1996年発売
内戦下のエルサルバドルでアメリカの秘密工作を遂行中、エド・パーテインは上官の罠にはめられて、陸軍少佐の地位を失った。そして今、ワイオミング州の銃砲店に勤める彼のもとにその上官の一人が現われ、秘密を洩らすなと忠告して、裏から手をまわして彼の職を奪ってしまった。失職したパーテインは、VOMIT(軍情報部の裏切りによる犠牲者たち)という組織の友人から、新たな雇い主を紹介され、ロサンジェルスへ飛ぶ。雇い主はミリセント・アルトフォードという婦人で、彼女は政治資金調達のエキスパートだった。最近、自宅に保管してあった政治資金百二十万ドルが何者かに盗まれ、犯人を突き止めたいのだが、ボディガードになってほしいという。パーテインは仕事を引き受けた。だが、かつての上官たちが、彼の口を封じるべく、今度は暗殺者を差し向けてきた!クールなタッチで描き出す、欺瞞と殺人の渦巻く危険な世界。絶大な人気を誇りながら、惜しくもこの世を去った巨匠のサスペンス溢れる最後の長篇。
魏徴は黜陟大使・李靖から声をかけられ、秘書監・李淳風を訪れた。李淳風は星辰の図を取り出すと「命を革むる。天が、他者をもって李氏を易えようとしております」と告げたー。ある晩、李靖を尾行していた一団と戦うことになった楊二郎は、彼らが人間以上の能力を持つことを知った。一団の首領は焦子〓@5AA7@といい、世情が混乱期に入るのに乗じて、神農氏の血を引く支族として炎帝の復活を企んでいたのだった。
「おいしい果物は、禁じられているので、眺めることも、いじることも、なめることも、ましてや、そこに突っこんで、腰を使うこともいけないの…これを味わうと眼からうろこが落ち、この世の厖大が失業してしまうからでしょうね」女は歌うように言う。男と女の営みは深く、とどまるところを知らない。身体の奥から突き上げる感情に身を委ね、悦楽の波に漂う艶やかな世界を繊細に描く。書下し。
事業に失敗し、窮地に追い込まれた朴秀生は義兄の姜真厳の誘いを受け、妻子を残して一人、住み慣れた大阪を離れて仙台へと向かった。義兄の経営する喫茶店の仕事を手伝うためだ。今度こそ真面目に働くつもりだった。しかし、それも長くは続かなかった。酒と女、そして金。朴は再び危険な綱渡りを始める。事業に失敗し、義兄にも見放された彼は、安住の地を求めて街を彷徨い歩く…。
ジョセフ、サラ、フランクの三人は学生時代からの親友同士。しかし彼らの関係は、サラとジョセフの結婚をきっかけに揺らぎ始める。結婚式のリハーサルの日、サラから「大学の頃、私、あなたに傾いたことがあるのよ」と告白されたフランクは、サラへの禁じられた衝動にかられる。そして、ついにサラとフランクは一線を越えてしまう…。ウィットに富んだ90年代の恋愛と友情を描くロマンティック・コメディ。
高校1年生の秀樹は幼い頃父を亡くし、二人の叔父と暮らしている。その一人、真澄は32歳の国際線パイロットで超エリートの美丈夫だ。弟の方の遙はもうすぐ24。体が弱いのでいつも家にいて秀樹の母親代わりになってくれる彼は、大変な美貌で女にしか見えない。憧れの叔父たちが、実は肉体関係にあると知って、秀樹は衝撃を受ける。しかしその思いは真澄への恋愛感情に発展し、秀樹は遙を排除する策を講じて…。
1943年3月、ブレッチレー・パークの暗号解読センターは戦慄した。ドイツ軍の暗号“サメ”が突如解読不能になったのだ。折しも北大西洋上をアメリカの護送船団が航行中。それを狙うUボート大艦隊の動きは闇に包まれた。亡国の危機にケンブリッジで静養していた若き天才暗号解析者トム・ジェリコが呼び戻された。解読に与えられた猶予はたったの四日。ジェリコの孤独な闘いが始まる…。
インドネシア・スマトラ島で謎のウイルスが猛威!女性ジャーナリスト、ホリー・ベッカーは現地にいる双子の娘の身を案じて、アメリカ陸軍のカーメン・トラヴィス中佐はウイルス殱滅を期す探査隊を率いて、それぞれ“災厄の島”へ向かう。そして、カーメンのもとに送られてきた一通のアメリカ軍極秘文書のコピー…。幾重にも錯綜した謎が、スマトラのジャングルとアメリカの時空を越えて、結びついたとき、正体不明のウイルス“九日目の悪魔”の真実が明らかになる…。
都内の一流ホテルで、不動産ブローカーを営む男が殺された。だが、現場に手がかりはなく、はやくも捜査は難航していた。ニュースで事件を知った浅見光彦は母・雪江に相談を持ちかけられる。旅行帰りに被害者を目撃したらしいのだ。その際に、男は携帯電話で「アサヒのことはよろしく」と大声で頼んでいたという。「アサヒ」とは何か!?浅見は事件解決のために、死者が遺したメッセージの真相を追うのだが…。名古屋、北陸、そして東北へー。名探偵浅見光彦の推理が冴える長編旅情ミステリー。
警視庁捜査一課の横渡刑事は帰宅途中、暴漢に襲われた女性を助けようとして男と格闘し無念にも刃物で刺殺された。一方、襲われた女性も死体で発見される連続殺人事件が起きた。殉職の訃報を聞いた棟居刑事は激しい怒りを覚え、「仇はおれがとる」と亡き横渡の面影に復讐を誓う。そして、女性被害者の身辺を調査中、遺品から二八年前に起きた棄児事件を報道した古い新聞記事が見つかった…。燃える刑事魂が巨悪と対決する「棟居刑事シリーズ」第一弾。
山間の豪華なリゾート・ホテル「ホテル金倉」。このホテルが閉館することになり、閉館前の最後の一週間、馴染みの客がオーナー・金倉に招待された。片山たち一行も、金倉のたっての希望でその場に招かれた。実はこのホテルでは十年前に金倉の一人娘が殺されるという事件があり、現在も未解決のまま。今回集められた招待客は、片山たちを除いて全員がその現場に居合わせた人ばかりなのだという。しかも金倉は「今度殺されるのは私だ」と予言ーはたして惨劇は繰り返されるのか?人気シリーズ第19弾。
信州の山奥で仙人・戸沢白雲斎から独得の武芸を伝授された少年猿飛佐助は、真田幸村に乞われ沼田城に入った。時は戦国、佐助の奇策は徳川や北条の城攻めを次々に封じる。だが、自然児にとって武士の世界はなじみにくかった。放浪の旅に出た彼は、人の野心、怨恨、情愛をしたたかに思い知らされる…。「立川文庫」最大のヒーローを、著者自身の体験と重ね合わせて、人間として捉えなおした異色の長編。
二十年間共に暮らしたあと、出ていった夫。投函はしないけれど、日々の思いを「私」は綴る。誠実さだけがとりえ、と思っていたあなたに愛人がいることを知った衝撃。金銭問題であなたと敵対しなければならないことへの怒り。自分にも訪れた新しい出会い、しかしそれを見る娘の、なんとまあ冷たい視線…動揺と悲しみ。あきらめと安らぎ。子供を抱えて離婚した女性の葛藤と成長を、手にとるように描く。
昭和17年(1942)7月18日未明、マーシャル北方500キロ洋上-。クエゼリン基地から発進した水上機母艦千歳の零式水偵が米艦隊に撃墜された。日本海軍が回避に回避を重ねてきた、日米の衝突がこのとき現実のものとなった。ハワイ攻撃を直前で中止して、日米開戦を回避した山本五十六司令長官も、戦艦大和を旗艦として、急遽、中部太平洋での邀撃作戦のため出撃した。大和は、武蔵・長門・陸奥・伊勢・日向の砲戦部隊を引き連れ、米艦隊に向かった。前方には、金剛・比叡・棒名・霧島の高速戦艦部隊、そしてその左右に、軽巡神通指揮の第2水雷戦隊の駆逐艦16隻が力強く波を崩いて突進していた。駆逐艦には、日本海軍が誇る九三式酸素魚雷264本が装填されていた。山本長官は、飛龍・蒼龍の空母部隊「九七艦攻・九九艦爆・零戦搭載」で、米艦隊を奇襲し、その混乱に乗じて戦艦部隊との砲戦に持ち込もうとした。
和菓子屋「ふじの」にやってきたのは、天才和菓子職人、瀬川宗一郎。店の跡継ぎ息子、藤野弘明は、彼のことが気になって仕方がない。そんなある日、店主である父・和憲が事故に遭い、弘明は代理として店を切り盛りすることに…!東京は湯島を舞台に甘ーい物語をお届けします。
中学生-大人と子供の間羽化を待つ蛹。小説現代推理新人賞作家・釣巻礼公が、今まで誰にも書かれなかった思春期の神秘を描く本格推理長編第一作!名門・岩清水中学の将棋部部室で副部長の小雪が殺された。死体の両耳は無惨にも切りとられていた。小雪が残した詰め将棋に隠されたメッセージを手掛かりに、ノホホン少女・九十九桂が事件に挑む。しかし、またしても女子部員が第二の犠牲者に。今度は舌を切りとられて…。彼女には『援助交際』の噂があった。やがて、犯人の魔の手は桂にも襲いかかる。大人と子供の間の『蛹』の季節を生きる中学生。成長、いじめ、自殺そして援助交際といった、様々な問題に不安と戸惑いを感じながらも彼等は「負けるもんか」と事件に立ち向かう。