1996年5月発売
2人めの女が寝室にやって来た。ブラジャーとショートパンツという恰好である。「今度はこの女を陶酔させる」と思った直後、矢車は心臓が凍りつくようなショックを受けた。女の手に拳銃が握られていた…。フリーライター矢車敬介のもう1つの顔は、特別秘密捜査官、つまり“隠れ刑事”である。多発する愛欲がらみの犯罪を、危険を顧みず敢然と捜査する…。
慶長5年(1600年)9月、伊達政宗は関ヶ原に向かう徳川家康に呼応し、白石にあって上杉景勝と対峙していた。上杉勢の背後からの追撃を政宗が阻止することは、関ヶ原の決戦勝利の絶対条件。天下の行方を定める鍵を政宗が握ったそのとき、政宗は景勝と密かに和睦、矛先を江戸城攻撃へと翻した。政宗離反を知った家康は、急遽、軍を江戸守備の要・川越城にとって返すが…。江戸攪乱に動く伊達藩の陰の軍団・黒脛巾組の暗躍。家康必死の巻き返し策とは…。歴史の大転換点を大胆な発想で捉えなおす、著者会心の書下ろし歴史傑作シリーズ第一弾。
朝館吾郎、通称オッタチは大スター神宮寺園子のマネージャー。カッコいいのに超あがり症の彼、今日はワイドショーで東都テレビへ。が、本番直前、スタジオでADが殺された。彼の突撃スクープへの恨みかと思われたが、翌日、他局のディレクターも殺され、テレビ局は大混乱し…。
愛妻への不可解な殺意に憑かれ、深夜の町を彷徨する男が絡みとられていく倒錯的なエロスの誘惑。三島由紀夫に捧げられた『一九三三年』ほか全六篇の短篇には、透明な鏡に不意に黒々とした欲望の暗渠が映じるかのような、マンディアルグ特有の異様な、しかし詩的で豊穣なイメージ群が横溢する。
凄腕諜報部員シャルル、その使いっぱしりの俺、ハルキ。初めて会ったその瞬間から奴に惣れちまって、骨抜きにされたあげくこんなアブない稼業に足をつっこんでしまったわけだが…、俺たちの今回の任務-天才少女ピアニストの亡命の一件ではどうもシャルルのようすがおかしい。少女のガードを請け負っている民間警備機構ガーディアンズのひとり、マリィ・アサクラのあでやかな美少女ぶり…それに対しいつもの沈着冷静さを欠いたシャルル…、俺の心は激しくかき乱された…。
ムーミン童話(トーベ・ヤンソン著、全8巻)の主要登場人物、語句、フィンランドの自然および文化的事項等について解説したもの。排列は見出し語の五十音順。解説文中の引用箇所および作品と関連する箇所には、その作品名の略名と章数を示す。底本は青い鳥文庫(講談社)。巻末に事項索引がある。-おとなから子どもまで、すべてのムーミンファン待望の事典。
旅の途中で出会いを重ねた人に言わせれば、僕は変わったらしい旅の途中で彼女を思い出した人に言わせれば、彼女は悪女らしいけれど僕には、「自然」が見てきた。彼と私、二つの遍歴を重ねる野心的長編。
愛は成就されず、成就されるのは愛でないものばかり。十二月の最初の日曜日、十二歳になる侯爵のひとり娘シエルバ・マリアは、市場で、額に白い斑点のある灰色の犬に咬まれた。背丈よりも長い髪の野性の少女は、やがて狂乱する。狂犬病なのか、悪魔にとり憑かれたのか。抑圧された世界に蠢く人々の鬱屈した葛藤を、独特の豊饒なエピソードで描いた、十八世紀半ば、ラテンアメリカ植民地時代のカルタヘーナの物語。
英国ブッカー賞受賞。瀕死のイギリス人患者と若く美しい看護婦ハナ-砂漠の情景から不倫の愛の行方まで、詩的言語に包まれた物語が静かに溢れ出す…カナダ人作家の最高傑作。時は第二次世界大戦の末期である。場所はフィレンツェの北、トスカーナの山腹に立つサン・ジロラーモ屋敷。ここで、四人の男女が出会う。若いカナダ人の看護婦は、ハナ。…ハナの父親の友人で、泥棒のカラバッジョ。…インド人でシーク教徒のキップは、爆弾処理を専門にする工兵。…そして、ベッドに寝たきりながら、その発揮する強大な求心力に三人をつつんでいるイギリス人患者。…心の内にそれぞれの物語を抱え込んだ四人が、互いに相手の物語を読もうとし、そこにすばらしい小説世界が出現する。
大学教授ジョン・マクガワンは、とくに信仰に厚い人間ではなかった。長いこと行方知れずだった父が残した「メシア・ストーンズ」の秘密を知るまでは…。物語は人類の終末を予言し、救世主の到来を告げるメシア・ストーンズをめぐり、激しく、ドラマティックに展開する。『インディ・ジョーンズ』のスリルとサスペンス、『聖なる予言』の深遠さをも凌駕したと評される、この全く新しいニューエイジ・ノヴェルは、アーヴィング・ベニグの処女作であり、今、アメリカで最も注目されている話題作である。
「メアリー、メアリー、すごいへそ曲がり。どうしてあなたの庭はよく茂るの。銀の鈴やら貝殻や、かわいい少女が一列に…」有名なマザー・グースの一節は、あたかも三週間前に起きたショッキングな事件を予見していたかのようだった。メアリー・バートンという名の元教師が、いたいけな少女三人を殺害し、自宅の庭の花壇に遺棄した容疑で逮捕されたのだ。彼女の教え子の依頼でマシュー・ホープは弁護を引き受けるが、当のメアリーは容疑を否定するだけで、なぜか多くを語ろうとしない。その上、死体を埋めているのを目撃したという隣人や、血のついた服を預かったというクリーニング屋も現われて、状況はますます不利になっていく。はたしてホープは、万全の構えを見せる検察側を切り崩すことができるのか。息もつがせぬ法廷シーン、円熟の語り口。シリーズ中もっともエキサイティングな展開を見せる第10作。