1996年発売
小説だからってフザケるのもいい加減にしろ!日本人に欠けているものは何だ?それは言うまでもない。堅牢強固な意志の力だ。日本ファンタジーノベル大賞受賞後初の書下ろし長編小説。今、とぼけた調子で、世に問う。世界一弱いヒーロー活躍、天才・サトウのナンセンス・ワールド!カニジンジャー沢蟹まけるは改造人間である。彼を改造したマングローブは世界征服を狙う秘密結社である。沢蟹まけるは人間の自由のためにマングローブと戦うのだ。
蓬莱島に暮らす美しき仙人・玉英は、仙界でも指折りの神通力を持つものの無類の酒好きで呑みっぷりは天下一品。東に銘酒ありと聞けば、行って一盞を傾け、西に美醪ありと聞けば、数斛を乾す毎日-。ところが、人間の男に恋をしたから、さあ、大変!永生の国で暮らす仙人たちの愛しき日々を愉快に描いた、博識読者に贈る今世紀最笑の仙人小説。
試合では万年二位の中距離走者の高校生・ジョンは、ある日、林の中で新種の蝶を見つける。小さな製材の町の運命さえ変えてしまうかもしれないこの蝶の出現で、ジョンは友人、町の人まわりのすべてとぶつかってしまう。不治の病に冒された父親とも-。淡い初恋に胸を焦がし、将来を思い悩みながら、大人への一歩を踏み出していく17歳を瑞々しく描いた青春小説。
“悪魔の子”ルークー自分の弟や里親の子どもを惨殺した九歳の少年は、自分が殺人を犯したことをまったく覚えていなかった。両親から受けた凄惨な性的虐待が原因で、多重人格者となっていたのだ。同じく虐待された経験をもつバークは、少年を救済し自らの過去に決着をつけるために、ルークを虐待した真の“悪魔”に罪を償わせるべく敢然と立ち上がった。自己の再生をかけたバークの熱き闘いを描くシリーズ第一期最終章。
呼び出しは深夜にきた。二人の刑事が、失業中の元警視ピーター・ダイヤモンドを、ロンドンのフラットのベッドから引っ張り出したのだ。連れて行かれた先は、ダイヤモンドのかつての職場、バースのエイヴォン・アンド・サマセット署だった。かつて彼を辞職に追い込んだ上司たちが、深刻な顔で迎えた。殺人犯マウントジョイが脱獄し、副署長の娘を誘拐して交渉相手にダイヤモンドを指名しているという。四年前、女性ジャーナリストが口に赤い薔薇を詰めこまれて刺殺された事件があり、彼がマウントジョイを逮捕していた。頼みこまれて、ダイヤモンドはしぶしぶ、しかし内心では大好きな捜査活動ができることにほくほくして、マウントジョイとの会見にのぞむ。そこで要求されたのは、四年前の事件の洗い直しだった。もしマウントジョイが無実だとすると、真犯人は誰だったのか。被害者のボーイフレンド、家主、取材していた不法居住者たち…。調べていくうちに、当時は埋もれていた事実が次々と明るみに出、ダイヤモンドの不屈の刑事魂が過去と現在を鮮やかに結びつけていく。巨匠会心の、英国推理作家協会シルヴァー・ダガー賞受賞作。
天界を支配する玉皇大帝の外甥で天界随一の武神、半神半人の顕聖楊二郎真君は唐二代皇帝で太宗といわれた李世民の右腕としてつかえた魏徴の家に居候していた。ある日、長安城内で琵琶占いをする崔巧雲が男たちにからまれているところを楊二郎は助けた。実は崔巧雲は琵琶の精で妖怪だったのだ…。一方、地上に落ちたままの霊玉を一向に返そうとしない楊二郎は、天宮からの使者韋護将軍の追及を受けていた。
リサは典型的なワーカホリックのビジネス・ウーマン。休日は何をして過ごしたらいいのかわからず、時間を持て余してしまうほど仕事一途に生きてきた。そんな彼女の前に突然、理想の男性が現れる。彼は花を愛し料理もこなす芸術家肌の青年、ルイス。まるで魔法にかかったかのように恋に落ちるリサだが、二人の愛が現実のものに変わろうとするとき、なぜかリサはそれを拒み、心を閉じてしまう。同名映画の原作。
三重の山林王の一人娘として何不自由なく育った葵は、従兄と結ばれ、二児にも恵まれた。しかし、その幸福な結婚生活も束の間、夫の急逝、両親の相つぐ死、二児の死と次々に不幸に襲われる。失意の底にあった葵が見出したものは、日本の香道の復興という大事業への献身であった…。度重なる不幸から立ち直り香道の復興に一身を献げた女の生涯。
背筋がちょっと寒くなるような美貌と優秀な頭脳のビジネスマン本条玲二は、もちろんナルシスト。そんな彼が弱虫で泣き虫の部下山辺雪彦に、イラつきながらも惹かれていく。でも、受け身の恋愛が得意な二人だから、どこかもどかしくて-。二匹の羊のラヴストーリー、たっぷりの書き下ろし続編が入ってBBNに登場。
大学生の掛川が街で出会った男、橋本は、顔は極上だが性格は最悪。大失恋したばかりの掛川にとっては、罪悪感も感じずに適当に付き合うにはちょうどいい相手だった。すぐに体の関係を持つ二人だが…。人気急上昇中の木原音瀬、書き下ろし最新作でBBNに初登場!!表題作ほか「水のナイフ」を収録。
遠州味方ケ原に住みついた流れ者夫婦に、天啓のごとき子ができた。生まれついての大器量、五、六歳ともなれば独り荒野を駆けて狐や狸を狩る怪童、後の大盗・石川五右衛門である。時は戦国。藤吉郎、家康、信玄らの血なまぐさい天下取りの裏で、野盗の女頭目をも配下におさめ、「人間どもの小賢しさに大砲をぶっ放す」神出鬼没の大暴れ!奔放な想像力と自在な文体で直木賞を受賞した痛快長編。
江戸幕府の頽廃の翳は、日本橋界隈の商人たちの一見平穏な暮らしをも蝕みはじめていた。惨殺死体が真実を暴く『大黒屋』をはじめ、捕物帳の形を借りた六編の物語は、爛熟の気配色濃い風俗の陰に生まれる不気味な犯罪のからくりに鮮やかな推理の光をあてる。仮借ない世相のなかの庶民のせつない生活感と憐れな人情。ミステリーの巨匠が、的確な時代認識をふまえて描いた時代推理小説の傑作。
昭和二十年七月、原爆を運ぶ米重巡洋艦インディアナポリスをグアム-レイテ線上で撃沈するべく待ち受ける海軍伊号五八潜水艦。太平洋戦争における艦艇同士の最後の戦いが開始された。索敵と待ち伏せ、追跡と反攻、そして撃沈。史実に加えられた巧みなフィクション、双方の指揮官・戦闘員の活写、詳細な戦闘描写、意表をつく結末。第一級エンターテインメント。
一匹狼の処刑人・北条貴は、国際刑事警察機構に協力させられることになった。天性の殺し屋であり、S機関のナンバーワン・スイーパー氷見子が、機関の幹部を殺してアメリカに逃亡したのだ。彼女は、アメリカである秘密結社に荷担し、想像を絶する悪夢の計画を進めていた。かつて貴を養成したS機関は、UNPODと手を結んだ!人気シリーズ飛躍の第十弾。
横浜外人墓地で、白昼、銀座のクラブ『久利』のママが殺された。どうやら彼女は、大がかりな贈収賄事件に関わっていたらしい。元警視で、今は気ままなルポライターの雨宮退介が、調査を開始した。とたんに、秘密を握る証人が消されてしまう。野心と欲望がもつれあう中で、退介は殺し屋たちの襲撃にも怯まず、事件の謎に迫る。