りしていた。彼女は最初から思わせぶりな様子で、バークをSMプレイに誘うが、バークは肉体は支配できても心までは支配できないことを思い知らせた。そしてファンシイにはチャームという双子の妹がいて、少女の頃、父親からひどく虐待されていた。一方、依頼人のランディーと日を過ごすうちに、バークは気のいいこの若者に好感を抱くようになった。バークの調査が進むにつれ、自殺した若者たちに共通する事実も判明した。それは、彼らが精神科医ドクター・バリモアの診療所に通院か入院をしていたという事実で、背後には残忍かつ非情な秘密が隠されていた。NYのアウトロー探偵バークとその仲間たちが三年ぶりにカムバック。ノワールな味わいを強めて再開する人気ハードボイルド・シリーズ第七弾。
子供は無事だ、きみのキャリアは保証する。ただし、ひとこと無罪といってくれればの話だが-マフィア絡みの殺人事件の公判で陪審員に選ばれたアニーは、ティーチャーと名乗る謎の男から無罪評決を強要される。明らかに有罪である被告人を、残る11人の陪審員を説得して無罪とすることが果たして可能なのか。恐怖におののきながらも、アニーは気力と知力をふりしぼるが…。
俺は“キツネ”。元ヤクザだ。元相撲取りの蒼ノ海とともに東京を追われ、札幌の旅館に宿泊していた。女将の工藤純子に惚れた弱みから、面倒なことに巻き込まれた。純子に弟の武彦を更生させるよう頼まれたのだ。純子は武彦の博打のせいで多額の負債を愚連隊の大神組にかかえていた。愚連隊のボス・大神に会った俺はなぜか大神と意気投合してしまい、いつのまにか地元の暴力団の吉本組襲撃を手伝い、さらには秘境・白神山地に行く羽目に…。都会に敗れた男と女のねじれた愛憎が迸る究極の暴力ブルース第2弾。
石神探偵事務所の野上英太郎のもとに、またしても奇妙な依頼-名門修己学院高校理事長の母親・森名スエが、孫の保一の先祖を敬う気持ちが本物なのかどうかを調べてほしい。もし、先祖をないがしろにするうつけ者であったなら、保一を学院から追い出して養子をとるというのだ。野上と助手の狩野俊介が保一の調査を始め、森名邸を訪問した夜、保一の部屋で異変が。森名家に伝わり、現在、邸から十キロも離れた寵福寺に保管されている四メートルの降魔弓から射られたと思われる矢が、保一の胸を貫いていたのだ。
東京・青山にあるニューオリエンタル・ホテルの支配人、北見慎吾は仕事も好きだが、女性はそれ以上、三度の飯よりも好きなフェミニスト。その淑女喰いの卓越したテクニックとタフネスぶりから、「今業平」との異名もとっている。その日、久しぶりに来迎寺摩里枝がチェックインした。摩里枝は、父親の急死によって二代目を引き継いだばかりの旅行代理店・東京ツーリストの若き女社長。激しいラブメイクの後、北見は摩里枝から意外な話をきかされた…。長篇官能サスペンス。
栗村夏樹は都内の短大生で剣道三段の腕前。自宅近くの警察署の捜査一係・牧田刑事から電話がかかり、夏樹の友人・桂木亜沙美が誘拐され、身代金一億円を要求する脅迫状が、ファックスで届いたという…。’94年『化身』で第五回鮎川哲也賞を受賞したトリック・メーカーの著者が構想二年、満を持して放つトリック&ドンデン返し。「海に沈む夕陽、“殺人者”が若い女性を断崖絶壁に追いつめ、最後の電話をかけさせる」-プロローグに込められた三つの謎とは。読者はこの仕掛けをどこで見破るか。書下ろし本格推理傑作。
退役したメルヴァリー侯爵は、愛人達の裏切りなどで、ロンドンの生活に幻滅してしまい、失意のまま故郷の館へと向かう。その途中、馬場の事故に遭遇するが、その一台に乗っていたクリスティーナという美少女は、侯爵の領地内で乳母と二人きりで暮らしていた。だが、既に両親は亡く、強引な男に迫られて怯えながら過ごす毎日らしい。そんな事情を知った侯爵は、付添い役を捜し、自分の館に引き取ろうと決心するが…。
話しかけてきた友人がトツゼン目の前で交通事故にあう。夢で見たハンサムな青年がパット現われる。家へ帰ると家族は皆行方不明。なんとも奇妙な一日。ところが、その日から由起子の日常はガタガタ…。行く手にまちかまえる、あなたの知らない不思議な世界、古都鎌倉を舞台に繰り広げられる、怪奇と心ときめくロマン。