1996年発売
太平洋戦線で苦境に立たされた日本は、日米戦の命運を賭けて、密かに建造していた巨大な戦艦空母摩利支天を投入した。起死回生の秘密兵器は、台湾沖でハルゼー艦隊に打撃を与えると、比島奪還を目論むマッカーサーの大上陸軍を撃破した。敗色濃厚であった日本は、恐るべき戦艦空母の破壊力によって活路を見いだせるのか。次なる目標はミンダナオ島、摩利支天はハルゼー艦隊追撃に向かった。
武帝、栄光と悲劇の皇帝-君臨五十四年、中国史上に最も輝かしい黄金時代を築く。宿敵匈奴の征討、儒教の国教化、官僚機構の整備、司馬遷も『史記』をこの期に編む。その栄華を翳らせた王者の疑心暗鬼、父子相撃って最愛の皇太子までも失う。悲哀の底に転落しながら「天は帝王にも禍福を公平に与奪する」と、微笑さえ遺して逝った前漢の覇者の物語。
神代から秦始皇帝の統一へ、主な登場人物を透かしてみる生きた中国思想史…人々の知恵と行動は、永い歳月に育まれ、やがて大きな思想の流れを形成する。その原点ともいうべき、五十人の珠玉の故事譚…現代中国のものの考え方の基礎がここに潜んでいる。
性の誘惑と不可思議な夜のなかで悲劇は起った。TVディレクター伊沢の親友・村瀬が射殺されたのだ。忿怒に駆られ犯人を追う伊沢は、ルポライターだった村瀬が探っていた恐るべき事件に巻き込まれ…。欲望に痺れた非情な男たちが蠢く、手に汗握る危険な遊戯。
夏の夜に大人への第一歩を踏み出した少女。長い一日を経て少年が感じた「生きること」と「死ぬこと」の意味。日々の暮らしの中で、たちどまり、ゆらぎながらも穏やかに時をかさねていく登場人物たち。イギリスやスコットランドの風景の中を静かに流れる人間の営み。世界20か国の人々に愛読されている人気作家ロザムンド・ピルチャーが贈る、愛と希望と勇気に満ちた、なつかしく心あたたまる短編集。
恋のゲームに熱中するほど若くはないが、あきらめるにはまだ早い。人生を思いきり生きている、そんな30代の黒人の女性4人の夢と現実を、からっとした筆致で綴った28編のコミカルなオムニバス・ストーリー。いまを生きる女性の姿を辛辣なユーモアをまじえてリアルに描き、世界中の女性から共感をもって迎えられたベストセラー。ホイットニー・ヒューストン主演で話題の米映画『ため息つかせて』の原作。
林の中の古びた洋館ーそれが私立野々宮図書館だ。ここに所蔵されている本は、どれも犯罪や事件に関係のあった本ばかり。殺人現場で被害者が抱いていた本や、連続殺人犯が愛読していた本、首吊り自殺の踏み台として使われた本など…。この一風変わった図書館に住み込みで勤めることになった松永三記子。彼女が書庫の本を手に取ると、その本にまつわる不思議な出来事が次々と起こるのだった。一冊の「本」が引き起こす様々な事件を描く連作小説集。
「警察は自殺だと言ってます。でも、私は自殺だなんて信じてません」福島県喜多方で排ガス自殺と断定された父の死因を承服できない清野翠。翠の父の友人であった「歴史と旅」藤田編集長の依頼をうけて浅見光彦は、彼女とともに残された“透明な遺書”をよりどころに、正々堂々、喜多方にむかうのだが。
平凡なサラリーマンのささやかな願いが、ふとしたきっかけで日常の亀裂に飲み込まれる恐怖を描く名作『地下鉄御堂筋線』をはじめショートショート界の鬼才が放つ選りすぐりの怪作70篇。一読、ほろ苦いユーモアに心くすぐられ、時に背筋がゾクッとする快感に酔うワンダーランド。巻末に星新一氏、熱烈解説を収録。
顔に白頭巾をかぶってひたすらワープロを打ち続ける男。行方不明だった推理作家・西田操は七年ぶりに帰還して、長編『覆面作家』の執筆にとりかかった。それが、増悪と殺意の渦巻く事件の発端だった。劇中の小説と現実が激しく交錯し、読者を夢魔の世界に誘いこむ、傑作ホラー。真相は覆面作家だけが知っている。
元CIA要員、大学教授の男が、なぜ他人の幸せを盗み聴くのか。そして家族の会話に性的興奮を覚えなくなった時、彼はなぜ一家惨殺を企てるのか。兄の家庭を破壊されたニューヨーク市警刑事は、作家志望の妻と、ただ一人の生き残りであり目撃者でもある少年の助けを借りて、この異様な殺人鬼に立ち向かう。
俳諧師から草本作家への転身をはかる井原西鶴。亡父ゆずりの豪剣をふるう磯部信十郎。二人の奇妙な友情を軸に織り成される人間模様の数々。米相場を左右する大坂商人たちの葛藤と幕閣中枢の暗闘には、謎の美剣士がからむ。-剣あり、恋あり、友情ありの、浪花元禄時代絵巻。第3回時代小説大賞受賞作。
17歳の時に無実の罪で投獄されたエディが、15年ぶりに出所してきた。そして自分が投獄された理由を探るうちに、またしても知らぬ間に麻薬がらみの犯罪に巻き込まれてしまう。複雑にからんだ過去と現在の犯罪の糸をときほぐした時、エディの前に現れた思いがけない真実。MWA賞次点の傑作長編サスペンス。
聖地アンヌピウカでのUFO目撃以来、北海道の小さな町・富産別町では、UFOフェスティバルを推進する者、密かに巨利を企む者など、さまざまな思惑が蠢きだしていた。そんななか行方不明になっていた第一目撃者・亜紀子が戻ってくる。彼女はアイヌの心霊治療を身につけていた…。バブル崩壊後の時代状況を鋭く捉える野心作。“もうひとつの現実”をユーカラにのせて描く叙事詩的長篇。
太陽系の近傍に反テラ連合の一大艦隊が出現した。太陽系を目撃したダブリファ艦が、破壊される直前に緊急信号を発していたのだ。おりからローダンたちは、秘密実験のためコレッロをラスト・ホープに運ぶ必要に迫られていた。だが『インターソラー』でゴースト星系を出れば、反テラ艦隊に発見されるのは確実。秘密情報局長官デイトンは一計を案じ、テラ、オリンプ、ラスト・ホープをむすぶ極秘輸送作戦が開始されたが…。
太陽系の壊滅を察知した人類は、自らの子孫を残すべく、遺伝情報を搭載した自動播種船をつぎつぎと近隣の星々に送り出した。そのひとつ、青い海に囲まれた楽園サラッサでは、何世代かのうちに新たな人類が自由で理想的な社会を築きあげていた。だがその長い平和をうち破るかのように、サラッサの空に謎の宇宙船が…。地球の滅亡から数百年を経た遠未来を舞台に、新たな道を歩みだした人類の姿を壮大に描く傑作長篇。