1996年発売
抱腹絶倒のクロス・ジェネレーション・コメディ。怒濤の60年代を生き抜いた男が、90年代のマテリアル・ガールに恋をした。1960年代の後半に“セックス、ドラッグ、ロックンロール”を掲げて、世界中を揺るがしたウッドストック世代の若者-だが、時は流れ、そんな彼も、いまや中年の危機に怯える毎日。しかもよりによって、キュートな女子大生と恋に落ちてしまった日には…。おまけに、前妻との間にもうけた息子まで引き取ることになって、もう、家じゅう大騒ぎ。期待の新進作家がアップテンポに奏でる、痛快ラヴ(&ピース)・コメディ。
若く美しい女性の死体が、ボストン郊外で発見された。捜査の結果、彼女と愛人関係にあった外科医ディラードが、事件の当日に彼女と会っていたことが判明、有力な容疑者として浮かび上がった。野心的な地方検事はディラードの知名度に目をつけ、彼を被告として起訴し、自らの政界進出のためにこの事件を利用しようとたくらむ。窮地に立されたディラードは、敏腕弁護士として名高いダン・シェリダンに自らの弁護を託した。だが、現行の法制度下では、大陪審において、弁護士は異議申立てや反対尋問を行なうことはできない。ディラードの起訴を防ぐチャンスは無に等しいのだ。やがて、シェリダンの事務所に女性FBI捜査官が秘書として送りこまれ、弁護側の手の内は、すべて検察側に把握されてしまう。そして、そのことを露知らぬシェリダンは、天真爛漫にふるまう彼女をいつしか愛し始めていた…。
大和沖縄出撃に伴い空前絶後の隠密作戦が準備されていた。昭和二十年四月二日、知覧。陸軍第六航空軍楠本琢郎中尉は集団司令部への呼び出しを受けた。そこで聞かされた作戦は正に楠本の度肝を抜くものだった-楠本率いる空魔遊撃隊に、日系米兵になりすまし、拿捕したグラマンF6Fヘルキャットで米旗艦バンカーヒルに乗り込み、ミッチャー中将を人質にとって乗っ取れというのだ。そして大和が沖縄に着くまで、敵の反撃を阻止する-誰も知らなかったドラマがいま歴史の裏で幕を開く。注目のシミュレーション。
村を焼かれ、両親、仲間を殺されて、ジャングルにとり残された少年達。彼らの前に現れたのは、よその国から来たと思われる一人の女性兵士だった。その女は、少年達に自分を“お母さん”と呼ばせ、武器の扱いやジャングルでの移動の仕方を叩き込む。厳しい戦闘訓練が始ったのだ。ジャングルにひそむ“敵”との遭遇、病気…15人になった少年達の行手に待ちうけるものは…。そして“お母さん”の目的は。『後宮小説』で華々しいデビューを飾った酒見賢一の新コンバット・アクションにオリジナル短篇を加えた傑作集。
米国の陰謀か、中国の龍舌に呑まれるか新金融システム戦争勃発。消えた1兆ドルの貿易黒字と崩落の日本経済に起死回生の途「円のアジア化」を策す銀行に立ちはだかる巨大な陥穽…。驚愕の書下し警告経済小説。
聡明で強い呪術の能力を持ちながら、出世の野心なく、貧しい人々の住む陋巷に住み続けた顔回。孔子の最愛の弟子である彼は師に迫る様々な魑魅魍魎や政敵と戦うサイコ・ソルジャーだった…息づまる呪術の暗闘、政敵陽虎との闘争、影で孔子を護る巫儒の一族。論語に語られた逸話や人物を操りつつ、大胆な発想で謎に包まれた孔子の生涯を描く壮大な歴史長編、第一部。
時は寛永八年、徳川家光の時代である。対朝鮮外交を一手に握る対馬藩の家老、柳川調興が突然、所領の返還を申し出た。調興の訴えは幕府を揺るがす一大スキャンダルに発展していく。朝鮮王と徳川将軍の間で交わされた国書が対馬藩の中で偽造されたり改竄されたりしていたというのは本当か。そして調興の真意は一体何なのか。…史実を基に大胆な発想で描く時代法延ミステリー。
鬼怒川沿いの大きな宿場町、阿久津。行き交う多くの人々で賑わいを見せているが、何かと事件も多い。川船の仕事一切、宿場の管理も請け負う河岸問屋を舞台に、日々の出来事の中から拾い上げられたホロリとさせられるような人情話が花を咲かせる。若い船頭・喜作と薄幸の娘・ユリとの悲恋を語る「鬼怒の船唄」、その喜作が子持ちの後家と山雀師の縁を結ぶ「鬼怒で鳴く鳥」等連作9話。
死の床にある父に古びた十字架を示され、これをジュネーブに亡命中の元ソ連反体制指導者、ウォルコフ教授に渡してほしい、と遺言されたルーシー。ロシア革命時に破壊されたと思われていたその十字架は、ウクライナ人にとっては指導者の証であるという。ジュネーブへ飛びウォルコフに会ったルーシーには、思いがけない運命が待ち受けていた…。ソ連邦崩壊を背景に描くサスペンス。
スター女優のキャット・ディレーニーは、心臓移植手術を受け、成功。だが彼女は華やかな世界には戻らず、地方局で恵まれない子供に養子縁組の道を開く番組を始めた。恋人もできて、順風満帆に見えた新生活だったが、彼女と同じ日に移植手術を受けた者たちは次々に不慮の事故で死亡していった…。全米ベストセラー作家が『私でない私』に次いで世に問う、濃密なラブ・サスペンス。
東亜総合病院産婦人科部長の飾摩秀樹と研修医の綿引淳一。好色な二人は診察に訪れる美女たちを舌なめずりして待ち構えていた。罠に嵌まった代議士の秘書、瑞々しい女子高生、肉感的な美人女優たちは、まるで蟻地獄へ落ちた虫のように身悶えるが、醜い男たちに診察台に固定され、晒された下半身を巧みな指づかいや舌によって弄ばれると、とろけるような感覚に堪えきれず歓喜の声をあげてしまう。
八百屋の娘・お貞と宮司の妹・お民は仲のよい幼友だち。ふたりはともに器量よしを見染められ、本郷の加賀藩上屋敷へ奉公にあがる。お民は子供の頃から加賀百万石の側室になるという夢を持ち、厳しい作法の仕込みに耐え、着々と側室への段階をのぼりつめていく。一方、お貞は偶然出会った若侍とのままならぬ恋に身を焦がす。加賀藩のお家騒動で揺れ動くなか、ふたりの娘も数奇な運命にもてあそばれていく。
本書はミラーの伝記的研究、あるいは作品の分析にとどまらず、ミラーの伝記映画についての批評、そしてカリフォルニアで開催されたヘンリー・ミラー生誕百年祭の記録などを補足することにより、論文の形式だけではとらえきれない作家ヘンリー・ミラーの解明を試みている。
白い夏椿が咲きこぼれる大塚の家で、高梨圭介は、夏江恭司郎の訪れを恐れ、あきらめ待つ日々を送っていた。帝大の二年生である圭介は、三十一歳の銀行家恭司郎に全てを奪われ、拘束され、-息もできぬほど愛されていたのである。