1996年発売
ノース・カロライナ州の小都市ヒルストンに衝撃が走った。警官を射殺、死刑を宣告された黒人青年ジョージ・ホールの刑執行が、執行前夜、突然、延期されたのだ。人種偏見が色濃く残る州では、この処置をめぐって右翼団体が不穏な動きを開始。市の安全をあずかる警察署長のマンガムは、厳戒体制を敷く。だが、その矢先、死刑囚の弟クープが何者かに射殺された。警察小説のスリルと法廷小説のサスペンスを合わせもつ傑作。
弟クープの殺害事件を捜査するマンガム署長は、死体から発見された銃弾が、ある右翼団体メンバーを射殺するのに使用されたのと同じ銃から発射されたことを突き止める。そのメンバーは、死刑囚ジョージに射殺された警官の義弟だった…。一方、ジョージの裁判は、手続きの不備が判明して再審が決定。敏腕弁護士ローズソーンが弁護を担当して、激しい法廷論争を繰り広げる。法廷でやがて明かされる事件の意外な真相とは。
その夜、大学の物理実験室に遅くまでいた大学院生プリシラ・ソンは、何者かの襲撃を受けた。現場に残されたのは、被害者に加えられた凄絶な暴行の跡とコンピュータから発見された謎の7文字。容疑者は逃亡したメキシコ人職員とされたが、被害者がなにか重要な研究に従事していたらしいことから、異なった様相を呈し始める。新署長スコット・パリスは、シャーマンの老女や美人新聞記者アンの協力を得て、難事件に挑むが…。
1944年、重慶。毛沢東とチャーチルの間にかわされる重大な密約書を携えた陸軍少佐キャンベルを乗せ、ダコタは飛び立った。共産軍への英軍の協力の見返りとして、1997年までの香港の租借期限を百年延長する、というのだ。ところが、ダコタは撃墜されて炎上、密約書は行方不明となった。時は流れ、香港返還を目前にして、マフィアが「重慶密約」の存在を知った。香港に多額の資本を投下している組織にとって、返還が延びるのは願ってもないことだ。くだんの密約書は、キャンベルの故郷スコットランドの一族の城に埋もれているらしい。マフィアはドンの姪の息子で実業家のモーガンを、捜索のため城に送りこんだ。一方、その動きをつかんだ英情報機関グループ・フォアの長ファーガスンは、自らスコットランドへ赴く。そして、モーガンの義理の娘アスタに元IRAテロリストのショーン・ディロンを接近させた。やがて、二人の間には危険な火花が散りはじめる…。誇り高きハイランドの地に繰り広げられる、会心の冒険サスペンス。
その日の朝、一等陸佐の許に届けられたのは、かつて彼の上官だった退役陸将補の死を告げる省内通信であった。葬儀に出席した彼は、参列している情報関係者の不審な態度から、老人の死に彼らが関与していたことを直感する。時を追うごとに膨らむ不安ー。保全部が音も無く調査を開始、さらに防衛庁内でもその実態が知られていない対敵諜報部門が動き出したことで、それは確信へと変わっていく。書下し長篇。
無線器の故障で終戦を知らず、太平洋戦争最後の敵機撃墜をマークした男、藤巻誠二。戦犯すれすれの元陸軍大尉は、プロフェッショナルな素質と経歴を見込まれた各国のわけあり連中と共にC-47輸送機の中にいた。彼らに与えられた栄光ある特殊任務とは、無差別攻撃の暴走を始めた超弩級重戦車T-97『アキリーズ』を破壊すること。六人のはみだし野郎が戦争始末に挑む「ロジャーズ・ラフネックス」シリーズ第一弾。
無軌道な生活を送る30歳の青年医師ステファン。ある日、彼の前に12歳の家出娘エヴァが現れる。ステファンを運命の人と思う彼女の積極さに翻弄されながらも、次第に愛しく感じるようになる。だがエヴァは重い病気にかかっていた。ステファンは何とか彼女を助けようとするがー。年の差を超えた愛を描いた今最も純粋なラブストーリー。フランスで大ヒットし、すべてのパリジェンヌを魅了した同名映画の原作。
長期休暇中のケイト・ファンスラーと夫のリードは、スカイラー大学のロー・スクールで授業をうけもつことになる。だがそこは、白人男性の権力欲と凡庸さと女嫌いの牙城だった。終身在職権をもつただひとりの女性教授にまつわる不隠なうわさ、教授だった夫を殺害した妻、そして暗躍する謎の老秘書。静かな学期を楽しもうというケイトのもくろみはもろくもくずれ去る。理想のカップル、ケイトとリードの結婚にも危機がおとずれて…。スパイ活動のテクニックを駆使、ツイストをきかせた不思議な味わいをもつ最新の問題作。
「ファンスラー先生、精神科のよいお医者をご存じですか」美人大学院生ジャネット・ハリソンが助けをもとめた相手は、英文学の教授ケイト・ファンスラーだった。ケイトは、かつての恋人で、今は精神分析医をしているイマニュエル・バウアーを紹介する。だがある日、バウアー医師の診療室にある寝椅子の上で、ジャネットの刺殺死体が発見されたのだ。バウアー医師の無実を確信するケイトにも、やがて大きな嫌疑がかかって…。ケイト・ファンスラー登場の記念すべき第1作。
大学付属病院の研修医(レジデント)の久住隆と中務春彦は密かに愛し合う関係。二人ともエリートで美形なため、言い寄る男女は数知れず。隆の方は適当にやれるが、オクテの春彦は狙われていることにも気がつかない。嫉妬心にさいなまれる隆は、つい春彦に無体なことをしてしまって…。雑誌掲載の表題作と短編『ナイトシフト』に250枚の書き下ろしを加えた松岡なつきの話題作、鳥羽笙子の挿画で登場。
金茶色の髪、しなやかな指、スレンダーな身体。どれをとっても僕の胸をおどらせる彼。名前はモーリ。その彼と僕が運命の糸で結ばれていたなんて。おまけに、僕と妹、そして母を捨てて逃げた同性愛者のダディまで絡んでくるなんて。でも、僕のファースト・ラブは思わぬ騒動に巻き込まれてしまい、成就しないまま、クライマックスに突入。
名刀乾雲丸と坤竜丸。離れれば互いに求めあい、持つ者を殺人鬼と化す宿命の妖刀だ。その一つが小野塚道場の俊才・諏訪栄三郎の手に、一つが二刀獲得に異様な執念を燃やす片眼片腕の怪剣士・丹下左膳に渡ったときから、大江戸の夜は血に染まる。乱闘に次ぐ乱闘に恋のさやあてもからみ、急展開するスリル満点の物語の興奮。映画でもおなじみ、大衆小説屈指のスーパー・ヒーロー、いよいよ登場。
筑豊の廃坑の村。離職者更生の手段として、自分の経験と技術を教えこんだ元スリの耳に、昔の仲間、いまは東京のデパート保安係が囁いたーもっと安全で割りのいい稼ぎがあるじゃないか。かくて結成された窃盗団。大胆巧妙な手口とチームワークを見せる面々とベテラン刑事との虚々実々の駆引き、そして意外な結末。雑草の逞しさで生きる泥棒集団の活躍を温かく軽妙に描いた、会心の悪漢小説。
長い五寸のくわえ楊枝に三度笠も懐かしい、上州無宿の渡世人・木枯し紋次郎が帰って来た。時は嘉永三年、股旅生活にさらに十年の歳月を加え三十九歳になった紋次郎が、十年前の浮世の義理に身を阻まれて、珍しく上州中仙道は板鼻宿最大の旅籠花菱屋に逗留し、遭遇した事件の数々。一世を風靡した孤高の渡世人・木枯し紋次郎の長脇差が翻る傑作連作小説集。
フツーの家族のフツーじゃない愛のカタチ。宮内家はどこにでもいる四人家族、なんだけど-神戸で「話し屋」として働くママは、誰よりパパを愛しているのにパパだけじゃ我慢できない困ったヒト。パパは誰かに恋して輝いてるママを包み込む大人の男だけど、若い女の人にフラフラしたり。高校生の明彦は女の子が放っておかないルックスにも関わらずホモセクシャル。中学生の美香は「大人の恋愛」に憧れてはいるものの、恋に恋するお年頃。ある日、美香はママの長電話から「ママの恋愛」を知る…。
「一ヵ月8kg減で、誰もが理想体重に」ダイエット美女を決める最終選考まで、あと二ヵ月。夏のヒロインを選ぶコンテストの幕が開いた。今度こそ、絶対に生まれ変わってみせる。痩せてみせるわ。たとえ「私」を殺してでも…。「あなたは私のことを何も知らない。愛してたなんて嘘よ」そう言い捨てて、恋人は姿を消した。手掛かりを捜すうちに浮かび上がる、恋人の偽りに満ちた過去と、ダイエットコンテストの謎。もし、痩せられなければ、私には、帰るところがないの…。「もう、駄目かもしれない…。今度リバウンドしたら、その時、私は…」デビュー作『僕を殺した女』に続く驚異の第二作。華やかなダイエットコンテストに渦巻く謎と、深まる狂気を描く本格的心理サスペンス。
葛の絡まる古い洋館の主人アシュレイの前に、ある日陸イグアナのバトラーを連れた少年、明生が現れた。すったもんだの末に、アシュレイは下宿屋“おおいぬ荘”を始めることに…。血の気の多い政雄と彼の過去を知る裕幸の二人の下宿人に加え謎の影も現れておおいぬ荘はいつでも賑やか。Wアキラが織りなすハートフル・ストーリーズ。
8年間、真雪を召使い兼おもちゃとして扱ってきた馨が4年振りにアメリカから帰ってきた。もう以前の関係は嫌だとする真雪だが、『何でも屋』の馨にあるカップルから2つの依頼が持ち込まれ、協力するハメに。金につられて引き受けた、一見相反するこの依頼に打つ手はあるのか。